憲法改正を考える(その5)〜国民の権利と義務に関する小委員会(1)+綿貫氏の発言について〜
憲法改正を考える(その1)〜国民投票法(1)〜
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050314#1110803315
憲法改正を考える(その2)〜自民論点整理(1)〜+自民党ホームページについて
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050314#1110805753
憲法改正を考える(その3)〜自民論点整理(2)〜
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050315#1110816281
憲法改正を考える(その4)〜自民論点整理(3)〜
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050315#1110821749
少し前の記事ですが、
自民憲法起草委:
有害情報規制や政教分離原則緩和で合意
自民党新憲法起草委員会は22日、国民の権利と義務に関する小委員会(船田元委員長)を党本部で開いた。「表現の自由」について、すでに制限の対象として挙げていた「青少年に有害な情報・図書の出版、販売」以外にも新たな制限が必要だとの認識で一致。今月末にまとめる要綱案に制限すべき事例を列挙することにした。策定に関しては船田氏に対応を一任した。
また同小委では、政教分離原則を緩和する際、国や自治体に認める宗教活動の条件としていた「特定の宗教を援助する目的や効果を持たない」との基準を削除することでも合意した。現在の政教分離をめぐる訴訟の判断基準である「目的・効果基準」を盛らないことで、首相の靖国参拝や公金からの玉ぐし料支出を可能にする狙いがある。
【松尾良】
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/seitou/news/20050323k0000m010091000c.html
まずは、表現の自由規制条項。
現行憲法でも十分規制できるじゃないですか?「公共の福祉」で対応できるので改正はいりません。
むしろ、この条項が拡大的に解釈される方が心配です。
制限条項に明文のない表現規制が違憲となるという趣旨でもないでしょうし…
こういう条項の導入は、裁判所が立法府の意思に反して違憲判決をしているような場合にするべきであって、
現在の裁判所による現状追認判決の状況においては、このような必要性はまったくないものと思われます。
今の政治状況/裁判状況からすればむしろ、表現の自由を明確に保護する条項を設ける方が筋ではないかと思います。
政治家に対する現実的悪意の法理を明文化するなどの方策も可能ではないでしょうか?
次に、政教分離原則の緩和について。
これについては全く趣旨不明。
首相の靖国参拝や公金からの玉ぐし料支出を可能にする必要性はまったくないと思います。
むしろ、より強化する改正も選択肢ではないとかと思うのです。
この点についての改正のポイントとしては、
強化、緩和、(いずれにも反対=現状維持)で整理すればいいと思いますけどね。
「首相の解散権に大幅制限を」−−綿貫・前衆院議長が提起
自民党の憲法改正論議で、首相の衆院解散権の制限が論点として浮上している。党新憲法起草委員会の「国会に関する小委員会」委員長である綿貫民輔前衆院議長が提起しており「衆院解散は内閣不信任決議案が可決された場合に限る」との大幅制限案を盛り込みたい考えだ。綿貫氏が郵政民営化反対の旗頭だけに、党内には「『郵政解散』をちらつかせる小泉純一郎首相へのけん制では」(中堅)との声もある。
憲法の衆院解散規定は(1)内閣の助言と承認に基づき天皇の国事行為として行う「7条解散」(2)内閣不信任決議案の可決を受けた「69条解散」−−の2種類。戦後の衆院解散はほとんどが7条に基づき行われ、首相が与野党ににらみを利かす「力の源泉」になっている。
綿貫氏は議長時代から「7条解散」に異議を唱えており、今回の小委員会でも「与党に支えられている首相が『与党と調整がつかないから衆院を解散する』というのはおかしい」との主張を展開している。ただ、小委員会では「任期中に一度も国民の信を問えないというのもどうか」と、制限論への異論も根強く、小委員会報告に制限方針が盛り込まれるかは微妙だ。【尾中香尚里】
毎日新聞 2005年3月22日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/seitou/news/20050322ddm005010006000c.html
憲法の教科書的には議論のあるところですが、明文でどうするか、という視点はいいと思います。
個人的には非制限説ですし、制限するのはいいとは思いません。
ですので、どちらかというと、明文で解散事項を定めるという選択肢を提案したいと思います。
そうはいっても、その事項に当たるかどうかは政治判断ということになるのでしょうが…。
もっとも、この指摘は綿貫民輔氏の政治的な発言だけかもしれませんが…。
内容の是非はともかく、綿貫氏の指摘は憲法改正を考える上で意義ある指摘だと思いますが、
表現の自由規制という視点は、憲法改正という意味では、あまりに稚拙な提案のように思います。