「クロマティ」は誰のもの?

クロマティ」の名使うな 映画公開差し止めを申請
 7月に公開予定の映画「魁!!クロマティ高校THE☆MOVIE」に無断で名前を使われたとして、プロ野球の元巨人選手で米独立リーグサムライ・ベアーズ」監督のウォーレン・クロマティ氏が29日、配給元のメディア・スーツ(東京)を相手に、公開差し止めの仮処分を東京地裁に申し立てた。
 この作品は週刊少年マガジン講談社)に連載中の人気ギャグ漫画「魁!!クロマティ高校」を長編映画化。登場人物の不良少年が通う高校名が「クロマティ高校」で、原作漫画には「バース高校」「デストラーデ高校」など、プロ野球で活躍した人気外国人選手と同じ高校名が登場する。
 クロマティ氏の代理人弁護士は「青少年の健全育成に努力しているのに、不良少年をテーマにした作品に姓が無断使用されたことに憤りを感じ、仮処分を申し立てた」としている。
共同通信) - 6月29日17時36分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050629-00000149-kyodo-ent

「自分の姓、映画に使うな」=元巨人クロマティさんが申請−配給差し止め仮処分
(略)
 クロマティさん側は「氏名の使用を許諾したことはなく、作品は(氏名や写真から生じる経済的利益を独占できる)パブリシティー権や氏名権の侵害」と指摘。「極めて劣悪なイメージを植え付けようとするものだ」としている。 
時事通信) - 6月29日23時1分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050629-00000077-jij-soci

「魁!!クロマティ高校」映画公開ダメ…クロマティ
(略)
 メディア・スーツの話「映画はクロマティ氏の名誉を傷つけるものではなく、誠実に対応する」
(読売新聞) - 6月30日1時31分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050629-00000514-yom-soci

ウォーレン・クロマティ」高校ならともかく「クロマティ」高校で、どこまで氏が法的に文句がいえるのか?
まず、パブリシティ権であるが、プライバシー権(人格権)の一部とする見解もあるが(かつてのアメリカの有力見解)
今日では、財産権とみる見解が有力なようである。
パブリシティ権については、人のもつ顧客誘引力を基礎とするとされる。
(横浜地判平成4年6月4日判時1434号116頁)
(これらにつき、五十嵐清『人格権法概説』185-187頁(有斐閣,2003)参照。)
そうだとすれば、漫画「クロマティ高校」との名称でどれだけその誘引力を利用しているのか、ということになる。
日本国内で有名ななのが「クロマティ」=「ウォーレン・クロマティ」だとしても、
クロマティ」という性にそのような独占権を認めるべきかどうかという問題も残ろう。
もし「小泉高校」だったら、純一郎さんや今日子さんはパブリシティ権を主張できるのか?
サンコン高校」だったら、オスマンさんがパブリシティ権を主張できるのか?
一方で、人格権の側面の氏名(無断使用禁止)権にしても、「クロマティ」のみでは難しいであろう。
あまりに名称設定の幅がなくなってしまうからであるし、
「ウォーレン」さんのみに禁止権を与えるのもおかしい。
さすがにこれだけで、氏名(性)の許諾・禁止権を主張するのは少し難しいように思う。
また、一般的な名誉毀損についても、高校名を助っ人外国人選手からとっていることから、
ウォーレン・クロマティ」氏から「クロマティ」がきたことはわかるが、
だからといって、「ウォーレン・クロマティ」氏の社会的評価を低下させているかというとやはり疑問が残る。


もしかしたら名誉毀損くらいは認めて損害賠償はあるかもしれないが、差し止めまでは認められる事案ではないように思う。
どう「誠実に対応する」するのかはわかららないが、かえって良い宣伝になったことだけは否定できない。