花田勝氏相続放棄

花田勝氏が相続放棄 全財産は貴乃花親方へ
 大相撲の元横綱三代目若乃花花田勝氏の代理人弁護士は4日、花田氏が東京家裁で故二子山親方(元大関貴ノ花、本名花田満)の財産の相続放棄の手続きをしたと発表した。
 弁護士によると、先月29日に家裁に書類を提出し、手続きには約1カ月かかる見通し。二男の貴乃花親方(元横綱貴乃花)が唯一の法定相続人として、全財産を相続することになるという。
 相続放棄について、弁護士は「詳しい経緯は聞いていないが、花田氏が角界を去るころに故二子山親方と話し合って決めたようだ。花田氏は自活の道があるので、部屋を継承する人(貴乃花親方)が全部相続するべきと判断したようだ」としている。花田氏からの要請を受け、今月3日の35日法要を終えるまで公表を控えていたという。
共同通信) - 7月4日20時4分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050704-00000211-kyodo-spo

相続放棄で、通常の財産は花田満氏ってことなんでしょうけど、
お墓とかはどうしていくのかなぁ?
「祭祀を主宰すべき者」が勝氏でいいのかな?

喪主は長男で元横綱3代目若乃花の勝氏。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050531-00000107-kyodo-spo

法要の施主を務めた花田家の長男・勝氏が、遺骨を胸に墓所へ歩を進める。弟の貴乃花親方は、位牌を手にして続く。裏面に「花田勝建之」と彫られた墓への納骨は、勝氏主導で行われた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050704-00000033-sanspo-ent

こっちは長男勝氏ってことであんまり争いにはなっていないようだし…。
放棄したじゃないか?ってモメないでね。関係ないから。(厳密に考えるとややこしそうだけど…)

民法民法第四編第五編)(明治三十一年六月二十一日法律第九号)


第五編 相続
   第一章 総則
(相続開始の原因)
第八百八十二条  相続は、死亡によって開始する。
   第三章 相続の効力
    第一節 総則
(相続の一般的効力)
第八百九十六条  相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
(祭祀に関する権利の承継)
第八百九十七条  系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2  前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。


   第四章 相続の承認及び放棄
    第一節 総則
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条  相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2  相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
(相続財産の管理)
第九百十八条  相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければならない。ただし、相続の承認又は放棄をしたときは、この限りでない。
2  家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。
3  第二十七条 から第二十九条 までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。
(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)
第九百十九条  相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。
2  前項の規定は、第一編(総則)及び前編(親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない。
3  前項の取消権は、追認をすることができる時から六箇月間行使しないときは、時効によって消滅する。相続の承認又は放棄の時から十年を経過したときも、同様とする。
4  第二項の規定により限定承認又は相続の放棄の取消しをしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。


    第三節 相続の放棄
(相続の放棄の方式)
第九百三十八条  相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条  相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
(相続の放棄をした者による管理)
第九百四十条  相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
2  第六百四十五条 、第六百四十六条 、第六百五十条第一項 及び第二項 並びに第九百十八条第二項及び第三項の規定は、前項の場合について準用する。

著作者であることの確認訴訟?その2。

著作者であることの確認訴訟?
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050625/1119630924

やっと判決が公開されました。

東京地判平成17年6月23日平成15年(ワ)第13385号著作権民事訴訟事件
http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/c617a99bb925a29449256795007fb7d1/1943438ca38632e2492570340002e022?OpenDocument


気になる部分のみ抜粋。

主文
1 原告が別紙物件目録の1及び2に記載の各銅像について,著作者人格権(氏名表示権)を有することを確認する。
2 被告は,別紙通知目録(1)記載の通知先に同目録記載の内容を通知せよ。
3 被告は,別紙通知目録(2)記載の通知先に同目録記載の内容を通知せよ。
4 原告のその余の請求を棄却する。
5 訴訟費用は,これを2分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。

別紙通知目録(1)

通知目録(1)
1 通知先
土佐清水市
2 内容
土佐清水市長 殿
御市足摺岬公園内にある中浜万次郎銅像の台座には,現在,その制作者名として私の通称である「B?」の文字が刻まれていますが,同銅像の真の制作者はA氏であることを通知します。

B?こと B?

別紙通知目録(2)

通知目録(2)
1 通知先
株式会社駿河銀行
2 内容 
 株式会社駿河銀行 御中
静岡県沼津市青野の岡野公園内にある御行所有のC銅像の台座には,現在,その制作者名として私のサインである「B?」の文字が刻まれていますが,同銅像の真の制作者はA氏であることを通知します。
B?こと B?

※Bの次の文字がわかりません…。機種依存文字?外字?

第3 争点及び争点に関する当事者の主張
1 争点
(1) 原告が本件各銅像について著作者人格権(氏名表示権)を有することの確認請求について確認の利益はあるか。
(2) ジョン万次郎像の著作者は原告か被告のいずれか。
(3) C像の著作者は原告か被告のいずれか。
(4) 本件各銅像についての著作者名の通知訂正請求の可否
(5) 謝罪広告請求の適否
(6) 著作者人格権に基づく上記各請求について,消滅時効が成立しているか,あるいは,権利失効の原則が適用されるか。(以下,順次「争点1」,「争点2」などという。)

第4 当裁判所の判断
 1 争点1について
被告は,原告は,本件においては,本来,給付の訴えを提起することが可能であるから,請求の趣旨第1項の確認請求について,確認の利益を有しない,などと主張する。しかし,本件各銅像に被告の通称が表示されていることが原告の本件各銅像著作者人格権(氏名表示権)の侵害を構成するとしても,被告は本件各銅像の所有者ではないのであるから,被告に対し,本件各銅像に表示された被告の通称の表示の削除を求めるとの給付の訴えを提起することができないことは明らかである。
確認の訴えは,一定の法律関係についてこれを確定させることが原告と被告との間の紛争を解決するために必要かつ適切である場合に,即時確定の利益が存在するものとして,当該訴えを提起することが許されるものである。本件では,原告が,本件各銅像についてその制作者(著作者)であると表示され,その旨を主張している被告を相手方として,本件各銅像について原告が有する著作者人格権(氏名表示権)を侵害されたとして,原告が同権利を有することの確認を求めているものであり,同権利の確認の訴えが,原告と被告との間の紛争を解決するために必要かつ適切である場合に当たり,即時確定の利益が存するものと認められる。
被告は,原告の氏名表示権に基づく請求権が,消滅時効ないし権利失効の原則により消滅しており,給付の訴えを提起してもその請求が認められないのであるから,確認の訴えが認められることはないと主張する。
しかし,原告の氏名表示権に基づく請求権が,消滅時効ないし権利失効の原則により消滅していないことは,後記のとおりであり,被告の主張はその前提を欠き,理由がない。そもそも,著作者人格権は,著作者の一身に専属し,譲渡することが許されないものである(著作権法59条)から,原告が本件各銅像の著作者であるとすれば有するはずの氏名表示権が消滅することはないのである。
また,被告は,原告は,氏名表示権確認の訴えを本件各銅像の所有権者である土佐清水市ないし駿河銀行に対してなすべきであり,被告に当事者適格はない,と主張する。
しかし,本件各銅像の著作者が,原告と被告のいずれであるかは,原告と被告との間で争われているのであり,この点を原告と被告間の本件訴訟において争うことが必要かつ適切であることは明らかである。
被告の上記主張はいずれも失当である。

4 争点4及び5について
(1) 著作権法115条に基づく謝罪広告請求について
 原告は,被告に対し,著作権法115条に基づいて,別紙謝罪広告目録記載の謝罪広告をすることを求めている。
著作権法115条は,著作者は,故意又は過失により,著作者人格権を侵害した者に対し,既に発生した損害を回復するために,損害賠償請求だけでは損害を回復するのに十分ではないこともあるため,「著作者・・であることを確保し,又は,訂正その他著作者・・の名誉若しくは声望を回復するために適当な措置を請求することができる。」と規定するものである。
ここにいう名誉声望とは,著作者がその品性,徳行,名声,信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価,すなわち社会的名誉声望を指すものであり,人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価,すなわち名誉感情は含まれないものと解され(最高裁昭和45年12月18日第二小法廷判決・民集24巻13号2151頁参照),著作者は,この名誉声望を害された場合,その回復に必要な範囲内において,謝罪広告を求めることも許されるものである(最高裁昭和61年5月30日第二小法廷判決・民集40巻4号725頁参照)。
前記認定事実によれば,被告は,故意又は過失により,将来,一般に展示されることが予定されている本件各銅像に,その建立時から,その制作者として被告名を表示し,いずれも被告が制作したものとして発表し,その後,本件各銅像の所有者等をしてこれを展示させることにより,原告の著作者人格権(氏名表示権)の侵害を現在まで継続しているものである。
しかし,本件各銅像は,その建立持から既に三十数年が経過しているものである。ジョン万次郎像は,土佐清水市足摺岬公園内に観光名所の一つとして設置されたものであるものの,公刊物「平和と美術」(高知平和美術会平成13年8月1日発行)の21頁に,「この足摺岬に立つ万次郎銅像の彫刻家の氏名については誰も知らないし,知ろうともしない。地元の役場に問い合わせても,観光パンフレットには写真でレイアウトに利用はするが,知る人は誰もいない。」との記載があるように(甲12),ジョン万次郎像の功績や容姿等に関心を持つ人は多いとしても,当該銅像の制作者が誰であるかについて関心を持つ人は少なく,また,C銅像についても,沼津市青野の岡野公園に設置された銅像であるから,ジョン万次郎像と比べても,その知名度は高くはなく,その制作者が被告と表示されていることに関心を持つ人が多いとは認めにくいものである。
このように,本件各銅像にその制作者として被告の名前が表示されていることにより,その本来の制作者である原告が有する社会的名誉や声望が害されているとしても,本件各銅像が建立されてから30数年が経過した現在においては,その程度がそれほど高くはないこと,及び,前記認定のとおり,原告は,本件各銅像の制作者として被告の通称が刻まれ,原告の名前が制作者として公表されるものでないことについては,銅像の依頼者と被告との関係などを考慮して,少なくともこれを黙認していたものであり,その後30数年を経過した今日に至って本件訴訟を提起したとの事情があることに照らせば,本件においては,現段階において謝罪広告請求を認めることは相当ではない。
(2) 著作権法115条に基づく通知請求について
ア 原告は,著作権法115条に基づき,被告が,本件各銅像の所有者等である土佐清水市及び駿河銀行に対し,別紙「通知目録(3)」及び同「通知目録(4)」の内容に記載のとおり,本件各銅像について,その制作者が被告ではなく原告であるとの通知をすること,及び,その制作者として原告の氏名を表示することを申し入れをすること(以下「本件通知請求」という。)を求めている。
前記認定の事実によれば,本件各銅像の所有者等は,本件各銅像の著作者は被告であると認識しているはずである。しかし,本件各銅像の著作者は,前記認定のとおり,原告である。このことと前記に認定した本件の経緯を考慮すれば,原告は,著作権法115条の「著作者・・・であることを確保・・・するために適当な措置」として,本件各銅像にその制作者であると表示されている被告に対し,本件各銅像の所有者等宛に,本件各銅像の著作者が原告であることを通知させることを請求することができるというべきである。すなわち,このような通知は,本件においては,原告が本件各銅像の著作者であることを確保し,原告と本件各銅像の所有者との紛争を未然に防止することにもつながることであり,同条にいう「適当な措置」に当たると認められる。
ただし,本件通知請求のうち,別紙通知目録(3)中,「私は,本書をもって,御市に対し,中浜万次郎銅像の台座にある「B?」との表示を抹消し,「A」の表示に改めていただくよう申し入れいたします。」との部分,及び,別紙通知目録(4)中,「私は,本書をもって,御行に対し,C銅像の台座にある「B?」との表示を抹消し,「A」の表示に改めていただくよう申し入れいたします。」との部分は,単なる事実の通知にとどまらず,申し入れた相手方に一定の行為を求める内容を含むものであり,被告が,本件各銅像の所有者等に対し,このような作為を求める請求権を有するわけではないことからすれば,被告に対し,このような作為を相手方に求める申入れをすることまで命じることは相当ではない。
イ 被告は,被告から本件各銅像の所有者に対し,本件通知請求の内容を申し入れたとしても,各所有者が,申し入れられたとおりに強いられるわけではないのであれば,これを判決主文で言い渡すことはできない,と主張する。
しかし,上記のとおり,被告が本件各銅像の所有者に対し,特定の内容の事実を通知することを認めるものであれば,被告に課せられた義務の内容は明確であるから,被告の上記主張は当たらない。著作権法115条において,既に表示された氏名について訂正請求をすることが認められている以上,氏名表示権に基づき,著作物の所有者に対し,表示の訂正請求の前段階の行為として,著作者についての事実の通知を求めることが許されないとする理由はない。
 被告は,原告に著作者としての権利が認められれば,自ら氏名表示権の行使が可能となるから,本件通知請求による義務を被告に強いるのは制裁的な負担であり,相当ではない,とも主張する。
しかし,前記に認定した本件の経緯,すなわち,被告は,原告に制作者としての報酬を支払うことを約束して,本件各銅像の制作を依頼し,実際にその制作をしてもらい,原告に対し,深く感謝していたにもかかわらず,最近になって,原告に対し,本件各銅像を制作したのは被告であり,原告は単なる助手にすぎなかったと主張するようになり,原告の名誉感情を著しく害したこと,また,上記のとおり,本件のような通知請求を認めることが,原告と本件各銅像の所有者との紛争を未然に防止することにつながることなどの事情も参酌すれば,原告が本件各銅像の著作者であることを確保するための措置として,上記のとおり,被告に本件各銅像の所有者に対し事実の通知をさせることを認めても,被告に対する制裁的な負担とまでは認められないというべきである。

5 争点6について
(1) 被告は,氏名表示権そのものは消滅時効にかからないとしても,本件通知請求や謝罪広告請求は単純なる債権であって時効によって消滅する,と主張する。
しかし,著作者人格権には譲渡性及び相続性がなく,保護期間の定めもないことからすれば,本件各銅像についての原告の著作者人格権(氏名表示権)が,消滅時効にかかることなく,存続することは明らかである。そして,被告も,本件各銅像が一般に展示され続けることを知りながら,本件各銅像に被告が制作者であるとの表示を刻したものであり,このことにより,現在において,本件各銅像が一般に展示され,原告の氏名表示権の侵害が継続しているのである。
以上によれば,被告の行為に起因して現在でも原告の氏名表示権に対する侵害が継続しているのであるから,原告の被告に対する本件通知請求権等が,時効により消滅すると解することはできない。
(2) 被告は,本件においては,原告が30数年にわたり,氏名表示権を行使していなかったのであるから,原告の氏名表示権に基づく請求権は,権利失効の原則により消滅している,と主張する。
しかし,氏名表示権(著作権法19条)については,公表権(同法18条)のように,著作者の同意があれば侵害の成立を阻却することを前提とする規定(同条2項)が設けられていないこと,著作者ではない者の実名等を表示した著作物の複製物を頒布する氏名表示権侵害行為については,公衆を欺くものとして刑事罰の対象となり得ることをも別途定めていること(同法121条)からすると,氏名表示権は,著作者の自由な処分にすべて委ねられているわけではなく,むしろ,著作物あるいはその複製物には,真の著作者名を表示をすることが公益上の理由からも求められているものと解すべきである。
このように,氏名表示権については,著作者の自由な処分にすべて委ねられているわけではなく,むしろ,著作物には真実に即した著作者の氏名表示をすることが公益上の要請から求められていること,原告が被告に対し,本件各銅像建立時に,本件各銅像に被告名を刻することを黙認していた経緯があるとしても,その後,前記のように,被告が原告を助手呼ばわりしたことにより,原告の名誉感情を毀損し,本訴に至ったこと,また,被告は,本件各銅像制作当時,依頼者から本件各銅像の制作について高額の報酬を受領しながら,結局,高額の報酬を得たことを原告に隠し,原告との約束を違え,原告に対し,何らの制作報酬も支払わないまま今日まで経過してきたことなど,原告との合意に反する行為を継続してきたこと,以上の事情を考慮すれば,本件においては,被告が原告の氏名表示権に基づく権利行使が行われないと信頼すべき正当な事由が存在するとは認められず,これを行使することが信義誠実に反するとは認めることはできない(最高裁昭和28年(オ)第1368号同30年11月22日第三小法廷判決・民集9巻12号1781頁参照)。
よって,被告が本件各銅像についてその制作者であると表示することを,原告が長期間にわたって黙認していたとしても,本件においては,後にその意を撤回し,真実を明らかにすることは,氏名表示権の正当な権利行使というべきである。被告の上記主張は採用することができない。


気になる部分を少し。

5 争点6について
(2) 被告は,本件においては,原告が30数年にわたり,氏名表示権を行使していなかったのであるから,原告の氏名表示権に基づく請求権は,権利失効の原則により消滅している,と主張する。
しかし,氏名表示権(著作権法19条)については,公表権(同法18条)のように,著作者の同意があれば侵害の成立を阻却することを前提とする規定(同条2項)が設けられていないこと,著作者ではない者の実名等を表示した著作物の複製物を頒布する氏名表示権侵害行為については,公衆を欺くものとして刑事罰の対象となり得ることをも別途定めていること(同法121条)からすると,氏名表示権は,著作者の自由な処分にすべて委ねられているわけではなく,むしろ,著作物あるいはその複製物には,真の著作者名を表示をすることが公益上の理由からも求められているものと解すべきである。

裁判所は、氏名表示には公益的目的もあるから、本人が氏名表示権を行使しなかったというだけで
権利失効するわけではない、という。
まず、確認しておくことは、公益目的のために氏名表示しないといけない、というわけではない。
あくまで氏名表示する場合には、正しいものでなくてはならない、というにすぎない。
(ただし、どのような氏名を表示するかは、氏名表示権の内容であって、変名も妨げられない。)
しかし、著作者人格権(氏名表示権)は放棄できないのか?ということについてはよくわからない。
あくまで黙認や権利失効という消極的処分はできません、ということか?
もし、著作権法121条の法意をあまりに強調しすぎるのなら、積極的処分も否定されることになる。
ゴーストライターと有名人側でも仲たがいが生じた場合には同様の問題が生じることにもなりかねない。

第百二十一条  著作者でない者の実名又は周知の変名を著作者名として表示した著作物の複製物(原著作物の著作者でない者の実名又は周知の変名を原著作物の著作者名として表示した二次的著作物の複製物を含む。)を頒布した者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

ただし、注意すべきは、本条の適用主体は「著作物の複製物…を頒布した者」のみである。
ちなみに、ゴーストライター(代作)と著作権法121条については、

いわゆる代作の場合においては、形式的には本条に該当しても、世人を欺くというような実質的な違法性、反社会性がない場合も少なくないものと解されている。
作花文雄『詳解著作権法 第3版』504頁(ぎょうせい,2004)

とある。ちょっと日本語分かりにくいのだが、違法性が阻却されるということか?
この条文についても、いろいろ考えてみるとおもしろいかもしれないが、今回はパス。