〜スト延期〜

ストライキの実施延期のお知らせ[2004/09/10]

本日、選手会は、NPBとの2日間にわたる団体交渉の結果、以下のとおり暫定合意して、ストライキの実施を延期することとしましたので、お知らせいたします。

本日の段階では、主に

(1)NPBは、大阪近鉄オリックスの統合1年延期という選手会の申入に対して、交流試合の導入をふまえた来季の影響等諸問題の具体的分析を行った上で速やかに回答すること

(2)NPBは、現行野球協約の加盟料・参加料を撤廃し、預かり保証金制度を導入する等新規参入への環境を整え、新規参入球団の加盟の促進を積極的に検討すること

(3)新たな球団削減があるかもしれないとのファンの不安を払拭するため、NPBは、来季(2005年シーズン)は、セ・リーグ6球団以上、パ・リーグ5球団以上とすることを確約すること

を合意し、(1)の回答、(2)の検討に時間を要するため、来週継続協議することとして、11日、12日のストライキ日程を暫定的に回避することとしました。

選手会は、この暫定合意のもとに、明日(11日)、あさって(12日)に予定されていたストライキ日程のみを暫定的に回避し、来週継続して交渉を行います。

来週中に協議が整った場合は、18日(土)以降に予定されている9月6日に予告したストライキを回避することとします。


                        合意事項

日本プロフェッショナル野球組織(以下「NPB」という)と、日本プロ野球選手会(以下「選手会」という)は、本日の時点で、暫定的に以下のとおり合意する。

1.NPBは、「大阪近鉄オリックスの球団統合の実施時期を1年間延期する」との選手会の申し入れに対して、交流試合の導入をふまえた来季の影響等諸問題について具体的分析を行った上で速やかに回答する。

2.NPBは、現行野球協約の加盟料・参加料を撤廃し、預かり保証金制度を導入する等新規参入への環境を整え、新規参入球団の加盟の促進を積極的に検討する。

3.新たな球団削減があるかもしれないとのファンの不安を払拭するため、NPBは、来季(2005年シーズン)は、セ・リーグ6球団以上、パ・リーグ5球団以上とすることを確約する。

4.NPBは、第1項の回答及び第2項の検討、その他選手会の要求事項の検討に時間を要するため、選手会と引き続き協議・交渉を行うこととし、選手会は、9月6日に予告したストライキ日程のうち、9月11日(土)、12日(日)のストライキは実施しない。

5.NPBは、選手会との間で、プロ野球構造改革協議会(仮称)を設け、1年間をかけて、ドラフト改革、選手の年俸のあり方などについて徹底的に協議する。

6.選手会は、9月17日の午後5時までに、上記協議が整った場合、9月18日(土)以降、9月6日に予告したストライキを行わない。
                        
                                2004年9月10日

http://jpbpa.net/jpbpa_f.htm?/news/release/news20040910_1.htm

以上はプロ野球選手会サイトからの抜粋である。
詳しい合意事項はわからないので、上記発表及び今までの経緯から考えてみる。

1.に関して
まず、「1.NPBは、「大阪近鉄オリックスの球団統合の実施時期を1年間延期する」との
選手会の申し入れに対して、
「交流試合の導入をふまえた来季の影響等諸問題について具体的分析を行った上で速やかに回答する。」
との回答はかなり踏みこんだもののように思う。
一度締結し、承認した合併について考えるというのであるから。
もちろん、具体的分析の結果がどうなるのかわからない。
具体的分析の結果のある程度の見込みがたったので、とりあえず1年合併を延期して、
その1年で再来年度以降のことを考えて行こうではないか?というのであれば、
その後の議論のなりゆきは別にして、とりあえずの選手会の目的達成=スト回避になると思う。
問題は、「具体的分析の結果、やっぱり見込みがたたなかったので、合併はどうにもならない、」
という場合である。
この場合、おそらく選手会としても合併云々に固執することができなくなる。
それこそ暫定的に選手会が1年間球団経営するからそのような措置を認めるとかしない限り、難しい。
法廷闘争や「スト通告」により、選手会が組織との間で実質的議論の場を得たことは大きいと思うが、
この場合「一応の議論がなされたことをもって合併やむなしで、別項で妥協する」とするか、
「ストに突入する」かは結構難しい決断になると思う。
判断が複雑なだけにファンの支持を読むのが難しいと思う。

2.に関して
「2.NPBは、現行野球協約の加盟料・参加料を撤廃し、
預かり保証金制度を導入する等新規参入への環境を整え、
新規参入球団の加盟の促進を積極的に検討する。」ことに関してはある程度予想できたことである。
この条項はオーナー会議での決定事項を 「労使間で明確にした」ことに意味がある程度だろう。
もっとも、具体的にはどうなるかはわからない。
この点、参入を考えているライブドア社社長は、夕方のテレビ番組で「預かり保証金制度」について
選手の報酬などの保証ととらえて、既存球団も払うべき性質のものととらえていたが、どうだろう?
今までの議論をみていると、新規参入がすぐに撤退することを防止するという趣旨と考えると、
そのように読むのは難しい。むしろ、「数年間の継続的参入への担保」と読むべきように思われる。
もちろん、ライブドア社社長も今までの文脈を理解していないなんてことはないだろうから、
この発言は組織に対する牽制であるように思われる。
もちろん、そのような趣旨で保証金を導入するというのもアリだと思うし、雇傭にも関わる部分だが、
組織や選手としても売名だけの球団買収は困るだろうから、
新規参入がすぐに撤退することを防止するという趣旨を残すのであれば、
既存球団と差がつくのは難しいような。
球団数を維持するという点から、最低球団保持期間を設けることも必ずしも不当ではないし、
そのための「担保」も必ずしも独占禁止法上の問題になりにくいと思うだが…。
そもそもプロ野球は1球団ではできないから、独占は生じないし、寡占ともいいにくい。
参入規制の度合いをどのように考えるかが問題かなぁと。

3.に関して
「3.新たな球団削減があるかもしれないとのファンの不安を払拭するため、NPBは、
来季(2005年シーズン)は、セ・リーグ6球団以上、パ・リーグ5球団以上とすることを確約する。」
との点はいい確認事項だと思う。少なくとも新たな削減への合併はないことになる。
スポーツジャーナリストの二宮氏はダイエー産業再生機構との関係でどうなるかわからない、
事情変更をもちだすおそれがあるというが、倒産を考えればやむをえないし、
あくまで、「承認」は要するのであれば、合意に拘束されることになる。
また、仮に倒産で球団減少があれば、新たに1球団増やす積極的努力を払うべきことになる。
少なくとも恣意的削減に歯止めをかけたことは小さくない。

4.に関して
「4.NPBは、第1項の回答及び第2項の検討、その他選手会の要求事項の検討に時間を要するため、
選手会と引き続き協議・交渉を行うこととし、選手会は、9月6日に予告したストライキ日程のうち、
9月11日(土)、12日(日)のストライキは実施しない。」こととなった。
当面の延期であるが、古田氏がいうようにメインの主張がとおる可能性を探るための合理的期間をおくため
妥当な判断と思う。
その理由やストの弊害を考えれば、合理的だと思うのだが、
それでも週末スト強行では、ファンの賛同も得にくい。
もちろん、強行派もあると思うが、現状の交渉事項からは、ここでストを強行するのは無理があると思う。
とりあえず延期してストの可能性を残しつつ交渉を継続するというのは妥当であろう。
もっとも、ここで一度延期したストを再度するという場合にどれだけ支持を得れるかということはよみにくいが。

5.に関して
「5.NPBは、選手会との間で、プロ野球構造改革協議会(仮称)を設け、1年間をかけて、ドラフト改革、
選手の年俸のあり方などについて徹底的に協議する。 」
これは避けて通れない問題でしょう。選手は「選手の年俸のあり方」で痛みを負うことも覚悟しなくてはいけない。

6.に関して
「6.選手会は、9月17日の午後5時までに、上記協議が整った場合、
9月18日(土)以降、9月6日に予告したストラ イキを行わない。 」については
1.4.の述べたことと関連する。
ファンの中には球団側があまりにも無視していたからストを支持していた人も多いだろう。
今これだけの議論をかわし、(意図はともかく)再考を提示した場合に、ストをするというのは、
どれだけ支持をえることができるか?そこが難しいところのように思う。

労使問題からみたばあい、
法廷闘争や「スト通告」により、選手会が組織との間で実質的議論の場を得たことは大きい、
しかし、プロ野球がどうなるか?「先送り」プロ野球界にどう影響するかについてはまだまだわからない。