FTPでファイル共有〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(16)〜

登録商標一覧?〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(1)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050324/1111595733
著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(2)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050406/1112753849
著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(3)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050410/1113141421
教育目的利用〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(4)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050411/1113154362
著作権侵害の慰謝料〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(5)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050414/1113412430
企業とのやりとりメールの公開〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(6)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050414/1113445853
漫画の引用?〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(7)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050418/1113816642
著作物の利用と個人情報保護〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(8)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050422/1114144419
番組見逃した!他〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(9)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050427/1114583745
契約書の著作権著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(10)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050502/1114964637
美術の著作物の著作権著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(11)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050509/1115577829
著作権は誰でももてるか/ホームページへの音楽ファイル掲載〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(12)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050511/1115748685
時刻表の著作権著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(13)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050513/1115915809
パソコンソフトの私的複製〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(14)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050514/1116011532
画風について〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(15)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050529/1117299022
※この一覧はあくまで「はてな」での質問に関連して回答したものです。
 著作権絡みの記述は他にもありますので興味のある方は検索してみてください。

question:1118041197
分厚い参考書を持ち歩くのに不便なので、パスワード管理されたFTPサーバーで、PDF化したものを配布しようと思っています。参考書自体は、FTPを利用する者全員が購入して持っているのですが、この場合でも著作権的にはいけないことなのでしょうか?

う〜ん。おもしろい問題。
実害がないように思いますが…。一部は選撮見録とも通じる問題。
でも、厳密にいえば、いろいろと問題がありそうです。


ここでは、PDF化でまず複製。それをFTPに複製して、送信、と3段階。
ただ、ややこしいので、PDF化という複製行為とサーバへのアップロードという複製行為も
ここでは、とりあえず1つの複製として考えることにします。


まず、わかりやすい複製権。
私的複製であるためには、ごく限られた範囲内における使用を目的とすること。
その全員がどういう集まりでどの程度の人数なのかが問題。
「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」であればいいわけです。
この点は、質問文からはわかりにくいのですが、
その研究会の仲間で2〜3人程度なら「あきらか」にアウトとはいいにくい…。
一方で50人とかになってくるとアウト、というのが一般的かと。


で、公衆送信(送信可能化)権。

公衆送信権等)
第二十三条  著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
2  著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。


(定義)
第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 七の二  公衆送信 公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(有線電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。
 九の四  自動公衆送信 公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)をいう。
 九の五  送信可能化 次のいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすることをいう。
  イ 公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置(公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分(以下この号において「公衆送信用記録媒体」という。)に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう。以下同じ。)の公衆送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体として加え、若しくは情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に変換し、又は当該自動公衆送信装置に情報を入力すること。
  ロ その公衆送信用記録媒体に情報が記録され、又は当該自動公衆送信装置に情報が入力されている自動公衆送信装置について、公衆の用に供されている電気通信回線への接続(配線、自動公衆送信装置の始動、送受信用プログラムの起動その他の一連の行為により行われる場合には、当該一連の行為のうち最後のものをいう。)を行うこと。
5  この法律にいう「公衆」には、特定かつ多数の者を含むものとする。

ここでのFTPへのアップロードが公衆送信にあたるかどうか、
「公衆」からの求めに応じ自動的に行うものかどうかが問題。
いわゆるアップロードだから、すべて違法だとすれば、
オンラインストーレジサービスに他人の著作物をおくことさえアウトとなってしまいます。
そうではなく、「公衆」からの求めに応じうるかどうかが問題。
特定少数のメンバー以外がアクセスし得ない場合にまで、公衆送信権送信可能化権侵害ということはできないように思います。
つまり、ここでもアクセスする人が「公衆」かどうかが問題。
なお、必ずしも「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」でないこと=「公衆」ではないようですが、
この点は、それほどの差異はないですし、ここではそれほどは気にせずにいきます。


では、特定多数での使用、特定多数への送信あればすべてダメか。
確かに、ここでは全員がきちんと原本をもっている。
もし、それぞれが自分用のFTPにおいて自分だけに送信すれば問題がない(はず)である。
まとめておくと違法になるとすると、
複数の複製物を複数でそれぞれ用いるより、1つの複製物を複数で用いる方が、
権利者への影響は低く、この方が複製物のコントロールもしやすいにもかかわらず、
権利侵害の低さから例外を認める法の趣旨に反する結果になるのではないか、という疑問が生じる。
しかし、私的複製は本来原本の入手態様は関係ない。
図書館で借りた本も友達から借りたCDも私的複製は可能である。
違法にアップロードされたもののダウンロードだって構わないとの考えもあるのである。
本人がごく限られた範囲内で使用するのであれば、許容されているのである。
私的複製はだれの物を複製するかというのは関係ない。
そもそも、有体物所有権と無体物権とは別々のものなのである。
確かに、原本の所有者との関係ではバランスも図られている。
しかし、複製物に関して同様に解しうるかはなお議論の余地があろう。


同様なことは、選撮見録のところでも少し書いた。ただ、本事例とは少し異なる。
選撮見録は、それぞれが行為者として複製行為をし、それが管理情報とあいまって1つの複製物を構成しているのに対して、
本事例では、代表一人がみんなのために複製しているからである。
また、選撮見録の事例には、所有権だから…という問題ではない(放送録画)。


このように考えてくると、「公衆」へのアップロードとはいえない場合を除いては、
違法と判断される可能性が高いように思われる。何人のどういうグループか?ということが問題になろう。
他人への回答としては、やめておいた方が無難ということだろうか。実際にはおそらく問題にならないと思うが。


ところで、はてなの回答は相変わらずの無責任回答。
絶対に違法とは思わないけれど、問題になることはないとは、とてもではないですが言い切れません。
一方で、本当に「あきらかに」違法なのか?
「受信する相手が誰か」「複製を受け取る相手が誰か」は「まったく」関係ないのか?
という疑問が残ります。もし受取るのが自分自身だけだったら?ある特定の1人だけだったら?
「ごく」特定少数の場合には許容されるといえ、事情のわからない本文で「あきらか」とはいいきれないと思う。
同様に、複数共有だからダメとなるのかも疑問。複数がどれだけなのかが問題のように思います。
ネットワークの場合には送信可能化権の意義から、より限定するという解釈は可能かもしれませんし、
複数=即アウトという考え方そのものを否定するわけではありませんが…
そもそもその名乗る意味がわかりませんすが、行政書士資格者を名乗るにしては、説明が雑すぎます。
安易に適法と考えるな、と言いたかっただけなのでしょうが…。