顧問問題をふりかえる

はやばやと橋本会長記者会見要旨(2005年1月28日)がサイトにあがった。
http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/news/index.html

 今月26日付けで海老沢前会長に顧問を委嘱したところ、海老沢前会長から本日28日、「顧問を辞退したい」という申し出があり、これを受理した。
 役員を退任した場合、退任と同時に担当していただいた業務が全て終了するわけではない。例えば、海老沢前会長はABU・アジア太平洋放送連合の会長をしていたが、今後、私がNHKの代表として、ABUの中できちんと役割を果たすには、前会長から引き継ぎを受ける必要がある。こうしたNHK会長以外の公的職務は数多くあり、私が全てを引き継いでいくには、一定の期間が必要だ。少しでもはやく、これらの業務を行えるようにするため、海老沢前会長に顧問をお願いした。
 皆様の中から海老沢前会長の顧問就任が新体制に影響力を残すというご批判があったが、顧問は役員ではなく経営に関わる権限は全くない。従って私に何らかの影響を与えるものではない。新会長である私の判断で経営を行い、改革を実行に移していく。 
 なお、笠井前副会長と、関根前放送総局長からも顧問を辞退したいという申し出があり、これを受理した。

いきなり会長になって、不安なのもわかるし、引き継ぎしたいのもわかる。
しかしだからといって、「顧問」という地位で残すかどうかは別問題である。
さらにいえば、海老沢氏は来るべきときとして辞任したのだから、
顧問に残さないと引き継ぎできないというのはおかしいのである。
「皆様の中から海老沢前会長の顧問就任が新体制に影響力を残すというご批判があった」というが、
別にこの批判は「顧問は役員ではなく経営に関わる権限は全くない」ことを知らずにおこったものではない。
事実上の影響力を危惧しているのであるし、混乱を招いた張本人が正式なポストにいることが問題なのである。
しかも、上記のような必要性があると感じたのであれば、
なぜ、就任時のコメントでそれを言わなかったのか?批判は予測できなかったのか?
こっそりと顧問に就任させたのでは、それはただの言い訳なのである。
そこには「改革を実行に移していく」という態度はみれないのであるし、
今の会長に期待されているのはほぼその点にのみあるといっても過言ではないのである。
何よりも大事なことは「旧体制から距離をおく」ことだったのではないだろうか?

Q. 26日付けで顧問を委嘱した理由について
A. (会長)前会長らが辞任しても、業務が円滑に機能するように考えて、顧問に委嘱した。
Q. 視聴者からの反応について
A. (会長)この件で批判の声が増えていると聞いている。
Q. 会長の責任について
A. (会長)結果的に、前会長への顧問委嘱によって、視聴者の批判の声が増えたことについては、反省している。ただ、当時はこういう状況でも業務を円滑に進める必要があると考え、顧問委嘱を決めた。

そもそも、信頼回復が大事であるのに顧問委嘱したことが誤りである。
仮にそうでなくても、視聴者への説明なしにそうしたのは誤りである。
いずれにせよ、これに批判が起こり、信頼回復の第一歩はつまづいた。
「反省して」もらわないと困るのだが、責任を感じていないのは残念であるし、資質が問われる。

Q. 経営委員会への報告について
A. (会長)委嘱翌日の27日に経営委員長に報告した。委員長からは、視聴者の方への説明を是非やってほしいという注文をいただいた。

結局27日に説明がなされなかったのはどういうことか?

Q. 顧問制度の今後について
A. (会長)顧問制度は時代に合わない面もあり、廃止の方向で検討していく。仕事の引継ぎ方法などについて、より良いあり方を検討していきたいと思っている。

民間で不祥事で引責に辞任した役員がどのようにして引き継ぎしているのかは知らないが、
同じようなことをしているのだろうか?聞いてみたい。

Q. 前会長の退職金について
A. (会長)経営委員会が決めることなので、コメントできない。

経営委員会がきめることなのね。ふぅ〜ん。じゃ、ナシで。

Q. 今後の役員体制について
A. (会長)私としては、来年度の予算と事業計画を実施に移せる段階まで、現在の理事の体制を敷いた。今年4月には、大部分の理事の任期が切れるので、改革の一環として、新体制を作っていきたい。

とりあえずは、4月からの新体制を待ちましょうか。
任期ぎれ退任の人には「引き継ぎ」しやすいようにしておきましょうね。


最後に毎日新聞の記事(【NHK問題取材班】)から補足。
<NHK>激しい抗議受け 橋本体制はスタートからつまずき
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050128-00000159-mai-soci

 橋本会長の会見は午後6時45分から、東京・渋谷のNHK放送センターで始まった。記者から「(顧問就任は)周囲にイエスマンばかりそろえていたからではないか」と質問が飛ぶと、「それは意見が分かれるところだ」と顔を紅潮させた。自分が顧問に任命したことも「業務の円滑化のためであり、判断は間違っていない」と力を込めた。
 前会長による「院政」につながるのではないかとの批判については「私に対して影響を与えるものは何もない。私の判断で経営をやっていけばいい」と反論した。視聴者から多数の批判がNHKに寄せられたことを率直に認め、「こんなに大きなクレームの波が来るとは思わなかった。結果的にクレームを呼んだことは反省している」と伏し目がちに語った。

それにしても、第一歩で顧問委嘱という判断をした会長に「私の判断で経営をやっていけばいい」と信じていいのだろうか?
「結果的にクレームを呼んだことは反省している」が、危機意識が相当低いように思えてならない。

 海老沢前会長に顧問就任を要請した理由として、前会長が国際的な放送関係団体の役職も兼務していたことなどを挙げ、「内外の要職はたくさんあるので引き継ぎに一定期間が必要だった」と強調した。
 橋本会長の25日の就任会見で、前会長らの顧問就任予定を一切明らかにしなかったことについて「その段階では発表する準備まで整っていなかった」と釈明した。前会長の今後の処遇については「関連団体に、という計画は持っていない」と明言した。
 橋本会長は顧問制度について「役員の退任に伴い、慣例として自動的に顧問に委嘱することになっている」と説明した。この点に関してNHK経営広報部は会見後、毎日新聞の取材に「役員全員が自動的に顧問に就任するわけではない。会長が必要だと判断した人が、本人の意思にかかわらず自動的に就任する慣例になっている」と答えた。

「その段階では発表する準備まで整っていなかった」のであれば、なぜ改めて会見しなかったのだろうか?
「関連団体に、という計画は持っていない」そうなので、みんなで覚えておきましょう。
ちなみに「役員全員が自動的に顧問に就任するわけではない。」ことからすると、顧問は必然ではないよね。やっぱり。
実際会長でも引責に辞任した人は過去に就いていないわけだし。

 ▼石原邦夫・NHK経営委員長(東京海上日動火災保険社長)は28日夜、海老沢前会長らの顧問辞任について、「会長から話は聞いた。妥当な結果だと思う。経営委員会としてはNHKの再生と、信頼の回復を監視、監督していきたい」とのコメントを発表した。

 ▼NHK職員でつくる日本放送労働組合の岡本直美書記長の話 この間の視聴者の反応や辞任に至るまでの経緯を見ても、感度が鈍いと言わざるを得ない。今回のような状況で(役員退任後の顧問就任という)慣例は通らない。旧弊を刷新していかなければ視聴者は納得しないだろう。

役員が労働組合に「感度が鈍いと言わざるを得ない」といわれたことは恥じるべきであろう。

 ▼服部孝章・立教大教授(メディア法)の話 顧問辞任は当然だが、本来ならば任命権者である橋本新会長が「世論の反発を受けたから」として顧問の任命を撤回すべきだった。なのに海老沢前会長らが自分から辞めることで、責任の所在がうやむやになった。今のNHKは信頼回復といいながら、やることなすこと信頼をぶち壊し、混迷の極み。あちこち水漏れするまま進水式を迎えた船のようだ。新会長が今回の問題で自省の言葉を語らなければ、新しい船に変わることはできない。NHKが29日夜に放映する特別番組に注目したい。

厳しいお言葉ですが、「責任の所在がうやむやになった」とはまさにその通りである。
ただ、実際会長は今でも自分の判断は間違っていないと思っているようなので、
「世論の反発を受けたから」として顧問の任命を撤回するという選択があったのかは疑問です。
「NHKは信頼回復といいながら、やることなすこと信頼をぶち壊し、混迷の極み」
言ってることとやっていることが矛盾しているとはまさにこのことをいうのでしょうね。