顧問辞退で一件落着で済まさないために…。

ということで、もう過ぎたことではあるが、検証しておこう。
今回は毎日新聞社NHK問題取材班の記事(辞退報道前のもの)から。
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20050128k0000m040137000c.html

NHK:
海老沢体制の2幹部も顧問に 経営委員長が苦言
 25日に辞任したNHKの海老沢勝二前会長(70)に加え、笠井鉄夫前副会長(63)と関根昭義前専務理事・放送総局長(62)も翌26日付でNHK顧問に就任していた。3人には顧問料が支払われる。NHKは、今後国会で審議される予算案が海老沢体制下で策定されたという「実務上の理由」と説明しているが、最高意思決定機関の経営委員会に事前の報告はなく、石原邦夫委員長は27日、橋本元一会長(61)に「視聴者に十分顧問制度の説明を」と苦言を呈した。【NHK問題取材班】

「実務上の理由」があるのに、辞めたこと自体が海老沢氏が今まで職に居座ってきたことと矛盾しないか?
必要があるとしても、経営委員会に事前の報告くらいしておくべきではなかったのか?
と問題は明らかであった。

 海老沢前会長は25日の辞任会見で、「人材育成や海外交流などで自分の経験を生かしたい」と語り、退任後の関与に含みを残していた。3人の顧問就任は、橋本会長が26日付で任命した。
 3人の顧問就任について、NHK広報局は「過去にも例があり、異例ではない。05年度予算や改革案は海老沢体制の下で決められているので、前執行部の3人ほど詳しい人はいないという実務上の理由だ」と話している。顧問料については、個人ごとの業務に準じて決定するため、NHKは「個人情報なので答えられない」としている。

「人材育成や海外交流などで自分の経験を生かしたい」今まで会長として生かした結果がこれである。
彼に求める者はただ身を退くだけだったのではないだろうか?
また、「個人情報なので答えられない」としたことも誤りである。
今の実情を踏まえれば、本人らは公表を承諾すべきであるし、そうでなくても必要性がある。
顧問料を「個人情報」を理由に公表しない姿勢こそ、今のNHKに問われているのである。
この事実は、辞任があったとしても、変わりようない事実として今も残っているのである。

 体制刷新を橋本会長に要求していた石原委員長は27日、コメントを発表し「この件はそもそも経営委員として関与する事項ではないけれども、橋本会長から本日私に報告がありました」と事前報告がなかったことを明らかにした。さらに「その際に、『十分顧問制度を説明し、視聴者・国民から誤解のないようにお願いしたい』と橋本会長に申し上げた」としている。
 NHK顧問には会長、役員経験者が就任することが多いが、任期途中で会長を辞任した池田芳蔵(辞任は89年4月)、島桂次(同91年7月)の両元会長は顧問に就任していない。現在の顧問は、海老沢前会長ら3人が加わったことで、菅野洋史元副会長、滋野武元理事、伊東律子元理事、芳賀譲元理事の4人と合わせて計7人になった。
 このほか、名誉顧問には現在、小野吉郎、川原正人、川口幹夫の各会長経験者が名を連ねているが、名誉顧問は事実上の名誉職で無報酬。
 総務省の香山充弘事務次官は27日の定例会見で、海老沢前会長の顧問就任について「新会長からの要請があって顧問に就任されたとうかがっている。それなりの対応をしていただけると思っている」と語った。

石原委員長は27日、コメントを発表し
「この件はそもそも経営委員として関与する事項ではないけれども、橋本会長から本日私に報告がありました」
一般論として、誰を顧問とするか、経営委員が直接に関与する事項ではないにしても、
この一連の騒動である者が顧問につくと言うこと自体が関与事項ではないか?
「十分顧問制度を説明し、視聴者・国民から誤解のないようにお願いしたい」と伝えたことはある程度評価するが、
直接コントロールのきく会長を辞任→顧問というのは、ご自分等がなめられていることに気付いていかったのだろうか?

 ■ぬぐえぬ不信感
 番組「NHKに言いたい」に出演した日和佐信子・雪印乳業社外取締役の話 NHK改革には、不信の象徴ともなっていた海老沢氏がNHKから一切、手を引くことが絶対条件だった。海老沢氏が受信料を基にしている報酬まで受け取りながら、引き続き発言力を維持するというのでは、視聴者の不信感は払しょくされず、社会の常識でも通用しない。組織全体が意識改革をしなければいけない時に、トップの意識が変わらないのでは改革はできない。これでは、受信料の不払いは今後も止まらないだろう。

まったくもっておっしゃるとおりである。
にもかかわらず、顧問を依頼した会長の責任は大きい。
会長としての、いや日和氏のいうそもそも「社会の常識」を欠く会長であって、
そのことについての何らかの責任はとるべきであろう。
「辞退を承認した」では済まされる問題ではないのである。

 ■何のための辞職
 須藤春夫・法政大教授(メディア論)の話 海老沢氏は何のために会長職を辞めたのか。これでは、院政そのものだ。海老沢氏は背後に隠れながら影響力を行使しようという考えなのだろうが、視聴者に対して相当、挑戦的な人事だ。本来なら顧問就任を要請されても断るのが筋だ。自分自身の振る舞いが視聴者の不信を募らせ、不払いにつながったことにいまも気づいていないのだろう。この人事を決めた新執行部の下でもNHK改革は期待できない。経営委員会は顧問制度も含めたNHKの組織のあり方を再検討すべきだ。

「経営委員会は顧問制度も含めたNHKの組織のあり方を再検討すべきだ。」
須藤教授も指摘するが、引責辞任した顧問などありえない話ではないだろうか?
少なくとも公共放送機関がそうであっては問題である。
3人の辞退で顧問は「菅野洋史元副会長、滋野武元理事、伊東律子元理事、芳賀譲元理事」だそうだが、
こんなにも顧問が必要なのか?
顧問制度まで否定する気はない。(ただしいわゆる院政は問題)
この方々の経歴は存じないが、理事→顧問では天下りも同然だ。
理事経験者の場合、出身畑ごとに1名ずつ等の人数制限や、
一人あたりの顧問料の上限を公表しておくなどの措置を検討するべきであろう。

 ■ことば=NHK顧問 NHK定款40条に「会長は、業務の執行に関し諮問するため必要と認めるとき、顧問、参与または学識経験を有する者によって組織する委員会を置くことができる」との規定がある。顧問の業務内容や待遇などについての規定はないが、NHKによると、会長の求めに応じ、業務運営について助言をすることなどが主な仕事という。任期は最高2年で、1年をめどに見直すこともある。

規程上はできても、してはいけないことがある。今回のことはまさにそれにあたる。
しかし、今回の騒動から橋本会長の現在の危機認識の程度がみてとれる。
それで、NHKの信頼回復は可能であるのか?疑問は大きい。
まちがっても、辞退ですべてが済んだと思ってもらっては困る。今がまだスタート地点なのだから…。