続 入試問題と著作権(3)

大学入試センター試験施行
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050116#p1
1/16「大学入試センター試験施行」の補足
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050206#1107709211
試験問題と著作権
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050412#1113239591
続 入試問題と著作権
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050427#1114595604
続 入試問題と著作権(2)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050430#1114792306
赤本サイト
http://www.kyogakusha.co.jp/

前回までは、試験利用についての現行法規定について書いた。
ただ、これでは赤本(に限らず試験問題集)の意味がなくなるのではないか?という危惧がある。
確かに、そのような指摘はわからないでもない。
そもそも、どうやって許諾を得るのか?といういうことも疑問として残る。
しかし、少なくとも試験問題を業として提供するのであれば、
許諾を得るという努力自体を課しても無茶な期待とはいえないようにも思われる。
赤本が今まで著作権に全く無関心に利用してきたのか、
許諾を求めたのにもかかわらず、応答がなかったのか、などの事情は気になるが、
全くの無関心に利用していたのであれば、それはそれで訴えられるのもやむを得ない。
よほどの事情があれば伝家の宝刀?権利濫用という手もあるが…


ただ、一般化すると、現状では試験問題を無許諾で複製利用するには、35条により複製するしかない。
試験問題を販売するとなるとどうしても、著作権が働くのである。
いくら「この程度のことで訴えるとは」とか「宣伝になるからいいんじゃない?」とか言ってみても、
権利者が訴えれば、利用者は負けてしまうのである。
加えて、そもそも、このような状態が法令遵守が叫ばれる今日において本当にいいのか、
というとやはり疑問が残る。
そうなると立法的に解決する必要があるということになる。
たとえば、試験利用及び試験問題の著作物としての利用は権利制限とすることも考えられる。
試験問題として利用しても、通常は著作物の一部を用いるだけで、権利者の経済的利益を侵害とはいえない。
また、試験問題の著作者は他人の著作物を無許諾無償で用いることもできることと引き換えに、
試験問題の著作物に著作権を認められないとしても、権利を害するとはいえない。
ただそうなったときに赤本がどこまでやっていけるかはわかりません。解答解説で勝負?
また、この場合でも、著作者人格権の問題はやはり残ります。
氏名表示権については、試験問題そのものの場合には、場合によって省略でき、
試験問題の二次利用については、別途表示すべきという運用でなんとかなるようにも思うが、
同一性保持権については大学自身が遵守していないと難しい。
試験問題をそのまま掲載する場合には抗弁を認めて大学の責任するとか?


何にせよ現状はあまり好ましい状態とはいえない。
法改正を考えるのもひとつのひとつの考え方だが、
この際、教学社が中心になって試験問題の著作物を管理する機関をつくるのも一興かな?