時効取得と固定資産税課税

【衝撃事件の核心】男はなぜ校庭にミカンの木を植えたのか 記者の直撃に「まさか逮捕されるとは…」
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/100424/crm1004241159008-n1.htm

の記事中、

 民法では「20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者はその所有権を取得する」と定めており、司法書士は「市は20年以上、その土地を校庭として使っていたから、裁判になったら所有権が認められるだろう」と話す。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/100424/crm1004241159008-n5.htm

とある。
しかし、時効取得するためには、自主占有(「所有の意思をもって」)であることが必要である。
この点、

市側は85年前に買い取ったと説明するが、一方で土地の固定資産税を男側から徴収していた。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/100424/crm1004241159008-n1.htm

 さらに問題を複雑化させているのが固定資産税だ。市側は昨年まで男側から徴収しており、市関係者は「機械的に徴収していた。反省しなければいけない」と説明する。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/100424/crm1004241159008-n4.htm

とある。
そして、この点については、

また、地方公共団体が非所有地を占有し、他方で、所有者=登記名義人に対して固定資産税を課税徴収し続けた場合は、その地方公共団体に所有権がなく、課税対象者が所有者であることをその地方公共団体が承認しているものとみるべきであるから、その占有は他主占有であるとみるべきである(58)。


(58)福岡高判平成元年12月20日判タ725号153頁は、長年にわたり学校用地として使用占有してきた町が、登記名義人に対して所有権移転登記手続を求めることもなく放置し、固定資産税を賦課徴収してきたという事件において、町の所有の意思を否定した。町は所有者に対し適正に課税徴収しておきながら町に所有の意思を認めることには、いかなる合理的根拠もなく、当然の判断であったと思われる。なお、固定資産税は地方税であり、国にその徴収権限がないから、国が他人の土地の占有を継続した場合に、その他人に対して固定資産税の課税徴収がなされていたとしても、このことが国の占有について他主占有事情になることはないであろう(これと異なる見解として、林・前掲注(11)393頁がある)。東京地判昭和57年9月17日判時1060号96頁と東京地判昭和60年12月20日判タ637号129頁は、国の所有の意思を肯定している。もっとも、当時の国税である地租を国=占有者が登記名義人に対して課税徴収していた場合には別であろう。東京高判昭和50年9月23日判時793号11頁は、このような事案におて、国の所有の意思を否定した。
http://law-web.cc.sophia.ac.jp/sophia_law_review_files/contents/4601/4601tsuji.htm
辻伸行「所有の意思の判定の基本枠組について」

とある。
注釈を読む限り、今回の事件についてもかなりあてはまりそうな感じである。
課税しておきながら、時効を主張するのはあまりに勝手な主張のように思われる。