総務省「悪の温床」化防止?

総務省「悪の温床」化防止
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050628/1119893273

の続きというか、「情報フロンティア研究会」報告書をきちんと読んで。

「情報フロンティア研究会」報告書の公表
  総務省では、ユビキタスネット社会の実現を見据え、創意あるICTの利活用やサービス・ビジネスの最新動向を踏まえつつ、その普及展開に向けた幅広い意見交換等を行うため、平成17年3月11日(金)より「情報フロンティア研究会」(座長:國領二郎 慶應義塾大学環境情報学部教授)を開催してきました。
  このたび、本研究会において報告書が取りまとめられましたので公表します。

ICTの利活用により個人・コミュニティ・企業が自律・分散・協調的な連携を行い、経済社会活動の活性化がもたらされることが期待されている一方で、情報通信ネットワーク環境は必ずしも社会システムの急速な変化に対応しているとは言えない状況にあります。また、日本独自の社会文化的要素が今後のICTの社会的な浸透を妨げる可能性が懸念されています。
  本報告書においては、ICTを利活用した個と個の連携を通じて知識創造プロセスの進化がもたらされる社会を形成するために、ICTを最も効率的に活用できる自律分散型ネットワーク環境の構築及びICTの利活用に関する社会文化的な環境の整備とを一体として捉えた提言が盛り込まれています。
  総務省では、本報告書の内容を踏まえ、ICTの高度利活用による新しい価値の創造に向けた各種取組みに係る検討を引き続き進めてまいります。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2005/050628_7.html

報告書内にも「ICT」ってでまくりなのだが、ICTって何やねん?定義は?ってことで、
http://www.soumu.go.jp/s-news/2004/040827_7.html
 ※ICT:Information and Communication Technology
http://cgs-online.hitachi.co.jp/glossary/abc/i_021.html
昔で言うITの発展版らしい。いつの間に?筆者だけ?


さて、とりあえず、「匿名」で検索した。

情報フロンティア研究会報告書
――個と個の連携を通じて知識創造プロセスの進化が
もたらされる社会を目指して――
平成17年6月
総務省情報通信政策局情報通信政策課

(45頁)
1.安心してICTが使える社会づくり
……
 さらに、日本の社会では情報ネットワークが匿名であるという認識に基づい
て色々な活動が行われているがゆえに、社会生活全般においてICTが利活用
されていく活力が高まらず、社会心理的なデジタルデバイドと言うべき、サイ
バースペースへの忌避感が拡がっている。そのため、ある程度高度なICTを
活用している層においても、その活動量、活力は、他の社会に比べて低いこと
も指摘されている。
……

その指摘の根拠は?
本当に「サイバースペースへの忌避感が拡がっている」のか?
当然の前提にされても、少なくとも筆者にはそのような実感はない。
しかし、註もなにもない。空想を語られても困るのである。
これが論文だったら、「不可」ですよ。
学者もはいっているはずなのに、レベルの低い論文です。
ブログの方がきちんと書けてたりするんじゃない?
こんないい加減な文章が「有害情報」と思ってしまいます。

(1) ネットワークの信頼性を高めるための個人のICT利用意識の向上
P2P技術を使った違法なファイル交換や内部犯行による個人情報漏洩など
の事件が発生していることにも表れているように、様々なセキュリティ技術が
開発されたとしても、ネットワークの信頼性を高められるか否かは最終的には
利用者のモラルに関わるところが大きい。
この観点からみた場合、日本社会では、ネットワークを利用する者としての
自覚が社会的に十分に形成されているとは言い難い。とくに、サイバースペー
スが匿名性の高い空間として認識され、極端な場合、ばれなければ何をしても
いいという安易な発想すら助長する傾向を持っている。情報化社会の若者は、
膨大な情報メディア環境の中で、自分にとって必要な情報のみを取り入れるフ
ィルターを構築し、その内向きな情報環境の中に閉じこもり、自分の領域に対
(46頁)
する他者の侵入をできる限り排除しようとするだけでなく、相手の心に踏み込
んで感情や行動に影響を与えないように距離を置く強い傾向も一部観察されて
いる。5 これではICTによるネットワークが産性を活かした社会的ネットワ
ークの拡大、更にはそれによるイノベーションの創出を促すことはできない。
しかし、現実の世界では日本は依然として個人のモラルは高い国である。現
状の問題はむしろ現実世界でいうところの躾といったものがサイバースペース
に関しては何ら体系立って行われてこなかったことも大きな原因である。この
ような現実世界と同様のサイバースペースにおけるモラルを、利用者に定着さ
せる取組みを行うとともに、個人がネット社会全体に貢献するために自主的・
献身的にコンテンツを発信したりする部分、をうまく醸成できるような環境づ
くりを行う必要がある。
私たちは、今後の教育現場における取組に期待したい。学校とは人と人の間
のコミュニケーション手法を学び、他人と交流する能力を養う場でもある。I
CTを活用したコミュニケーション能力は学校で学ぶことが望ましい。いわゆ
る情報検索・探索技術やネットを介した互学互習のやり方の習得といったこと
に加え、ICTにより実現されるバーチャルな環境を、現実社会と同じ感覚で
活用すること、すなわち、サイバースペース上で実名又は特定の仮名で他人と
安全に交流することを自然の術として身につけるための教育が必要である。具
体的には、ブログやSNSの仕組みを学校に導入することを提案する。学校の
中でセキュアなネットワークを整備した上で、児童・生徒が自らのアカウント
を持ち、実名でブログやSNSを用いて他の児童・生徒と交流することでネッ
トワークへの親近感を養うとともに、ネット上での誹謗中傷やプライバシー侵
害等に対する実地的な安全の守り方も同時並行的に学ぶことが重要である。
5 木村忠正「ネットワーク・リアリティ」(岩波書店/2004 年3月)

なお、丸数字の1を(1)と置き換えた。
ICTとかいいながら、PDFとはいえ、機種依存文字を平気で用いていることにかなり疑問。
さて、情報リテラシーをきちんとすればいいんじゃないの?というのはもっとも話である。
http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/infoliteracy.html
そもそもかつてIT戦略と騒ぎながら、今頃こういうことを騒いでいる。そのこと自体がよくわからない。
ここでの提案の意義自体は否定しないが、いまさら偉そうにいうことではない。
情報リテラシー教育の内容については、考察だけの技量がないので、コメントしない。

2.活動主体の自律・分散・協調的な連携を支える情報通信基盤の構築
(50頁)
(3) 自律・分散型ネットワーク導入のための基盤技術の開発
ネットワークの分散化傾向を考慮すれば、ネットワークの安全性・信頼性を
確保するためにも、来るべきアドホックネットワークの導入も見据え、ネット
ワークデザインのあり方を再検討することが必要であり、そのためには現行の
ネットワーク構造を解析して現状の問題等を把握しておくことが不可欠である。
現状の技術ではノードが1万程度のネットワークの解析能力しかなく、日本は
諸外国に比べて対応が遅れている。本分野の研究成果は学際的な応用範囲が広
いことも考慮すれば、ユビキタスネット社会で想定される、何十億ものノード
で構成された多元的・動的なネットワーク構造を解析するための解析技術の研
究開発を進める必要がある。
また、ユビキタスネット社会で全ての人が個人ポータルを持ち、コミュニテ
ィの場を利用して個人間で情報をやりとりする場合、現在のような匿名性の高
いものだけではなく、利用者の顕名性又は特定性が強く求められる。この場合、
現行の認証機能はほとんどが認証の根拠となる制度に基礎を置く集中管理方式であ
り、ダイナミックにコミュニティを組成して行う個人間情報流通における個人認証に柔
軟に対応できない可能性が高い。
従って、個人間情報流通の際に今後必要となる膨大な個人間の信頼関係構築を
端末レベルで分散して処理するために簡便な信頼関係構築方式の開発を進める必
要があり、具体的には、公開鍵方式等による個人間の簡便な信頼関係構築の仕組
みの可能性について、実証実験による検証を行う必要がある。

「現在のような匿名性の高いものだけではなく、利用者の顕名性又は特定性が強く求められる。」
とのことで、どうやら匿名性を否定するものではないらしい。
これと“併存する”形で、顕名性又は特定性を有するシステムが必要ということだろう。
上記引用部分しか読んでないが、報告書の直接的な感想としては、報道ほどの悪い印象はない。
先に紹介した共同新聞社の記事では、

 総務省は27日、自殺サイトなど「有害情報の温床」ともいわれるインターネットを健全に利用するために、ネットが持つ匿名性を排除し、実名でのネット利用を促す取り組みに着手する方針を固めた。
共同通信) - 6月27日9時36分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050627-00000032-kyodo-bus_all

となっていたが、少し違うように感じた。
もし、新聞記事のような趣旨のもであるならば、前回書いたような意見である。
しかし、この報告書を簡単にまとめるなら、
「匿名表現の特質に注意した上で、実名表現を通じていろいろ勉強するのはどうですか?」
ということではないだろうか。
一般的に「匿名性を排除し」、「実名でのネット利用を促す」というものではないように思う。
もしかしたら、マスメディアの報道がきちんとなされているかどうかという問題として検証するべきかもしれない。


ざっとですが、報告書を読んで。どこか読み落としや読み間違いがあるのかなぁ?