判決文は蛇足だらけ

今日は書籍を紹介。

司法のしゃべりすぎ (新潮新書)

司法のしゃべりすぎ (新潮新書)

損害賠償請求訴訟において、殺人の事実を認めながら除斥期間が経過したとして、請求を棄却。
この場合において、原告が殺人の事実認定に満足して控訴しなかった場合、
判決主文で勝訴した被告は控訴の利益がないとして、控訴することができない。
すなわち、被告は殺人の事実についてもはら争えなくなってしまい、事実上の不利益を受ける。
しかし、そもそも裁判所がその職責として示すべき判決理由は、判決主文を導くに必要なものだけである。
すなわち、本件においては、殺人の事実の有無にかかわず、除斥期間の経過により請求を棄却するべきなのではないか?
これが、著者のもつ問題認識である。
つまり、殺人の事実認定はいわゆる傍論=蛇足であると。
そして、この蛇足には、蛇足を争い得ない当事者の不利益だけなく、様々な不利益があるという。
また、判例集やマスコミが報道が蛇足にすぎない傍論をあたかも裁判所の主張にように扱うという現状についても、
苦言を呈している。
法律を職業にしている人は当然読むべきだろうし、そうでなくてもこのblogのように法律を扱う人は読むべき一冊であると思う。
あんまり書いてしまうと浜村淳の映画紹介みたいになってしまうので、今回はこの程度に留めます。
いずれ氏の考えについて考察してみたいと思いますが、今回は紹介まで。
なお、井上判事は横浜地方裁判所第6民事部にいっしゃるようです。
http://courtdomino2.courts.go.jp/K_hotei.nsf/CoverView/HP_C_Yokohama?OpenDocument&Start=1&Count=1000&Expand=1


参考記事:http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20040415#p1