保護期間問題part2

こんな報道。

黒澤8作品の格安DVD販売 東宝が差し止め求め提訴
2007年04月02日20時54分
 「姿三四郎」「生きる」など、故・黒澤明監督の映画8作品を廉価版DVDで販売するのは著作権の侵害だとして、製作会社の東宝が2日、DVDの販売会社に販売中止を求める訴訟を東京地裁に起こした。
 8作品の廉価DVDはコスモコンテンツ(本社・東京)が販売している。東宝は黒澤作品のDVDを1本あたり約6000円で売っているが、コスモ社は約千円。東宝は差額で生じた被害を1500万円と推算している。
 映画の著作権保護期間は旧著作権法では「著作者の生前に公表された場合、著作者の死後38年」だったが、71年から「公表後50年」に改まった。
 東宝は、先の8作品は70年以前の公開なので旧著作権法が適用され、98年死去の黒澤監督の場合、著作権は2036年まで存続すると主張。コスモ社に販売中止を文書で申し入れたが、「黒澤作品は公表後50年たっており著作権は満了した」と返答があったという。
 両社の著作権法の解釈は食い違うが、文化庁著作権課は「訴訟になる事例は聞いたことがない」という。コスモ社は「訴状が届いておらず、担当者も不在で現時点では答えられない」としている。
http://www.asahi.com/national/update/0402/TKY200704020249.html?ref=rss

この記事から法律的なところを整理。
保護期間についての旧法と現行法の関係はというと、

著作権法
(昭和四十五年五月六日法律第四十八号)
附 則
(著作物の保護期間についての経過措置)
第七条  この法律の施行前に公表された著作物の著作権の存続期間については、当該著作物の旧法による著作権の存続期間が新法第二章第四節の規定による期間より長いときは、なお従前の例による。

とのこと。
で、映画の著作物の保護期間は、現行法だと、

(映画の著作物の保護期間)
第五十四条  映画の著作物の著作権は、その著作物の公表後五十年(その著作物がその創作後五十年以内に公表されなかつたときは、その創作後七十年)を経過するまでの間、存続する。
2  映画の著作物の著作権がその存続期間の満了により消滅したときは、当該映画の著作物の利用に関するその原著作物の著作権は、当該映画の著作物の著作権とともに消滅したものとする。
3  前二条の規定は、映画の著作物の著作権については、適用しない。
(ただし、平成15年法第85号による改正前のもの)


旧法だと、

(旧著作権法 明治三十二年三月四日法律第三十九号)
第三条 〔保護期間−生前公表著作物〕 発行又は興行したる著作物の著作権は著作者の生存間及其の死後三十年間継続す
数人の合著作に係る著作物の著作権は最終に死亡したる者の死後三十年間継続す
第六条 〔同前−団体著作物〕 官公衙学校社寺協会会社其の他団体に於て著作の名義を以て発行又は興行したる著作物の著作権は発行又は興行のときより三十年間継続す
第九条 〔期間の計算〕 前六条の場合に於て著作権の期間を計算するには著作者死亡の年又は著作物を発行又は興行したる年の翌年より起算す
第二十二条の三 〔映画の著作権〕 活動写真術又は之と類似の方法に依り製作したる著作物の著作者は文芸、学術又は美術の範囲に属する著作物の著作者として本法の保護を享有す其の保護の期間に付ては独創性を有するものに在りては第三条乃至第六条及第九条の規定を適用し之を欠くものに在りては第二十三条の規定を適用す
第二十三条 〔保護期間−写真著作物〕 写真著作権は十年間継続す
前項の期間は其の著作物を始めて発行したる年の翌年より起算す若し発行せざるときは種板を製作したる年の翌年より起算す
写真術に依り適法に美術上の著作物を複製したる者は原著作物の著作権と同一の期間内本法の保護を享有す但し当事者間に契約あるときは其の契約の制限に従う
第五十二条 第三条乃至第五条中三十年とあるは演奏歌唱の著作権及第二十二条の七に規定する著作権を除く外当分の間三十八年とす
第六条中三十年とあるは演奏歌唱の著作権及第二十二条の七に規定する著作権を除く外当分の間三十三年とす
第二十三条第一項中十年とあるは当分の間十三年とす
http://www.cric.or.jp/db/fr/old_index.html

となる。


「生きる」は、wikipediaによれば、黒澤明監督(1998年9月6日没)による1952年の日本映画だそうなので、これを前提に考える。
(旧法の保護期間の変遷は無視します。間違っていればご指摘ください。)
まず、旧法下において、(ややこしいので、独創性は認める前提で、)映画の著作物の保護期間を考えると、

著作者が黒澤氏だとすると、1999年1月1日から38年で(旧22の3、3、52)2036年12月31日までとなる。(東宝の主張)。
ちなみに、現行法であれば、1953年1月1日から、50年で、2002年12月31日までとなり(改正前54)、附則7により、旧法によることになる。


ところで、旧法において、著作者が映画会社だとすると、すこし異なる。
この場合、1953年1月1日から33年で、1985年12月31日となり、すでに保護期間が満了している。
一方、現行法でも、前述のとおり2002年12月31日までとなり(改正前54)、附則7により、新法によることになるが、(コスモコンテンツの主張)
現時点においては満了している。(一部訂正)

結局のところ、旧法における著作者は誰かということだと思うが(ちなみに加戸逐条は両説を挙げて説明している。)、
ここから先はよくわからないので、今回はここまで。


つづく。。。(可能性は、低い)。