棋泉vs米長邦雄訴訟(3)

棋泉vs米長邦雄訴訟
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050520/1116520052
棋泉vs米長邦雄訴訟(2)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050521/1116607505

将棋サイトで御紹介いただいたようで、たくさんの方の訪問をいただいています。
しかし、どれだけ書いてあることをご理解いただけのかと思うと少々不安。
自分でも整理しきれていないものが、どこまで伝わっているのか…。
多少の知識がある方には(納得するかどうかは別として)伝わることは伝わると思うのですが、
著作権自体にくわしくない人にはどうなのか…。
なお、私の見方が、必ずしも弁護士さんの主張と一致するものかわかりませんし、
私の見方もあくまで私見であって、えら〜い学者の人がなんというか、
まして東京地裁の裁判官さんがなんというかはわかりません。
所詮その程度のものだと思って一読いただけると幸いです。
質問のある方は遠慮なくコメントしてみて下さい。
後学のためになんとかしてみます。なんとかならなかったらごめんなさい。


さて、今回の件で原告のURLを。
http://www.koma.ne.jp/
「駒音掲示板」ではいろいろ議論されているようです。
原告本人も書き込みされているようですが…。
法律的なこと以外には特にコメントする気はありませんが(将棋界云々などと言える立場ではありません)、
法的なところについて少しコメントを。


まず、この契約書の第1条からは何の判断もできません。それは(2)で書いたとおりです。
次に前回も紹介した原告での画面比較サイトでの著作権の問題ですが、引用と考えていいように思います。
確かに、原告の主張はよくわからないところがありますが、
だからといって、引用要件を欠くとの判断は表現の自由の観点から妥当ではありません。
(本当に自己の主張の増強を図れているかどうかは別にして、)そのために用いており、
その場合、画面比較は重要なわけですから、引用にあたると考えて良いでしょう。
引用の体で著作物を扱っていれば引用ということはできませんが、
そういうつもりではないでしょうし、少なくとも文章の稚拙さは引用を否定するものではないように思います。


で、今気になっているのは両者が本当に似ているのか?ということ。
例えば練習問題が全部で双方100問あって、その内容全く同一で順番が違うだけ、であれば、
問題集部分については「ぱくった」ということができるでしょう。
買ってきた問題集をゲーム化したといえばわかりやすい…。
(ただし、その部分につき原告が作成し著作権がある場合)

延々と同じ問題であることを例示するのも能がないので、
最後に第5章第2問を掲げてひとまず終わりにします。
http://www.koma.ne.jp/tousaku/

と原告は主張しています。その通り受け止めるなら、ほとんど全く同一ということでしょうか?
だとすれば、部分的な複製権侵害があるでしょう。
または、ここを本質的特徴とした翻案権侵害といってもいいのかもしれませんが…。


ちなみに「延長掲示板」にもいろいろあるようですが、まぁいいでしょう。
言ってることが無茶苦茶ですし。
一太郎判決は特許の話なので著作権とは関係ないですし…。


次に被告のサイト。
http://homepage1.nifty.com/yonenaga-kunio/sakusaku/2_1.htm
「私は著作権というのは分りますが、実は著作者人格権というのが良く分らないんです。」
広義の著作権には、狭義の著作権(著作者財産権)と著作者人格権があります。
狭義の著作権には、複製権、演奏権、公衆送信権、翻案権などがあります。
勝手に複製したらいけないとか、勝手に演奏してはいけいないとか、そういうものです。
著作者人格権には、公表権、氏名表示権、同一性保持権があります。
著作者人格権というのが良く分らないんです。」ということからすれば、
著作者人格権も問題になってますねぇ。
氏名表示権かな。複製権や翻案権侵害が認められるなら、氏名表示権侵害も認められるかと。
ここで同一性保持権侵害ならそもそも翻案権侵害にはならないかな?公表権も関係ないかと。

もはや弁護士だけに任せる訳にもいきません。国会議員の先生も、有名なジャーナリストでも、話はまとめられません。
 私自身がドンとドンと話をするより解決はないと思っております。今回の騒動が何かの間違いなのか、そうでないのか私には理解出来ません。思わぬ決着がつくと思います。

裁判所で法律的に白黒つけるなら、弁護士に任せる方がいいでしょう。
個人的にはうれしいけど、あんまり裁判外でいらないこと言わない方がいいですね。
裁判外で決着をつけたいのなら、ご自分で動かれるのもいいかもしれません。
著作権に興味をもつ人間からすれば、判決がでるのが大変有り難いのですが、
ご本人達にとって最善の方法で解決できればそれにこしたことはありません。
ちなみに、裁判になった以上、国会議員の先生が話をまとめられいなのは当然。三権分立だし。
単なる仲介はできますけど、なぜに国会議員?なぜにジャーナリスト?
この発言を分析するのもおもしろそうですけど、今回はパス…


「将棋セミナー21」の発売前に米長氏か武者野氏か練習問題の部分の著書をだしていれば、
結構白黒はっきりつきやすいとは思うんですけどねぇ…。
この訴訟に関して、米長氏の弁護士いわく、
「米長先生。全ては証拠と法解釈で決まります。時効になる日までは残しておくのが仕事です。これをご覧下さい」
だそうですが、ほとんど事実認定の勝負のように思います。
個人的にはどこに著作物性を認めて判断するか、というところが一番の関心。