第1回「教育に関する著作権協議会」

2005年06月22日
著作権:学校での問題を考える協議会発足
 教育に関する著作権処理を、デジタル化、ネットワーク化の進展に応じものにすることを目指して、「教育に関する著作権協議会」が発足、20日、メディア教育開発センター(NIME)で第1回の協議会が開かれた。
 デジタル化、ネットワーク化の急速な進展で、著作権に関する問題が重要度を増している。特に学校や教育機関では教材の作成・配布、音楽や画像を使った表現など、著作物を利用する機会が多いが、著作権が十分理解され、著作権法が守られているとは限らない。さらにeラーニング、ITを活用した教育の拡大で、従来の著作権法が想定していなかった事態も発生している。そうした事態に対応し、教育現場で適正に著作物が活用されるためのルール、環境づくりを進めようと協議会がつくられた。
 会議では委員長に清水康敬・NIME理事長、副委員長に渡邉康夫・茨城県潮来市立牛堀中学校長を互選、清水委員長が「学校などの教育機関での著作物利用の実態、著作物を利用する上での著作権法上の課題、学校などでコピーや引用をする場合のガイドライづくりなどについて協議したい」と述べた。
 清水委員長は、文化審議会著作権分科会法制問題小委員会に対し、「eラーニングが推進できるよう教育機関の授業で使用する場合、必要と認められる限度で、著作物を自動公衆送信すること」「授業で使用した複製された著作物を児童生徒が復習などに利用できるようにするため、複製された著作物を学校のサーバーに蓄積できるようにすること」などを要望している。
 会議ではそうした経緯が報告された後、意見交換が行なわれ、「小中学校ではIT環境の整備が進んでいるが、法律が追い付いていない。いかにITを利活用できるか、そのことを考えるべきだ」「複製についての教育者側の考えを示し、守るべきガイドライを明確にすべきだ」「今は権利者サイドが意見を出しているが、利用者である教育界側の主張は少ない。利用者側の組織化が重要だ」「学校の先生たちの間では、著作権のことはよく分からないから、守れないといった気持ちがあるのが現状だ。先生に著作権意識が欠けていると、それが子供たちに伝わる。これはまずい」「著作権法を生かじりして、誤解している例が多く、危険だ」などの意見が出た。
 清水委員長は「著作権を分りやすい形で提示し、多くの人に理解してもらうことが大事だ。著作権意識を高め、同時に権利者側とともに考える環境づくりをしたい。そのためのイベントなども考えよう」と述べた。【平野秋一郎】
毎日新聞 2005年6月20日 20時08分
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/news/20050621k0000m040064000c.html

まずは、直接関係ないですけど、記事中の「ガイドライ」は「ガイドライン」の誤植?それとも新語?
すべて「」内からすると、元発言が「ガイドライ」?
さて、学校で著作権についての理解を深めることは必要なことでしょう。
ここでは「メディア教育」という観点からの議論が中心になるようですが、まずは著作権法自体を理解する必要があります。
ただ、(筆者を含めて)誰一人として著作権法を理解している人はいない、というのが本当のところではないか?
著作権法を生かじりして、誤解している例が多く、危険だ」との指摘は間違ってはいませんが、
これは利用者だけでなく(自称を含めた)権利者にもあてはまることのように思います。
文化庁だって理解していないのでは?というのが、少し前に書いた通りです。
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050613/1118590930
「教育に関する著作権」といっても様々な側面があります。
教師に対する著作権教育、生徒・児童に対する著作権教育、それらの環境整備、
教師や生徒・児童の利用に関する例外規定についての立法活動などであり、それぞれするべきことも異なるでしょう。
副委員長が中学校長とのことなので、現場との架橋になって、実務のとってよりよい方向になればと思います。


ところで記事は、「ITを活用した教育の拡大で、従来の著作権法が想定していなかった事態も発生している。」とし、
「小中学校ではIT環境の整備が進んでいるが、法律が追い付いていない。いかにITを利活用できるか、そのことを考えるべきだ」
との意見を紹介している。
これに限ったことではないが、権利制限に関して法律が想定しないことが生じていることも少なくない。
著作権法が、子どものITでの学習権を侵害している、とでもいえれば、憲法適合的に利用できるが、
引用ですら表現の自由の観点からは非常に問題な解釈がとられている現状では、かなり無理がありすぎる。
この意見の実体的妥当性などの各論はこの協議会でかなり話し合われるであろうが、総論としてのこの問題にどう対処するか?
著作権は、制限による利用とのバランスによってはじめて、文化の発展に寄与するものであり、重要な問題のように思う。
侵害しないためには著作権を利用しなければいい。しかしこれでは困るのである。
著作権法の権利制限規定の意義を理解することも、著作権意識を高めるのに必要なことであろう。

http://www.nime.ac.jp/
 http://www.nime.ac.jp/
http://deneb.nime.ac.jp/
 http://deneb.nime.ac.jp/