国政選挙/国民審査制度いろいろ

今日から最高裁判所裁判官国民審査についても期日前投票ができます。
総務省のサイト「衆議院議員総選挙最高裁判所裁判官国民審査」には、

期日前投票は、8月31日(水)から9月10日(土)までできます。
(国民審査は期間が異なります。)
不在者投票、郵便等投票、在外投票などの制度もあります。
http://www.soumu.go.jp/senkyo/050911_senkyo/index.html

としか書いていないのですが…。
わけのわからない公職選挙法解釈を示すくらいなら、きちんと公報しろよ、と思ってしまいます。
ちなみに、「当日投票できない方へ」「テキストでまとめたページ」には

最高裁判所裁判官国民審査期日前投票期間は・・・?
9月4日(日)〜9月10日(土)(土日も含みます。)
http://www.soumu.go.jp/senkyo/050911_senkyo/toujitsu.html
http://www.soumu.go.jp/senkyo/050911_senkyo/text.html#c

とあります。でも文字は小さいし扱いが悪いです。(期日前投票は“きじつぜんとうひょう”と読むらしい)
で、なぜこんな違いがあるかというと、形式的な回答としては、法律がそうなっているから。

最高裁判所裁判官国民審査法(昭和二十二年十一月二十日法律第百三十六号)
第二十六条 (投票及び開票に関するその他の事項)  この法律及びこれに基づいて発する命令に規定するもののほか、投票及び開票に関しては、衆議院小選挙区選出議員の選挙の投票(公職選挙法第四十九条第四項の規定による投票に関する部分を除く。)及び開票の例による。ただし、同法第四十八条の二の規定の例による場合においては、審査の期日前七日から審査の期日の前日までの間に審査の投票をしなければならない。

公職選挙法(昭和二十五年四月十五日法律第百号)
期日前投票
第四十八条の二  選挙の当日に次の各号に掲げる事由のいずれかに該当すると見込まれる選挙人の投票については、第四十四条第一項の規定にかかわらず、当該選挙の期日の公示又は告示があつた日の翌日から選挙の期日の前日までの間、期日前投票所において、行わせることができる。
 一  職務若しくは業務又は総務省令で定める用務に従事すること。
 二  用務(前号の総務省令で定めるものを除く。)又は事故のためその属する投票区の区域外に旅行又は滞在をすること。
 三  疾病、負傷、妊娠、老衰若しくは身体の障害のため若しくは産褥にあるため歩行が困難であること又は監獄、少年院若しくは婦人補導院に収容されていること。
 四  交通至難の島その他の地で総務省令で定める地域に居住していること又は当該地域に滞在をすること。
 五  その属する投票区のある市町村の区域外の住所に居住していること。
2〜4項 省略

実質的な理由はなんでなんでしょう?
国会議事録をざっと検索しましたがわからず。
御存知の方、コメントかトラックバックをいただけると幸いです。
一応疑問はあるようで、

(1)最高裁判所裁判官国民審査期日前投票について
 衆議院議員総選挙の時に最高裁判所の裁判官の国民審査をやりま
すよね。でも、期日前投票(これまでの「不在者投票」のこと)の
期間は衆議院選挙は12日間、最高裁裁判官国民審査は7日間のため、
総選挙告示日翌日から5日間に市役所などへ期間前投票に行った市
民の方は、もう一度国民審査のために投票へ行かなければならない
のです。なかには「面倒くさい」と国民審査へ行かない人がいるた
め、常に衆議院選挙に投票する人より、国民審査へ行く人の方が少
ないんです。憲法で国民に与えられた最高裁の裁判官に対する審査
権ですから、選挙を管理する水戸市選挙管理委員会として、市民に
どのようなお知らせをしているのかを問う質問です。
http://www.sdp.or.jp/tama_da/200403.html

という記述が水戸市議会議員玉造順一氏のサイトにありました。
議事録はhttp://gikai02.kaigiroku.jp/kaigiroku/cgi-bin/WWWframeNittei.exe?USR=mito&PWD=&A=frameNittei&XM=000100000000000&L=1&S=1&Y=%95%bd%90%ac16%94%4e&B=255&T=1&T0=70&O=1&P1=&P2=&P3=&P=1&K=7&N=34&W1=%88%ea%94%ca%8e%bf%96%e2&W2=%8d%91%96%af%90%52%8d%b8&W3=&W4=&DU=0
市議会の質問なのでこんな感じにしかならないのですが…。


ところで、国民審査法第26条の「(公職選挙法第四十九条第四項の規定による投票に関する部分を除く。)」にいう
公職選挙法第四十九条第四項の規定の規定と言うのは洋上投票規定で、洋上投票では国民審査できないようです。
これもなんでなんでしょう?経費的にはどうせするならやった方がいいのでは?

<洋上投票>1票36万円 会計検査院が調査か
 衆院選期日前投票とともに「洋上投票」(不在者投票)も31日、全国54カ所の選管で始まった。遠洋漁船員らが船内からファクスで「1票」を投じる制度だが、ファクス機器の設置・リース料は1台約200万円かかる。一方、船舶のハイテク化やコスト削減のため日本人船員は減少傾向にある。中には「投票ゼロ」の例もあり、今年に入って会計検査院が調査を実施した模様だ。調査を受けた関係者は「1票に金がかかりすぎるのでは」と指摘されたと明かす。
 この制度は、公選法改正で00年6月の衆院選から実施され、今回で5回目。投票日に投票できない遠洋漁業や科学調査船の船員が、あらかじめ選管に申し込んで送信投票用紙を受け取り、公示日以降にファクス送信で「1票」の権利を行使する。今回の衆院選では、全国54選管に受信機器が国費で設置され、合計費用はざっと1億円になる。
 全日本海員組合(東京)によると、前回衆院選(03年11月)で48隻約300人が投票したという。単純計算すると、1票の費用は約36万円になる。
 ある関係者は「今年1月、会計検査院の調べがあり、1票に金がかかり過ぎると指摘された」という。検査院は「調査段階の内容は一切公表していない。洋上投票の調査の有無も答えられない」と回答する。
 神奈川県内では、横須賀市三浦市の選管が利用する。横須賀市選管の場合、前回衆院選で29人が利用、昨年7月の参院選ではゼロだった。三浦市選管は両方ともゼロ。横須賀市選管は「今回は解散が急だったためか、申請は1件」と話す。
 同組合によると、遠洋漁船の多くは解散時には既に出漁中の上、日本人船員は減少傾向にある。洋上投票には立会人と投票管理者、投票者の3人の日本人が必要で、2人以下では投票できない。同組合は「貴重な1票の権利行使を単純に費用対効果で判断するのはいかがなものか」と強調している。【網谷利一郎】
毎日新聞9月1日]
http://girls.www.infoseek.co.jp/news/politics/story.html?q=01mainichiF0901m155&cat=2

費用は票を投じることにかかっているわけではないようですし…。
その他不在者投票については、総選挙と同様です。制限条項がないですし。

不在者投票
第四十九条  前条第一項の選挙人の投票については、同項の規定によるほか、政令で定めるところにより、第四十二条第一項ただし書、第四十四条、第四十五条、第四十六条第一項から第三項まで、第四十八条及び第五十条の規定にかかわらず、不在者投票管理者の管理する投票を記載する場所において、投票用紙に投票の記載をし、これを封筒に入れて不在者投票管理者に提出する方法により行わせることができる。
2  選挙人で身体に重度の障害があるもの(身体障害者福祉法 (昭和二十四年法律第二百八十三号)第四条 に規定する身体障害者、戦傷病者特別援護法 (昭和三十八年法律第百六十八号)第二条第一項 に規定する戦傷病者又は介護保険法 (平成九年法律第百二十三号)第七条第三項 に規定する要介護者であるもので、政令で定めるものをいう。)の投票については、前条第一項及び前項の規定によるほか、政令で定めるところにより、第四十二条第一項ただし書、第四十四条、第四十五条、第四十六条第一項から第三項まで、第四十八条及び第五十条の規定にかかわらず、その現在する場所において投票用紙に投票の記載をし、これを郵便又は民間事業者による信書の送達に関する法律 (平成十四年法律第九十九号)第二条第六項 に規定する一般信書便事業者、同条第九項 に規定する特定信書便事業者若しくは同法第三条第四号 に規定する外国信書便事業者による同法第二条第二項 に規定する信書便(以下「郵便等」という。)により送付する方法により行わせることができる。
3  前項の選挙人で同項に規定する方法により投票をしようとするもののうち自ら投票の記載をすることができないものとして政令で定めるものは、第六十八条の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、あらかじめ市町村の選挙管理委員会の委員長に届け出た者(選挙権を有する者に限る。)をして投票に関する記載をさせることができる。
4  選挙人で船舶安全法 (昭和八年法律第十一号)にいう遠洋区域を航行区域とする船舶その他これに準ずるものとして総務省令で定める船舶に乗つて本邦以外の区域を航海する船員(船員法 (昭和二十二年法律第百号)第一条 に規定する船員をいう。)であるもののうち選挙の当日前条第一項第一号に掲げる事由に該当すると見込まれるものの衆議院議員の総選挙又は参議院議員通常選挙における投票については、同項及び第一項の規定によるほか、政令で定めるところにより、第四十二条第一項ただし書、第四十四条、第四十五条、第四十六条第一項から第三項まで、第四十八条及び第五十条の規定にかかわらず、不在者投票管理者の管理する場所において、総務省令で定める投票送信用紙に投票の記載をし、これを総務省令で指定する市町村の選挙管理委員会の委員長にファクシミリ装置を用いて送信する方法により、行わせることができる。


なお、「衆議院小選挙区選出議員の選挙の投票」の例によるので、国民審査は在外投票ではできません。

(在外投票等)
第四十九条の二  在外選挙人名簿に登録されている選挙人(当該選挙人のうち選挙人名簿に登録されているもので政令で定めるものを除く。以下この条において同じ。)で、衆議院議員又は参議院議員の選挙において投票をしようとするものの投票については、第四十八条の二第一項及び前条第一項の規定によるほか、政令で定めるところにより、第四十四条、第四十五条第一項、第四十六条第一項から第三項まで、第四十八条及び次条の規定にかかわらず、次の各号に掲げるいずれかの方法により行わせることができる。
 一  衆議院議員又は参議院議員の選挙の期日の公示又は告示の日の翌日から選挙の期日前五日(投票の送致に日数を要する地の在外公館であることその他特別の事情があると認められる場合は、あらかじめ総務大臣外務大臣と協議して指定する日)までの間(あらかじめ総務大臣外務大臣と協議して指定する日を除く。)に、自ら在外公館の長(総務大臣外務大臣と協議して指定する在外公館の長を除く。以下この号において同じ。)の管理する投票を記載する場所に行き、在外選挙人証及び旅券その他の政令で定める文書を提示して、投票用紙に投票の記載をし、これを封筒に入れて在外公館の長に提出する方法
 二  当該選挙人の現在する場所において投票用紙に投票の記載をし、これを郵便等により送付する方法
2  在外選挙人名簿に登録されている選挙人で、衆議院議員又は参議院議員の選挙において投票をしようとするものの国内における投票については、第四十二条第一項ただし書中「選挙人名簿」とあるのは「在外選挙人名簿」と、「投票所」とあるのは「指定在外選挙投票区の投票所」と、第四十四条第一項中「投票所」とあるのは「指定在外選挙投票区の投票所」と、同条第二項中「、選挙人名簿」とあるのは「、在外選挙人証を提示して、在外選挙人名簿」と、「当該選挙人名簿」とあるのは「当該在外選挙人名簿」と、「第十九条第三項」とあるのは「第三十条の二第四項」と、「書類。次項、第五十五条及び第五十六条において同じ。」とあるのは「書類」と、第四十八条の二第一項中「期日前投票所」とあるのは「市町村の選挙管理委員会の指定した期日前投票所」と、「投票区」とあるのは「指定在外選挙投票区」と、同条第二項の表第四十二条第一項の項中「第四十二条第一項」とあるのは「第四十九条の二第二項の規定により読み替えて適用される第四十二条第一項」と、「選挙の当日投票所」とあるのは「選挙の当日指定在外選挙投票区の投票所」と、「期日前投票所」とあるのは「市町村の選挙管理委員会の指定した期日前投票所」とする。
3  在外選挙人名簿に登録されている選挙人で、衆議院議員又は参議院議員の選挙において投票をしようとするものの投票については、前条第二項及び第三項の規定は、適用しない。


附 則 抄
8 当分の間、この法律の適用については、第三十条の三第二項中「一以上の投票区」とあるのは「投票区」と、第三十条の六第二項、第三十条の七第一項、第四十九条の二及び附則第六項の規定により読み替えて適用される第三十条の七第一項中「衆議院議員又は参議院議員の選挙」とあるのは「衆議院比例代表選出)議員又は参議院比例代表選出)議員の選挙」と、第四十二条第一項中「登録されていない者」とあるのは「登録されていない者(衆議院比例代表選出議員又は参議院比例代表選出議員の選挙以外の選挙については、選挙人名簿に登録されていない者)」と、第四十九条の二第二項中「「在外選挙人名簿」とあるのは「「衆議院比例代表選出議員又は参議院比例代表選出議員の選挙については、在外選挙人名簿」と、第百九十四条第一項、第百九十五条及び第二百四十七条中「専ら在外選挙人名簿に登録されている選挙人(第四十九条の二第一項に規定する政令で定めるものを除く。)で衆議院議員又は参議院議員の選挙において投票をしようとするものの投票に関してする選挙運動で、」とあるのは「参議院比例代表選出議員の選挙にあつては、専ら在外選挙人名簿に登録されている選挙人(第四十九条の二第一項に規定する政令で定めるものを除く。)の投票に関してする選挙運動で」とする。

附則のせいで選挙区選挙だけでなく、国民審査もできないようです。
意図は調べていませんが、国民審査は全国区なんですし、比例同様でいいと思うのですが、どうなんでしょう?


話は戻って、期日前投票は明日からですが、告示は衆議院議員総選挙と同じ「期日前十二日まで」です。

最高裁判所裁判官国民審査法(昭和二十二年十一月二十日法律第百三十六号)
第五条 (審査の期日及び裁判官の氏名の告示)  中央選挙管理会は、審査の期日前十二日までに、審査の期日及び審査に付される裁判官の氏名を官報で告示しなければならない。

公職選挙法(昭和二十五年四月十五日法律第百号)
(総選挙)
第三十一条  衆議院議員の任期満了に因る総選挙は、議員の任期が終る日の前三十日以内に行う。
2  前項の規定により総選挙を行うべき期間が国会開会中又は国会閉会の日から二十三日以内にかかる場合においては、その総選挙は、国会閉会の日から二十四日以後三十日以内に行う。
3  衆議院の解散に因る衆議院議員の総選挙は、解散の日から四十日以内に行う。
4  総選挙の期日は、少なくとも十二日前に公示しなければならない。
5  衆議院議員の任期満了に因る総選挙の期日の公示がなされた後その期日前に衆議院が解散されたときは、任期満了に因る総選挙の公示は、その効力を失う。
通常選挙
第三十二条  参議院議員通常選挙は、議員の任期が終る日の前三十日以内に行う。
2  前項の規定により通常選挙を行うべき期間が参議院開会中又は参議院閉会の日から二十三日以内にかかる場合においては、通常選挙は、参議院閉会の日から二十四日以後三十日以内に行う。
3  通常選挙の期日は、少なくとも十七日前に公示しなければならない。

「総選挙」「通常選挙」という使い分けは公選法の見出しがしてたんですね。
総選挙の期日は「少なくとも十二日前に公示」なのに対して、通常選挙の期日は「少なくとも十七日前に公示」です。
微妙にいろいろ違います。


話はいろいろそれましたが、国民審査できない人も結構多いようです。
国民審査も司法権の民主的統制という民主主義を支える一つの制度である以上、
国民審査権侵害(15I,79II,14)訴訟とかしたらどうなるだろう?とか思ったりしています。