棋泉vs米長邦雄訴訟(12)前回(11)更新からのいろいろ

棋泉vs米長邦雄訴訟
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050520/1116520052
棋泉vs米長邦雄訴訟(2)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050521/1116607505
棋泉vs米長邦雄訴訟(3)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050523/1116786786
棋泉vs米長邦雄訴訟(4)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050525/1116955919
棋泉vs米長邦雄訴訟(5)/法律書の発行差し止め(2)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050526/1117047990
棋泉vs米長邦雄訴訟(6)第1回口頭弁論(2005.6.21)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050622/1119381587
棋泉vs米長邦雄訴訟(7)訴状要旨と答弁書公表
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050630/1120062959
棋泉vs米長邦雄訴訟(8)第2回口頭弁論は延期?非公開期日?
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050729/1122573987
棋泉vs米長邦雄訴訟(9)前回(8)更新からのいろいろ(1)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050920/1127146029
棋泉vs米長邦雄訴訟(10)前回(8)更新からのいろいろ(2)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050922/1127323571
棋泉vs米長邦雄訴訟(11)前回(10)更新からのいろいろ
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20051117/1132159433

米長氏のサイトの更新があったようです。
http://www.yonenaga.net/tyosakuken.htm
あれ?

全ては弁護士に一任。判決は勝ちか負けなのかどうかは分りませんが、どのような判決が出ても私が
現時点で何も言うべきではない。私は一切何もしゃべらない。

って言ってませんでしたっけ?
まあいいや。なかみをみてみたい。

更新日:05.11.20
販売と印税・廃棄


契約
将棋セミナー21は三者の契約です。
著作権者・米長(甲)、製作会社・駒音コーポレーション(乙)、販売・毎日コミュニケーションズ(丙)です。
今回は乙が甲を訴えています。
契約書に不備があるのか、出版業界とデジタル業界の違いなのか、ともかく認識に差がある。
私(甲)は出版本で例えれば著者であり、乙はライター、印刷所、出版社を兼ねた存在という認識です。
今回は契約書の第8条に基づいて条文と販売経過、廃棄のいきさつ、金額について正しい情報を掲載します。

以前に棋泉vs米長邦雄訴訟(2) - 言いたい放題で紹介した契約書をみると、

                契 約 書
 株式会社米長企画(以下、甲という)と駒音コーポレーション株式会社(以下、乙とい
う)は、パソコンソフト『将棋セミナー21』に関し以下のとおり契約を締結する。
第1条(著作権の帰属)
    本件ソフトウェアに関し、甲の作成した詰め将棋の問題及び実戦譜面解説らに含
    む表現についての著作権著作者人格権は甲に帰属するものとする。
http://www.koma.ne.jp/cgi-bin/nik/nikup/1116197249.gif

とある。これは原告側がアップしたものだが、この契約書には丙はいない(三者間契約は必然ではない)。
もっといえば、“著作権者・米長(甲)”という表現自体一方的主張であって、当然の前提事実とはならないだろう。
また、「契約書に不備があるのか、出版業界とデジタル業界の違いなのか、ともかく認識に差がある。」というが、
今までの両者のホームページでの主張を総合すると、争点は著作物性となっているのではないだろうか。
もちろん、最初のころに述べたとおり、複製されたと主張されるものに著作物性があるとして、
その著作物の複製権侵害あるか、つまりその著作物の著作権者は誰なのかということも問題となろう。
ただ、もし「私(甲)は出版本で例えれば著者であり」という認識であるならば、
そもそも著作物性を云々する必要はなく、それを前提にして自らが権利者であることを主張すればいいのである。


この点、契約書によれば、米長氏の著作権については、
「甲の作成した詰め将棋の問題及び実戦譜面解説らに含む表現について」あるというにすぎない。
確かに、過去に紹介された局面を思い出すと、それは「詰め将棋の問題及び実戦譜面解説らに含む表現」にあたるものと思われる。
そうすると、問題は「甲の作成した」にあたるかどうかである。
仮に、今まで争点となっていた「著作物の複製」があるとして、その著作物の著作権者が誰であるのかということが問題となるのである。
ここまでくると、「甲の作成した」といえるかどうかという事実認定の問題である。
ただ、そうであれば今までの訴訟手続きでその旨争っていたかどうかが問題となろう。
そもそもまず「著作物」の複製であるのか、という点のみが争点となったのでれば、
次にその権利者が誰であるのかという点が当然問題となることになる。
これに対して、あくまでも乙に権利がある著作物性ということで、著作物性が争われていたのであれば、
「今になって…」という主張にあたることになる。
実際の裁判でどのような主張をしているのかわからないけれども、
「その譜面解説は私が作成したものだ」というのであれば、
最近の局面の著作物性についての問題提起は特にする必要がなかったともおもえてくる。
仮に前者だとしても、原告側も少なくとも何らかの著作物性があり、
その複製であるとの心証を裁判所が抱いていると判断したように思われる。
「私(甲)は出版本で例えれば著者であ」るという認識自体についてはなんともいえないが、
果たしてその認識を反映するような訴訟追行を行っていたのだろうか、ということが気になるのである。
ホームページでは今まで「著作物」についての複製権侵害がありますか?という問いであった。
パソコンソフト『将棋セミナー21』について提示された局面は、原告側の作成であることを前提にしているかのように思えたのである。


ところで、文章は以下のようにつづく。

契約書
販売については奇妙な特約条項が入っております。
一般的な流通での販売と、インターネット上や雑誌等での直販方式です。


第8条(著作権使用料及び支払方法・時期)
乙は、甲に対して次のとおり本件ソフトウエアの著作権使用料を支払う。
イ 18,000本までは1%
ロ 18,001本以降は3%


この印税に相当する取り分が、私としては乙への好意的なものと思っております。

ここでの著作権料は、1条で確認されている「甲の作成した詰め将棋の問題及び実戦譜面解説らに含む表現についての著作権
に関するものであるから、これを述べたところで結局「甲の作成した」ものかどうかはわからない。
もちろん「著作権使用料」から、どの程度が甲の著作物であるかについての判断がある程度可能かもしれない。
しかし、いくら儲けたかについて熱心に語ったところで、問題部分が「誰の」著作物であるかは十分に争点となりえよう。
ただ、過去の記事をふりかえってみると、

契約書 2005年5月11日(水)
ソフト全般の著作権が駒音にあるのは当然だが「米長詰将棋と、米長実戦の棋譜解説、この部分だけは明確に米長企画に著作権がありますよ」というのを明文化したもので、かの中堅棋士も修正された契約書を見せられたというわけはないから、一部文言だけに注意が行ってしまったのだろう。
http://www.koma.ne.jp/cgi-bin/nik/nik.cgi?log=0505&idc=20050511

とあるので、その局面が「“米長”詰将棋と、“米長”実戦の棋譜解説」のものであれば、
「明確に米長企画に著作権があ」るといって終わりような気がしなくもない。
そうでない場合、明確にどちらとはいえず、問題が残ろう。


さいごに廃棄の点。

問題は更新時に生じました。


契約解除と商品廃棄
流通は売れないんです。半年後には一ヶ月に一本などという信じられない数字。私(甲)の収入は以下が全てです。
駒音より  276,268円
毎コミより 102,548円
合計378,816円もの大金を手にしました。
一年後の契約は甲乙丙三者間で解除となり、流通しないものになりました。
乙より甲への申し出がありました。
「残存している物を、乙が自由に活用させて欲しい。近代将棋の賞品として使うなど普及に役立てたい」
甲から乙への返答は3項目です。
「残存本数を明示して下さい。
期限はいつまでかを明示して期日を決めましょう。
甲への印税相当がゼロは困ります」
交渉は主として乙の上司であったナイタイ出版のNO.2の人と、甲が致しました。
勿論、乙同席。
その結果、以下の通りに決定し、合意文書を交わしました。
「全て廃棄し、その費用は甲が全額負担する」
甲は丙の紹介により業者を選定して一件落着。
その折は、ナイタイ出版及び毎日コミュニケーションズの方々には大変お世話になりました。この場を借りて厚くお礼申し上げます。

ネット上
通販は無くなりましたが、直販はどうであったか。
インターネット等で本件の宣伝、広告、販売をしているサイトの運営者には「極力中止して欲しい」と甲は願い出ました。
ご協力有難うございました。

この文からはなぜ契約解除に至ったのかよくわからない。
当事者間での合意があることなので、別に構わないのだが、米長氏は解除しなくても不利益はなかったように思うのだが。
訴訟との関係でいえば、直接的関係のない事項のように思われるのだが、何がいいたかったのだろう?


かなり当事者の場外乱闘に振り回されているような気がしなくはない。
まあとりあえずの判決がでるまではそういうものなのかもしれないけれど…。
ただ、双方の代理人弁護士さんはどう思っているんでしょうか?
中途半端にいろいろ言って欲しくないようにも思うのですが…。