漫画の引用?〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(7)〜

登録商標一覧?〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(1)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050324#1111595733
著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(2)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050406#1112753849
著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(3)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050410#1113141421
教育目的利用〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(4)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050411#1113154362
著作権侵害の慰謝料〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(5)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050414#1113412430
企業とのやりとりメールの公開〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(6)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050414#1113445853

今回の質問

本(学術書)を書いているのですが、その中でマンガ(たとえば福本伸行「アカギ」竹書房)を数コマ、引用したいのです。で、引用許可をどこかから得る必要があると思うのですが、 [1] どのような手続きを踏めば良いのか [2] だいたい幾らくらいを、誰に支払えばよいのか [3] 引用する図版の入手方法(たとえばこちらが勝手にスキャンした画像でいいのか)について、教えてください。ちなみに竹書房にメールで問い合わせたのですが、返事がありませんでした。

直接的な回答ではありませんが、少しコメントしたいと思います。


学術書だから「引用」となるわけではないけれども、
常識的に考えると、学術書に「引用」にあたるような場合を除いては、わざわざ漫画を挿入する必要もないわけで、
「引用」と考えていいんだろうという感じですね。
論文引用の場合と同じように、出所明示をしておけば問題ないように思われます。
極端に言えば、
「あなたは文章の引用にもいちいち問い合わせを試みますか?しないでしょ?
 だったら、普通の文章と同じように絵も引用すればいい」と思うのですが…。
わざわざそのコマを掲載する必要があるのであれば、「引用」といってもいいように思います。
(逆にいえば、引用でもないのにわざわざマンガのコマを学術書に載せなくても…とも思う。)
モノを見てないし、最終的には裁判所が引用というかいわないかなんですけど…。


「引用」であると思うなら、わざわざ許諾は必要ありません。
一回許諾なんて得ようもんなら、次からいちいちとらなくてはいけなくなってします。
(増刷とか、別形態で頒布する場合とか、ネットに掲載する場合とか…。契約にもよるけど…)。
また、マンガのコマを頻繁に掲載するような類いの学術書であれば、後の類似事案にも影響を与えかねません。
なぜだか、絵とか音楽とかになると引用が躊躇される傾向があるように思います。
音楽に関しては某著作権管理団体が悪いんですけど…。
それとも、他の文章の引用にもわざわざ許諾を得るのでしょうか?
だとすれば、「引用」とは何かをもう一度回答を読んで勉強すべきです。


ところで、引用とは「自己の著作物の中に、他人の著作物の全部または一部を原則としてそのまま取り込み、
自己の著作物を創作する行為」をいう(渋谷達紀『知的財産法講義II著作権法・意匠法』139頁(有斐閣,2004)
物理的にスキャナーでとりこもうと、トレーシングペーパーでなぞってとりこもうと、構わない。
法自体、取り込む手段にはあんまり気にしていないと思われる。
そして、引用したものは自由に利用できる。ただし、利用形態により出所明示義務の内容が少し異なる。
この点に関しては、加戸守行『著作権法逐条講義四訂新版』243頁(著作権情報センター,2003)が、

「引用することができる」ではなくて「引用して利用することができる」と書かれている理由は、
自分の著作物の中に他人の著作物を引っ張ってきて用いる行為自体とある著作物の利用に伴って
その中に引用された著作物を印刷したり演奏したり放送したりする行為とは一応概念的には区別されますが、
引用行為それ自体よりも引用文を含む著作物の利用に伴って引用した著作物を利用する行為を適法化したものであります

と説明している。
ちなみに、これが引用。わざわざ渋谷達紀氏や加戸守行氏に載せていいですか?、とは言わない。


ちなみに漫画の引用には、
マンガの中の聴覚障害
http://www001.upp.so-net.ne.jp/wakan/index.html
同 著作権について
http://www001.upp.so-net.ne.jp/wakan/AboutCopywrite.html


あと判例としては、「脱ゴーマニズム宣言」判決(著作権訴訟)になるんでしょうか。

最三小決平成14年4月26日(平成12年(オ)第1222号、平成12年(受)第1054・1055号)
 <上告棄却>
東京高判平成12年4月25日(平成11年(ネ)第4783号 著作権侵害差止等請求控訴事件)
 http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/Listview01/9080B34D1A37B16F49256A77000EC329/?OpenDocument
東京地判平成11年8月31日(平成9年(ワ)第27869号 著作権民事訴訟事件)
 http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/Listview01/D784FFD99A8B5CC749256A7700082E08/?OpenDocument
被告サイト
http://www.jca.apc.org/datu-gomanism/