贈賄被告事件の被告人の公職選挙での当選

投票率87.97%の村長選挙で過半数を獲得して被告人拘留中の矢上雅義氏が再選した。

相良村長選>贈賄罪に問われ拘置中の現職が再選 熊本県
 02年の助役選任を巡る汚職事件で今年1月に現職村長が逮捕された熊本県相良村で13日、任期満了に伴う村長選が投開票され、贈賄罪に問われ拘置中の無所属現職、矢上雅義被告(45)=公判中=が2人の新人候補を破り再選を果たした。拘置中の候補者の当選は極めて異例。無罪を主張している矢上被告の拘置は当面続く見通しで、すでに9カ月半を超えた村長不在の異常事態はなお続くことになった。
 得票数は、矢上被告1911票▽前村副議長、小村仁氏(50)1661票▽元日本道路公団職員、梅山巧氏(69)268票。投票率は87.97%だった。
 過去には、03年4月の和歌山市議選で、収賄罪に問われ拘置中の元市長が立候補しトップ当選した例などがあるが、首長選では「データがないので分からないが、少なくとも聞いたことがない」(総務省選挙部)。
 公選法上、公職者が収賄罪に問われ、有罪が確定すれば被選挙権を失い失職するが、贈賄罪での起訴を同法が想定していないため、執行猶予付きの有罪判決なら、法律上は村長職にとどまることが出来る。
毎日新聞) - 11月13日22時47分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051113-00000072-mai-pol

さて、記事の最後の部分。
実刑での有罪確定のばあい、法99条、11条1項2号により、失職する。
しかし、有罪でも執行猶予の場合、法11条1項3号により、失職しない。
「贈賄罪での起訴を同法が想定していないため、執行猶予付きの有罪判決なら、
法律上は村長職にとどまることが出来る」ということになる。
ただし、執行猶予でも(公職にある間の)収賄罪であれば、法99条、11条1項4号により失職する。
公選法上、公職者が収賄罪に問われ、有罪が確定すれば被選挙権を失い失職するが」というのがこれにあたる。
11条1項4号に刑法 (明治四十年法律第四十五号)第百九十八条が含まれていないのである。
「公職にある間に犯した」場合に限定し、特に問題視するべきは身分犯である収賄罪だからだろう。

公職選挙法(昭和二十五年四月十五日法律第百号)
(被選挙権の喪失に因る当選人の失格)
第九十九条  当選人は、その選挙の期日後において被選挙権を有しなくなつたときは、当選を失う。

(選挙権及び被選挙権を有しない者)
第十一条  次に掲げる者は、選挙権及び被選挙権を有しない。
 一  成年被後見人
 二  禁錮以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者
 三  禁錮以上の刑に処せられその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)
 四  公職にある間に犯した刑法 (明治四十年法律第四十五号)第百九十七条から第百九十七条の四までの罪又は公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律 (平成十二年法律第百三十号)第一条の罪により刑に処せられ、その執行を終わり若しくはその執行の免除を受けた者でその執行を終わり若しくはその執行の免除を受けた日から五年を経過しないもの又はその刑の執行猶予中の者
 五  法律で定めるところにより行われる選挙、投票及び国民審査に関する犯罪により禁錮以上の刑に処せられその刑の執行猶予中の者 2  この法律の定める選挙に関する犯罪に因り選挙権及び被選挙権を有しない者については、第二百五十二条の定めるところによる。
3  市町村長は、その市町村に本籍を有する者で他の市町村に住所を有するもの又は他の市町村において第三十条の六の規定による在外選挙人名簿の登録がされているものについて、第一項又は第二百五十二条の規定により選挙権及び被選挙権を有しなくなるべき事由が生じたこと又はその事由がなくなつたことを知つたときは、遅滞なくその旨を当該他の市町村の選挙管理委員会に通知しなければならない。
(被選挙権を有しない者)
第十一条の二  公職にある間に犯した前条第一項第四号に規定する罪により刑に処せられ、その執行を終わり又はその執行の免除を受けた者でその執行を終わり又はその執行の免除を受けた日から五年を経過したものは、当該五年を経過した日から五年間、被選挙権を有しない。

ちなみに、
「刑の執行を終るまでの者」とは刑または刑の執行の減刑を受けたとき、その減軽された刑の執行を終るまでの者及び仮出獄を許された者で出獄後その刑期を終了するまでの者等、
「刑の執行がなくなるまでの者」とは、刑の執行を猶予されているもので、その猶予の言い渡しを取り消されることなく猶予期間を経過し、刑の言い渡しが効力を失うまでの者及び刑の時効により刑の執行を免除されるまでの者等、
だそうです(http://www.fks.ed.jp/DB/47000.kyouiku_fukushima/00034/html/00041.html)。
3号にいう「刑の執行猶予中の者を除」いた「禁錮以上の刑に処せられその執行を受けることがなくなるまでの者」は、
実刑判決を受けたものの、執行されない場合で、刑の時効により刑の執行を免除されるまでの者などをいうようです。