僧侶の労組

長野・善光寺で僧侶らが労組…「賃上げ交渉したい」
 長野市善光寺の僧侶ら9人が、個人加盟できる労働組合に加入し、寺院内に独自の分会を結成した。分会は「今後、賃上げなどの交渉を行いたい」としている。
 僧侶を中心にした寺院内労組は全国的にも珍しく、労働団体の中央組織も「以前は大阪にあったが現在はない」(連合)、「聞いたことがない」(全労連)などと話している。
 労組を結成したのは、善光寺塔頭(たっちゅう)25ヶ院を束ねる天台宗大本山大勧進」の僧侶と一般職員、パート約45人のうち、僧侶5人と職員4人。1月に全労連系の「長野県一般労働組合」の分会として「善光寺大勧進分会」(花岡利家分会長)を発足させた。
 分会は、「大勧進」側と塔頭の間でトップの進退を巡ってトラブルになった際、塔頭側に同調した僧侶(52)が、県一般労組に個人加盟したのがきっかけ。同僚らが同労組に加入、分会発足につながった。
 長野県一般労組の木継勇一書記長は、「僧侶は労働者とは思っていなかったが、相談を受けるうちに労働者であるとわかった」としている。「大勧進」側は、発足について「ノーコメント」としている。
(読売新聞) - 2月11日12時39分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060211-00000004-yom-soci

僧侶も法律上労働者なのかもしれませんが、宗教家としてそれでいいのか?とは思ってしまいます。
もっとも、筆者の信仰とは関係ないので、とやかくいうことではないのかもしれませんが…。
司法権の限界論でもあるような、法的に解決しうる労働問題と宗教の内部問題にわけ、
前者については、一般の労働者と同様に考えていいんでしょうが、なんだかなぁと思わなくはありません。
トラブルがあったことも影響しているんでしょうが…。
アメリカでは神父、牧師の労働組合とかあったりするのだろうか、ちょっと気になりました。
また、僧侶を中心にした寺院内労組は全国的にも珍しいのも、法律上の労働者たりうるという意識がないからなのか、
宗教家としての意識が強いからなのか、ということも気になります。

著作権違反での逮捕事例(2)/刑事事件としての著作権違反と民事事件としての著作権侵害

著作権違反での逮捕事例 - 言いたい放題に、
benli: ライブハウス経営者の刑事責任からトラックバックがありました。
弁護士の小倉秀夫氏は、この報道に関して、

 報道の書き方を見ると、「カラオケ法理」をあっさり適用して普通の直接正犯として逮捕してしまったのではないかという気もするのですが、そうだとすると、「著作権法の規律の観点」という明文化されていない正当化要素によって、曖昧模糊とした処罰範囲の拡張を認めようとしているという点で、罪刑法定主義という観点からもかなりまずいのではないかという気がします。
 そういう意味では、起訴をする段階で幇助に落とせば問題はなくなるのですが、そうすると、刑事法的には正犯性がなくせいぜい幇助犯が成立するにすぎないのに、民事的には利用主体、侵害主体と認定できるのかという問題を生ずることになります。
 著作物等の利用行為に間接的に関与したに過ぎない者を直接の利用主体と無理矢理認定してきたツケが現れたといえなくもなさそうです。

としています。
もちろん民事規律と刑事規律をどう考えるかということを考える必要もあるのでしょうが、
同一法規の解釈である以上、両者が乖離してしまうことは妥当でないように思います。
「カラオケ法理」での侵害主体性論自体、必ずしも否定するわけではありませんが、
このような観点からも、現在の判断基準、判断要素は広きに失するという気はしています。
(ただし、記事からみえる本事例についてあてはめることについては不当とは思いません。)
この点、壇弁護士も刑事罰規定があることも意識した考え方をされているようで、
過去に触れた記事ですが、

しかし、振り付けに著作権が簡単に認められると、マツケンサンバを宴会のカラオケで振り付きで踊っているおじさん達がおひねりをもらった場合、真島茂樹氏に「マツケンサンバ トゥ」とか言って告訴されたら、刑事罰にもなりかねないのである。
それは、さすがにご勘弁である。
http://danblog.cocolog-nifty.com/index/2005/05/post_00de.html

と述べている。
侵害主体論に限ったことではないが、著作権法のあいまいさによって刑事罰を受けうるという視点は、
解釈論において重要であるとは考えている。


ところで、この事件について、前述の小倉氏のブログbenliにトラックバックがあったのでみてみた。
見せしめ逮捕なのか?JASRACの指示で老舗ライブハウス摘発2 - Where is a limit?
まあ真実性については、管理人氏が指摘しているようによくわからないわけですが、
遅延補償金が年5%を超えることはないように思いますが…。
JASRACが受け取らないなら、相当な額を供託して、将来にわたる契約でもしておけば、
民事不介入で、告訴があっても、警察は刑事事件として扱わない、少なくとも逮捕しないように思うのだが。
(あくまで筆者がそう思うだけで、その通りやって逮捕されても知りません。念のため。)
ちなみに記事によれば、直接の逮捕容疑は、昨年(2005年)7月29日夜に生バンド演奏させたことで、
仮処分決定(2004年11月)後にも、契約しなかったことが問題だったのではないかと(告訴は2005年9月)。
もしかしたら外国人の楽曲なのも関係しているのかもしれませんが…(あくまで推測です)。
JASRACも将来の許諾は断れないはずだし、過去のやりとりはおいておいて、
とりあえずきちんと契約しておけばよかったのではないかと思うのです。

著作権等管理事業法(平成十二年十一月二十九日法律第百三十一号)
(利用の許諾の拒否の制限)
第十六条  著作権等管理事業者は、正当な理由がなければ、取り扱っている著作物等の利用の許諾を拒んではならない。

もっとも、過去の清算をしないことが「正当な理由」であるなばら、許諾していない可能性も否定できませんが…。


さて、前回の記事で、id:himagine_no9さんより、

例えば支払う側が納得できないほど高額の請求を受けた場合(異常な額の延滞補償金だったり、演奏していない日も含まれている包括使用料だったり)、妥当な額にまで是正させる方法は無いものなのでしょうか? JASRAC との話し合いが出来ているうちならば協議次第でしょうが、 JASRAC が頑なな態度を取った場合に対処できるのか否かが気になります (JASRAC との話し合いをやろうとしたばっかりに刑事事件に持ち込まれたりしないだろうか、と)。

とコメントを頂きました。
過去の請求については、算定基準が使用料規程に基づく妥当なもので限り、
いくら不満でも最終的には支払わざるを得ない、というのが実際でしょう。
JASRACが破産させてでも取り立てる姿勢ならどうしようもない。
もっとも、それが権利者の利益になっているかというと疑問なので、
そういう姿勢は、JASRACの目的に反する行動でしょう。
異常な額の延滞補償金については、法定の年5%を超えるなどであれば、
債務不存在確認訴訟でも提起して、相当だと思う額(5%)は自認して供託しておくしかなような気がします。
(実際何%なんでしょう?ちょっと規程等などからはわかりませんでした。)
話し合いもあくまで任意ですし、和解(JASRACが譲歩)するかどうかも結局はJASRAC次第ですし。
法律を離れた社会的道徳的妥当性に訴えるしかないでしょう。
取り立ての現実についてよくわからないところがあるのでなんともいえません。
ただ、前述のとおり、将来の契約を結んだ上で営業しないと、ちょっとしんどいかもしれません。


ちなみに、この場合の演奏利用については、

使用料
使用料規定では、演奏での音楽のご利用に2つの算定方法を設けています。
(1)1曲ごと(曲別)に算定する方法
算定基準: 平均入場料・会場の定員数・演奏作品ごとの演奏時間・ご利用形態
算定方法: 演奏時間に応じた1曲ごとの使用料の合計
(2)入場料・定員数などから包括的に算定する方法
算定基準: 平均入場料・会場の定員数・公演時間・ご利用形態
算定方法: 上記の算定基準による公演1回ごとの使用料
http://www.jasrac.or.jp/info/event/band.html

使用料規程の詳細は、上記サイトの右上「使用料規程」の4頁(PDF6頁)でも。


あー、JASRACの取り立ての本当のところが知りたい。