『くらしの法律百科』公式ホームページの誤り。
- 作者: 土肥幸代,曽田多賀,青木孝他,鍛冶良堅,鍛冶千鶴子
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2004/11/21
- メディア: 単行本
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という本がある。
法律というのもは日々改正されており、その内容があっという間に古くなってしまうということで、
http://ebook.shogakukan.co.jp/houritsu/で、改正点のフォローがなされている。
この点は、評価できる。が、その内容が誤っていては、百害あって一利なしである。
先日偶然ではあるが、その改正点紹介ページで誤りを見つけた。
→http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050525/1116960764
再度触れておこう。
●平成17年1月1日、刑法ならびに刑事訴訟法の一部が改正・施行されました。
(P829−838参照)
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明治40(1907)年に制定された刑法が全面的に見直され、平成17年1月1日より施行されました。
この刑法および刑事訴訟法の改正では、凶悪犯罪に対する罪を重くすることで、犯罪の防止を図るとともに、これまでにない犯罪に対応するため、新しい罪が設けられています。
おもな改正点や新設された刑は、下記のとおりです。
【刑法の改正について】
[2]各罪の法定刑の期間が延長されました。
4)危険運転致死傷罪の法定刑は、改正前は1年以上の懲役でしたが、15年以下に改められました。
http://ebook.shogakukan.co.jp/houritsu/050228/05.html
「危険運転致死傷罪の法定刑は、改正前は1年以上の懲役でしたが、15年以下に改められました。」
本当に?まずは、改正前の法文からみてみる。
刑法(平成16年法第156号による改正前のもの)
(危険運転致死傷)
第二百八条の二 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で四輪以上の自動車を走行させ、よって、人を負傷させた者は十年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。その進行を制御することが困難な高速度で、又はその進行を制御する技能を有しないで四輪以上の自動車を走行させ、よって人を死傷させた者も、同様とする。
(懲役)
第十二条 懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、一月以上十五年以下とする。
つまり、
ということになる。なお、()内は12条で判断したものである。
そして、平成17年1月1日施行の一部改正法は、次のようになる。
刑法等の一部を改正する法律(平成十六年法律第百五十六号)(抄)
(刑法の一部改正)
第一条 刑法(明治四十年法律第四十五号)の一部を次のように改正する。
第十二条第一項及び第十三条第一項中「十五年」を「二十年」に改める。
第二百八条の二第一項中「十年」を「十五年」に改める。
http://page.freett.com/okeydokey/に官報のpdfを掲載しています。
つまり、
刑法(平成16年法第156号による改正後のもの)
(危険運転致死傷)
第二百八条の二 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で四輪以上の自動車を走行させ、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。その進行を制御することが困難な高速度で、又はその進行を制御する技能を有しないで四輪以上の自動車を走行させ、よって人を死傷させた者も、同様とする。
(懲役)
第十二条 懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、一月以上二十年以下とする。
ということである。
どこをどうすれば「危険運転致死傷罪の法定刑は、改正前は1年以上の懲役でしたが、15年以下に改められました。」となるのか?
そもそも法定刑の異なる致死罪と致傷罪を同時に説明に説明していること自体ナンセンスである。
もし、12条は別途触れていることから、208条だけに触れるのであれば、
「危険運転“致傷罪”の法定刑は、改正前は“10年以下”の懲役でしたが、“15年以下”に改められました。」
とするべきではないではないか?この方が改正法の内容としては正確である。
ちなみに、http://ebook.shogakukan.co.jp/scatalog/houritsu/を見ると、監修者、執筆者は法律家のようだ。
先日本屋で内容を確認したところ、該部分の説明は間違ってなかったように思う。
つまり、このホームページの内容だけが間違っていると言うことになろう。
ホームページの内容は専門家が書いたものではないのだろうか?
当然ながら、ホームページの更新についても、監修者、執筆者が行っているはずである。
このような間違いどうなのか?その資質を疑わなくてはならない。
なお、この記述について、小学館に問い合わせメールを送信したが、執筆時現在返信はない。
最後に正確なものを掲げておくと、
となる。
http://ebook.shogakukan.co.jp/houritsu/050228/05.htmlの正誤
誤
4)危険運転致死傷罪の法定刑は、改正前は1年以上の懲役でしたが、15年以下に改められました。
↓
正4)危険運転致傷罪の法定刑は、改正前は10年以下の懲役でしたが、15年以下に改められました。
他にもあるかもしれないが、報酬もらって仕事している監修者の仕事のチェックを、
無償でするのは馬鹿らしいのでしない。というかそんな暇はない。