パソコンソフトの私的複製〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(14)〜

登録商標一覧?〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(1)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050324/1111595733
著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(2)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050406/1112753849
著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(3)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050410/1113141421
教育目的利用〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(4)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050411/1113154362
著作権侵害の慰謝料〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(5)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050414/1113412430
企業とのやりとりメールの公開〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(6)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050414/1113445853
漫画の引用?〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(7)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050418/1113816642
著作物の利用と個人情報保護〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(8)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050422/1114144419
番組見逃した!他〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(9)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050427/1114583745
契約書の著作権著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(10)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050502/1114964637
美術の著作物の著作権著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(11)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050509/1115577829
著作権は誰でももてるか/ホームページへの音楽ファイル掲載〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(12)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050511/1115748685
時刻表の著作権著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(13)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050513/1115915809
※この一覧はあくまで「はてな」での質問に関連して回答したものです。
 著作権絡みの記述は他にもありますので興味のある方は検索してみてください。

question:1116001927

どの答えもなんだかなぁ〜ということで回答。


まずは、「普通のCDってレンタル屋があってコピーするのって合法なのに」という点。
まず、レンタル屋さんがCDをレンタル行為は貸与権を侵害するので許諾なくすることはできません。
(CDにシールが貼ってあったりするのはその証。)
利用者がそのCDをコピーできるのは、あくまで私的使用目的においてのみ許されます(30条1項)。
ただし、当初その目的で複製しても目的外に使用すれば違法となります(49条1項)。
なお、私的録音録画補償金制度はちょっとずれるような気がします。
この制度があるから(一般的に)私的使用目的の複製が許されるということになりません。
私的録音録画補償金が課されるのは一定の記録媒体への複製だけですので注意が必要です。
この制度の説明はここでは割愛します。

著作権法(昭和四十五年五月六日法律第四十八号)
(複製権)
第二十一条  著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。
貸与権
第二十六条の三  著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供する権利を専有する。
(私的使用のための複製)
第三十条  著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
 一  公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合
 二  技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合
2  私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器(放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性能を有するもの及び録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能として録音又は録画の機能を有するものを除く。)であつて政令で定めるものにより、当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるものに録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。
(複製物の目的外使用等)
第四十九条  次に掲げる者は、第二十一条の複製を行つたものとみなす。
 一  第三十条第一項…に定める目的以外の目的のために、これらの規定の適用を受けて作成された著作物の複製物を頒布し、又は当該複製物によつて当該著作物を公衆に提示した者


さて、「パソコンソフトはコピーするのが違法なのか」という点。
まず、

(侵害とみなす行為)
第百十三条
2  プログラムの著作物の著作権を侵害する行為によつて作成された複製物(当該複製物の所有者によつて第四十七条の二第一項の規定により作成された複製物並びに前項第一号の輸入に係るプログラムの著作物の複製物及び当該複製物の所有者によつて同条第一項の規定により作成された複製物を含む。)を業務上電子計算機において使用する行為は、これらの複製物を使用する権原を取得した時に情を知つていた場合に限り、当該著作権を侵害する行為とみなす。

ですが、ごく簡単にいえば、
この規定は、いわゆる海賊版海賊版と知って購入して使用したら、権利侵害とみなしますよ、というもの。
したがって、この質問の回答としては少しどうかと思います。質問はおそらく正規の複製物からの複製ということでしょうから。


さて、上に引用した30条を見てもらうと、
著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、」としているだけで、
プログラムの著作物は排除されていない。

(職務上作成する著作物の著作者)
第十五条  法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。

と比較すればよくわかる。
したがって、プログラムの著作物も「私的使用のための複製に該当すれば…その複製が認められる。」半田正夫『著作権法概説 第12版』166頁(法学書院,2005)


では、47条の2、すなわち

(プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等)
第四十七条の二  プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物を電子計算機において利用するために必要と認められる限度において、当該著作物の複製又は翻案(これにより創作した二次的著作物の複製を含む。)をすることができる。ただし、当該利用に係る複製物の使用につき、第百十三条第二項の規定が適用される場合は、この限りでない。
2  前項の複製物の所有者が当該複製物(同項の規定により作成された複製物を含む。)のいずれかについて滅失以外の事由により所有権を有しなくなつた後には、その者は、当該著作権者の別段の意思表示がない限り、その他の複製物を保存してはならない。

の規定は何かというと、半田正夫『著作権法概説 第12版』166-167頁(法学書院,2005)によれば、

企業が購入したプログラムを社員がバックアップ・コピーをとるなど、私的使用の範囲外に属する場合にはプログラム著作物の特性に照らしなんらかの配慮が必要になる。47条の2第1項は主としてこのような場合を想定して、無断複製等を許容したものである。

とされている。
したがって、あくまで私的使用目的であれば、著作権法上侵害とならないということになる。


もっとも、ここで「使用許諾」がでてくる。
この点、単なるシュリンクラップ契約での複製禁止は、30条が私的使用を認めた趣旨から問題であるとの指摘がある。
半田正夫『著作権法概説 第12版』151頁(法学書院,2005)
筆者もこのような立場である。
しかし、インストールに際して「同意」を問うような形式についてはなお、特約を認める余地があろう。
(この場合、インストールしなかった購入者の返品は認めるべきであろう。)
詳細は触れないが、かかる特約が有効なものとして認められると考えた場合には、
契約上の効力として、私的使用目的の複製であっても「パソコンソフトはコピーするのが違法」となると思われる。


最後に刑事罰について触れておく。

第八章 罰則
第百十九条  次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 一  著作者人格権著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項…に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者…を除く。)
第百二十三条  第百十九条…の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

したがって、私的使用の範囲をこえる複製の場合は、
「五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」となる。
ただし、親告罪なので、告訴が必要である。


私的使用目的の範囲内であるが、契約違反となる場合が問題であるが、
30条の趣旨及び119条1号の文言にかんがみれば、あくまで民事上の問題にすぎないと思われる。
契約違反で民事上「パソコンソフトはコピーするのが違法」であっても刑事上は違法でないというべきように思われる。