?「七人の侍」vs「武蔵」東京地裁判決

大河ドラマ>「武蔵」盗作を否定 黒澤監督長男ら敗訴
 昨年のNHK大河ドラマ「武蔵 MUSASHI」の一部は故黒澤明監督の映画「七人の侍」の盗作だとして、著作権を相続した長男黒澤久雄さんらがNHKと脚本家を相手に損害賠償やビデオ化などの差し止め、謝罪放送を求めた訴訟の判決が24日、東京地裁であった。三村量一裁判長は「全体的に比較しても、表現上の本質的特徴の類似は感じられない」と述べ、著作権侵害を否定し、原告側全面敗訴の判決を言い渡した。
 争いになったのは昨年1月5日放送の第1話。黒澤さん側は、村人が侍を雇って野武士と対決するストーリーや、豪雨の中での合戦など11場面が酷似していると主張。「著作権使用料を支払ったリメーク(再作品化)でなく、『七人の侍』のブランドにただ乗りしている」と訴えた。
 判決は、「侵害が成立しうるのは、複数の共通点の組み合わせがストーリー展開の重要な役割を担い、見る者(視聴者)が表現の本質的特徴の類似を感じ取る場合。双方の脚本には一定の共通点があるものの、『武蔵』には『七人の侍』のような高邁(こうまい)な人間的テーマや高い芸術的要素はうかがえない」と、黒澤さん側主張を退けた。【坂本高志】
 黒澤さんの代理人弁護士の話 判決は著作権の考え方に誤りがあり、納得できない。控訴も検討したい。
 NHK広報局の話 「七人の侍」とは全く異なる作品であるとのNHKの主張が認められた妥当な判決と考える。
毎日新聞) - 12月24日19時14分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041224-00000078-mai-soci

また、訴え提起時の記事として(一部のみ抜粋)

NHK「武蔵−」は「黒澤『七人の侍』の盗作」と訴訟

 代理人の弁護士は「著作権使用料を支払ったリメーク(再作品化)ではないばかりか、パロディーやオマージュ(賛辞)として一部をまねたのでもない。『七人の侍』のブランドにただ乗りした明白な著作権侵害行為」とし「映画史に残る名作のイメージを傷つけた」と主張している。
http://www.sanspo.com/geino/top/gt200401/gt2004012015.html

判決がまだ知財速報にアップされていないので詳しいことはわからないが、
結論は妥当である。
大雑把にいえば、一部が似ているからといって翻案権侵害だということになれば、
創作活動なんてできたものではない。
著作者の表現行為の一部が他の作品と同一又は類似していても
それだけで著作権侵害とはいえない。
ちなみに、映像表現では同一ということはありえない。
映像の場合、同一=明らかな複製である。

詳細は判決文を見てから検討したいと思うが、
武蔵の「第1話」/全48話(月4×12ヶ月として)のたかだか「11場面」の
シーンが似てる程度で著作権侵害なら創作活動などできたものではない。
そもそも、「『七人の侍』のブランドにただ乗り」って、
著作権(二次的著作物に対する原著作者の権利)はブランド保護規定ではないはずだよ。
現時点では毎日新聞の坂本高志氏の報道記述から判断する他ないが、
著作権使用料を支払ったリメーク(再作品化)でなく、
 『七人の侍』のブランドにただ乗りしている」という部分が正確であるなら、
それこそ、著作権の考え方を誤っていると言わざるをえない。

ちなみに、訴え提起時の言い分を基礎に考えても、翻案権侵害を理由とするものであろう。
しかしこれについて理由がないことはすでに述べた。
また「映画史に残る名作のイメージを傷つけた」とは、
著作者人格権の名誉権侵害であろうか。
これも「七人の侍」が原作であることを前提とするものであるから、理由にはならない。

「村人が侍を雇って野武士と対決するストーリー」「豪雨の中での合戦」のシーンが
あることで翻案権侵害とされるのであれば、武士を描いた作品の創作活動の範囲が
大幅に制限されることになりかねない。
著作権法がそのようなことを制限する趣旨でないことを明らかである。