著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(3)

登録商標一覧?〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(1)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050324#1111595733
著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(2)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050406#1112753849

書いている間に終了してしまった。

「はてな」の回答の著作権について質問します。私は質問を多くしておりまして、今も質問中です。その結果、多くの回答を得ており、回答者の中には想像を超える有意義で、かつ、生活するうえで参考になる意見が多く、特に、パプリックの面では顕著です。広く情報を配信するための一つとして、これを出版社を通して書籍として出版すると仮定したとき、どのような問題が生じるのか、それを質問します。

せっかくなので、シリーズに組み入れて紹介。


1.著作権の帰属
質問文が著作物といえる場合、その質問者は著作者であり、人力検索での質問につき、
著作権譲渡の規約もない以上、質問者が著作者となります。また、著作者は著作者人格権を有します。
この点、実は規約には、
「ユーザーは、はてなダイアリーおよびはてなグループにおいて自己が作成した日記の内容と、
 有料オプションを利用しているはてなグループのキーワードの内容、および、
 はてなフォトライフにおいて自己が送信した画像について、著作権を有するものとします。」
とあり、人力検索については何ら触れられていません。
※規約本文(http://www.hatena.ne.jp/help/rules)だけでなく、
 040914はてな利用規約改定に関する意見の概要
  http://hatena.g.hatena.ne.jp/keyword/040914%e3%81%af%e3%81%a6%e3%81%aa%e5%88%a9%e7%94%a8%e8%a6%8f%e7%b4%84%e6%94%b9%e5%ae%9a%e3%81%ab%e9%96%a2%e3%81%99%e3%82%8b%e6%84%8f%e8%a6%8b%e3%81%ae%e6%a6%82%e8%a6%81?kid=14
 041101はてな利用規約改定に関する意見の概要
  http://hatena.g.hatena.ne.jp/keyword/041101%e3%81%af%e3%81%a6%e3%81%aa%e5%88%a9%e7%94%a8%e8%a6%8f%e7%b4%84%e6%94%b9%e5%ae%9a%e3%81%ab%e9%96%a2%e3%81%99%e3%82%8b%e6%84%8f%e8%a6%8b%e3%81%ae%e6%a6%82%e8%a6%81?kid=15
も参考にしましたが、この点不明です。(http://www.hatena.ne.jp/info/revisedrules
しかしながら、このことは規約がなくても当然のことであって、規約はそのことを確認しているにすぎないものと思われるので、
著作権譲渡条項がない以上、人力検索における著作物の著作権は、著作者に帰属すると考えてよいでしょう。
(と私は思いますが、もしかしたら「はてな」は考えていないかもしれないので、あらかじめ確認しておきましょう。
 仮にはてな著作権譲渡を主張したら争いますが…)


2.著作物の利用
そうすると、まず質問文については、suspenseさんの著作物ですので、基本的に自由に利用できます。
ただし、質問文中に、引用の範囲を超えた著作物の転載がある場合には、その権利をクリアにする必要があります。
次に回答文については、各回答者の著作物です。
各回答者は、規約の
「本サービスの提供、利用促進及び本サービスの広告・宣伝の目的のために、
 当社はユーザーが著作権保有する本サービスへ送信された情報を、
 無償かつ非独占的に本サイトおよびインターネットを用いたクライアントソフトに掲載することができるものとし、
 ユーザーはこれを許諾するものとします。」
との条項により「はてな」での利用に限り許諾しているといえますが、その他での利用は許諾しているとはいえません。
(「はてな」ですら許諾なく出版はできません。)
したがって、各回答者につき、著作物の利用許諾が必要となります。
さらに、各回答者の回答に万が一引用の範囲を超えた著作物の転載があった場合には、
その被引用物の著作権者の許諾も必要になるので注意が必要です。
TomCatさんとほぼ同旨です、引用の範囲を超える翻案はわかりかねますが…。)
ちなみに、著作権の譲渡と利用の許諾は別概念です。譲渡を受けなくても許諾さえ得れば問題ありません。
(aoinatsunosoraさんは混同されているようにみえますので)


3.例外
ただし、著作権法上の保護の対象はあくまで
「素材をどのように表現するかに向けられた思想感情があるもの」ですので
渋谷達紀『知的財産権法II著作権法・意匠法』4頁(有斐閣,2004))
それに該当しないようなものについては、著作権は及びません。
よほど短い文章で思想感情でないもの、事実の表現に思想感情があらわれていないものについては、著作権は及びません。
たとえば、単に「URL+素材辞典」(http://www.hatena.ne.jp/1105084472より)とか、「著作権法32条1項」とかいう回答は、
著作物性を認めるのは困難のように思います。
一方、
「あまり有名ではありませんが、水に眠るはどうでしょうか。」(noda073さん;http://www.hatena.ne.jp/1108546566より)
の場合、著作物性があるように思われます。
(まぁ、このへんは微妙です。最終的には裁判官がそういったらそうです。)
また、「あまり有名ではありませんが、水に眠るはどうでしょうか。」という記載に著作物性があるとしても、
「無駄も不足も無い小説構成には、つけ入る隙がない」とおもわれた小説として
『水に眠る』と記載して紹介するにすぎない場合には著作権侵害とはなりません。表現を転載したものではないからです。
(sami624さんにほぼ同旨です。)


4.著作者人格権
著作者には、公表権、同一性保持権、氏名表示権という人格権があります。
この場合、すでに公表されているので、公表権は気にする必要はありません。
しかし、氏名表示権、同一性保持権については、きちんとしておかないと、問題にはなりえます。
たとえば、私がこの回答につき、出版物に掲載することを許諾したとします。
それで、もし単に「回答4」としてこの文章をのせ、私のハンドルネームを載せなかった場合、
これは、原則として氏名表示権の侵害です。
また、私がハンドルネームを著作者名として表示しているので、本名を載せても侵害です。
一方で「転載しても良いけど、匿名で」と言われた場合、匿名でなくてはなりません。これが氏名表示権です。
また、「載せてもいいけど、一言一句かえないで」と言われたのに、変更した場合には、
同一性保持権侵害になります。場合によっては「、」「。」でも争いになりえます。
さらに「著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」は著作者人格権侵害とみなされます。

追記:
とは書いたものの…
はてなダイヤリーブック」について、他人のコメントとか、questionで表示させた質問文を印刷するのってあり?
blog上に表示させるのは、規約で処理できると思うけど…
あと、question、detailも質問者名を表示しないから氏名表示権侵害?
引用時でも筆者も1.の方とか単に質問者さんとかしてたりするし…
質問文は自然と掲載されますし、基本的に1の方とか書くのは間違い指摘が多いですからねぇ…
できるだけ順次是正しますが、質問者名の表示までは手がまわらないかな?
システムレベルで是正して欲しいです。質問文は…。
まぁ、blogではそれほど問題にならないとしても、「どのような問題が生じるのか」いうことで、厳密に考えると????なことばかり。
また整理したいと思いますが、あれ?と思う人がいると困るので…
何かあれば、コメント下さい。


せっかくなので、読みたいなぁと思っている本でも紹介しておこう。
まだ読んでないんだけど…。

編集者の著作権基礎知識

編集者の著作権基礎知識

著作権と編集者・出版者

著作権と編集者・出版者

上記2冊の関連性は不明。版がかわったのを気に改題したのか、別物なのか…。

Q&A 引用・転載の実務と著作権法

Q&A 引用・転載の実務と著作権法