ファイル交換と著作隣接権

ファイル交換ソフト>個人ユーザーがレコード会社に賠償金
 日本レコード協会は6日、ファイル交換ソフトを利用して著作権を侵害して不正に楽曲をアップロードしていたユーザー5人と損害賠償金の支払いで和解したと発表した。国内で個人ユーザーが賠償金を払うのは初めて。各ユーザーからは反省と謝罪の言葉が述べられ、2度と権利侵害をしないことを約束する誓約書が出された。
毎日新聞) - 7月6日20時28分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050706-00000115-mai-soci

個人が初の賠償金支払い=ネット上の楽曲の無断公開で
 日本レコード協会は6日、楽曲を無断でインターネット上に公開していた5人の個人が、著作権保有するレコード会社5社に対し、1人平均48万円の賠償金を支払うことで合意したと発表した。同協会によると、この問題で個人が賠償金を支払うのは初めて。 
時事通信) - 7月7日0時0分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050706-00000161-jij-soci

裁判で損害賠償額の算出根拠が明示されれば、音楽配信の価格がある程度わかることになるんだけどなぁ。
規模がわからないので、48万円については何とも。
ちなみに、著作者の権利についてのJASRACの規程の一部を抜粋すると

(4) 非商用配信
? ダウンロード形式
同時に送信可能化する楽曲10 曲毎の年額又は月額使用料は、利用形態にかかわらず下表のとおりとする。
ただし、歌詞、楽譜等可視的な利用で外国の著作物を利用する場合の使用料は、2の規定により定めた料率又は額にリクエスト回数を乗じた額とする。

一般
年額50,000 円とする。
なお、送信可能化する日数が1 年に満たない場合は、月額5,000 円に予め定める利用月数を乗じて得た額とすることができる。


個人が営利を目的とせずに利用する場合
利用形態にかかわらず年額10,000 円とする。
なお、利用期間が1 年に満たない場合は月額1,000 円に予め定める利用月数を乗じて得た額、同時に送信可能化する楽曲が10 曲に満たない場合は1 曲当たり年額1,200円、利用期間が1 年に満たない場合は月額150 円に予め定める利用月数を乗じて得た額とすることができる。
http://www.jasrac.or.jp/profile/covenant/pdf/royalty/royalty.pdf
使用料早見表
http://www.jasrac.or.jp/network/jtakt/tariff.html

という感じ。「楽曲」が「曲+詩」なのか、それぞれ別なのかまで確認してません。
この点はいずれ…。(御存知の方コメント欄で指摘いただけると幸いです。)


ところで、記事中には「著作権」とあるが、著作隣接権では?
広義の著作権だから間違いとは言わないないし、法律上の侵害の事実を伝えるには十分だけど、
背後にある価値観はぜんぜん違うものだと思うんだけど…。

一般社団法人 日本レコード協会のプレスリリース
05.07.06
インターネット上で音楽ファイルを不正にアップロードしていた個人ユーザーと日本初の損害賠償支払い等に関する合意
http://www.riaj.or.jp/release/2005/pr050706.html

和解交渉は、レコード会社代理人弁護士の法律事務所で面談による方法で行われ、レコード会社側からは、著作権等を侵害する違法なファイル交換が音楽産業に重大な損害を与えることを説明しました。各ユーザーからは、軽率な違法行為に対する反省と謝罪の言葉が述べられ、今後二度と同様の権利侵害をしないことを約束する誓約書が提出されました。

別に「音楽産業に重大な損害を与え」ても、文化が衰退しなければ著作権法の目的は達成されます。
著作権特許権産業財産権と異なり、産業に損害が生じても文化が衰退しなければいいのです。
「音楽産業に重大な損害を与え」るものであるからといって、法律の存在意義から考えると、
(形式的な規範違反への批判は別論、)それだけで非難されるべきものではないはずなのです。
ここで主張されるべきは、

当協会は、「音楽創造のサイクル」を崩壊させ音楽文化の衰退を招く、インターネット上における音楽の違法利用については、今後とも断固たる姿勢で対処してまいります。

「音楽産業に重大な損害」→「「音楽創造のサイクル」を崩壊させ音楽文化の衰退を招く」だから、
著作権法の趣旨からしても問題、ということなのです。
ここでは、この理論には立ち入りません。現状明らかに成り立たないというものでないでしょう。
ただ、科学技術の発展により、個人での創作が容易になり、また個人での配信が容易になった場合、
もしかしたらレコード業界がなくたって著作権者の創作環境を維持できる時代がくるかもしれません。
そのときには、著作隣接権なんて不要!となり、文化保護のための産業保護はいらなくなるのです。
レコード製作者の権利は所詮そういうものであるということを理解しておくことが必要です。
(侵害してもいいよ、と言っているわけではないので御注意。)