第44回衆議院議員総選挙をふりかえって(その4)

その1 郵政可決後に何がある?
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050911/1126445384
その2 二大政党?政党本位選挙?
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050912/1126457193
その3 政党別当選者数から
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050912/1126468771

自民党自身がこれだけの大勝を予測していなかったことの証明。

自民の比例登載者、当選枠に足りず=圧勝で前代未聞−東京ブロック【05衆院選
 衆院選比例代表東京ブロックで、自民党の名簿登載者が当選枠に足りず、本来なら同党に配分される1議席社民党に割り当てられた。一方、北関東ブロックで小選挙区と重複立候補した社民党候補3人の得票がそろって一定水準に届かず、比例復活の権利を失った結果、順位が最も下の候補者が当選した。予想を超える自民圧勝の影響で珍事が相次いだ。
 自民は東京ブロックで、純粋比例6人、小選挙区との重複立候補者24人の計30人を擁立。このうち小選挙区で23人が当選。さらに比例で8人分の当選枠が割り当てられ、名簿登載者が1人不足した。1996年の小選挙区比例代表並立制導入以降初のケースだ。
 余った1議席は社民の名簿2位の保坂展人氏に回ったが、これは1位の候補が比例で復活当選できる供託金没収ライン(有効投票総数の1割)を割る惨敗に終わったためだ。
 北関東ブロックでは、社民は4人を名簿登載。このうち上位3人は小選挙区との重複立候補だったが、3人とも供託金を没収され、純粋比例で最下位の日森文尋氏が当選した。 (了)
時事通信) - 9月12日7時1分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050912-00000104-jij-pol

ということで、今回は比例代表の票の割る振り方について。
これはドント方式って方法で、得票数を1、2、3と正の整数で順に割っていき、その商の大きい順に議席を割るふるというもの。
http://www.pref.shimane.jp/section/senkyo/sousenkyo/syugi/dont.html参照。
つまり、

東京ブロック 定数17

自民(40.24) 民主(29.62) 公明(12.38) 共産(8.85) 社民(4.54) 日本(4.38)
得票数  2,665,417  1,962,225  820,126  586,017  300,782  290,027
 1 ☆2,665,417 ☆1,962,225 ☆820,126 ☆586,017 ○300,782  290,027
 2 ☆1,332,708.5 ☆ 981,112.5 ☆410,063  293,008.5  150,391  145,013.5
 3 ☆ 888,472.33 ☆ 654,075  273,375.33  195,339  100,260.66   96,675.66
 4 ☆ 666,354.25 ☆ 490,556.25  205,031.5  146,504.25   75,195.5   72,506.75
 5 ☆ 533,083.4 ☆ 392,445  164,025.2  117,203.4   60,156.4   58,005.4
 6 ☆ 444,236.16 ☆ 327,037.5  136,687.66   97,669.5   50,130.33   48,337.83
 7 ☆ 380,773.85   280,317.85  117,160.85   83,716.71   42,968.85   41,432.42
 8 ● 333,177.12   245,278.12  102,515.75   73,252.12   37,597.75   36,253.37
 9   296,157.44   218,025   91,125.11   65,113   33,420.22   32,225.22

※ここでは小数点第三位以下切り捨てました。

☆01議席目 自民(1)2,665,417
☆02議席目 民主(1)1,962,225
☆03議席目 自民(2)1,332,708.5
☆04議席目 民主(2) 981,112.5
☆05議席目 自民(3) 888,472.33
☆06議席目 公明(1) 820,126
☆07議席目 自民(4) 666,354.25
☆08議席目 民主(3) 654,075
☆09議席目 共産(1) 586,017
☆10議席目 自民(5) 533,083.4
☆11議席目 民主(4) 490,556.25
☆12議席目 自民(6) 444,236.16
☆13議席目 公明(2) 410,063
☆14議席目 民主(5) 392,445
☆15議席目 自民(7) 380,773.85
●16議席目 自民(8) 333,177.12
☆17議席目 民主(6) 327,037.5
−−−−−−<定数17>−−−−−−
○18議席目 社民(1) 300,782
 19議席目 自民(9) 296,157.44
 20議席目 共産(2) 293,008.5
 21議席目 日本(1) 290,027
 (以降略)

となるわけです。
で、自民党(東京ブロック)の比例名簿みると、

1.猪口 邦子
2.土屋 正忠
3.<小選挙区並立候補23名が同順位>
26.愛知 和男
27.安井 潤一郎
28.若宮 健嗣
29.大塚 拓
30.清水 清一朗

の30名だけど、3位の並立候補者が全員小選挙区で当選したので、実質7名になってしまった。
そこで上記16議席目の「●自民(8)」がなくなり、「○社民(1)」になったというわけです。
ちなみに、

衆院選報道で朝日新聞ミス 「落選」候補を「当選」に
 朝日新聞が12日付の一部朝刊で、衆院選で落選した共産党比例代表東京ブロックの名簿順位3位の候補者を誤って「当選」と報じたことが分かった。同社広報部によると、約140万部に誤った記事が掲載された。
 同ブロックでは自民党が8議席分を獲得したが、重複立候補した小選挙区の当選者を除く名簿登載者が7人しかおらず、公選法の規定に基づき、他党候補に1議席が配分されることになり、社民党候補が当選した。
 同社広報部は「東京都選挙管理委員会が発表した北区の開票データの一部に誤りがあり訂正があったが、対応が遅れ、共産党候補を当選と判断してしまった」という。
共同通信) - 9月12日15時25分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050912-00000215-kyodo-pol

という報道があったが、「社民(1)300,782」と「共産(2)293,008.5」差がわずかであることから、
元の票数データの訂正の影響を受けたということだろう。
さて、この自民党議席をとり損ねた事態について、

当選枠譲渡は「不思議な制度」=小泉首相
 自民党衆院選で圧勝した結果、比例代表東京ブロックの名簿登載者数が足りず、同党に配分されるはずの1議席社民党に割り当てられたことが、12日の与党党首会談で話題となった。
 小泉純一郎首相が「大変なことになったね。(議席を)一つあげたんだから」と水を向けると、会談に同席していた公明党冬柴鉄三幹事長は「わたしのところに欲しかった」と、本音をポロリ。せめて、与党内に回すことができれば、議席が減った公明党を助けることができたとあって、首相も「不思議な制度だ」と、首をかしげていた。
 これについて、自民党武部勤幹事長は記者団に「(当選枠の譲渡は)誠に残念だが、想像以上の支持をいただいたと重く受け止めている」と、圧勝を背景に余裕の対応を見せた。(了)
時事通信) - 9月12日16時1分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050912-00000220-jij-pol

という記事があった。
不思議ということれでも、当選すべき人がいなんだから仕方ありません。
自民党は十分な候補者を立てなかったのだから、党のミス。
しかもそれを言うのであれば、単に党内の問題ではなく、
投票した民意に対するどう責任をとるのか?ということは考えるべきでしょう。
党からすればこれだけ議席を獲得して余裕でしょうけど…。
そして、この「不思議な制度」をつくったのは、自分達自身である。
以前から議員をやっているんだから、直接的に自分達の作った制度だ。
不可思議と言うなら、ほかならぬ自分達の立法過誤ではないか。
あくまで記事の補足だが「与党内でまわすことができれば」というのであれば、それはそれで不思議な制度になる。
それなら自民と公民は選挙において単一政党とすればよかったのだ。
そうでない以上、与党内で票をまわすという考え方自体おかしいのである。


さて、小泉総裁いわく不可思議な制度で、「(議席を)一つあげたんだから」というが、
確かに上記に説明した一般的説明法によれば、「あげた」というイメージが強い。
しかし、法律的には、実は枠を譲渡というよりは、枠自体がないこと扱いである。
上流で水がくむ権利があったのに、それを使わなかったために、下流の人が正当に汲んだというにすぎない。
決して制度的には上流で自民が汲んだ水が、社民にわたされたわけではない。

公職選挙法(昭和二十五年四月十五日法律第百号)
衆議院比例代表選出議員の選挙における当選人の数及び当選人)
第九十五条の二  衆議院比例代表選出)議員の選挙においては、各衆議院名簿届出政党等の得票数を一から当該衆議院名簿届出政党等に係る衆議院名簿登載者(当該選挙の期日において公職の候補者たる者に限る。第百三条第四項を除き、以下この章及び次章において同じ。)の数に相当する数までの各整数で順次除して得たすべての商のうち、その数値の最も大きいものから順次に数えて当該選挙において選挙すべき議員の数に相当する数になるまでにある商で各衆議院名簿届出政党等の得票数に係るものの個数をもつて、それぞれの衆議院名簿届出政党等の当選人の数とする。
2  前項の場合において、二以上の商が同一の数値であるため同項の規定によつてはそれぞれの衆議院名簿届出政党等に係る当選人の数を定めることができないときは、それらの商のうち、当該選挙において選挙すべき議員の数に相当する数になるまでにあるべき商を、選挙会において、選挙長がくじで定める。
3  衆議院名簿において、第八十六条の二第六項の規定により二人以上の衆議院名簿登載者について当選人となるべき順位が同一のものとされているときは、当該当選人となるべき順位が同一のものとされた者の間における当選人となるべき順位は、当該選挙と同時に行われた衆議院小選挙区選出)議員の選挙における得票数の当該選挙区における有効投票の最多数を得た者に係る得票数に対する割合の最も大きい者から順次に定める。この場合において、当選人となるべき順位が同一のものとされた衆議院名簿登載者のうち、当該割合が同じであるものがあるときは、それらの者の間における当選人となるべき順位は、選挙会において、選挙長がくじで定める。
4  衆議院比例代表選出)議員の選挙においては、各衆議院名簿届出政党等の届出に係る衆議院名簿登載者のうち、それらの者の間における当選人となるべき順位に従い、第一項及び第二項の規定により定められた当該衆議院名簿届出政党等の当選人の数に相当する数の衆議院名簿登載者を、当選人とする。
5  第一項、第二項及び前項の場合において、当該選挙と同時に行われた衆議院小選挙区選出)議員の選挙の当選人とされた衆議院名簿登載者があるときは、当該衆議院名簿登載者は、衆議院名簿に記載されていないものとみなして、これらの規定を適用する。
6  第一項、第二項及び第四項の場合において、当該選挙と同時に行われた衆議院小選挙区選出)議員の選挙においてその得票数が第九十三条第一項第一号に規定する数に達しなかつた衆議院名簿登載者があるときは、当該衆議院名簿登載者は、衆議院名簿に記載されていないものとみなして、これらの規定を適用する。

1項が公職選挙法上の当選者決定法である(2項は商が同数値のとき)。
ドント方式の一般的説明として、「得票数を1、2、3と正の整数で順に割っていき」と説明したが、
得票数を除する数は無制限にあるのではなく、
「一から当該衆議院名簿届出政党等に係る衆議院名簿登載者…の数に相当する数までの各整数で順次除」するのである。
そして、小選挙区当選者は記載されていないものとみなされるので(5項、なお法定得票数未獲得者もおなじ。6項)
実は、そもそも自民党について、8で割って得た商というのはなかったということなのである。
こういう制度である以上、「(議席を)一つあげたんだから」というのは不適切である。
むしろ、採り損ねたというべきであって、執行部の責任問題だと思うのである。
大勝に歓喜してそんなこと(扱いで)どうでもいいみたいだけど…。


なお、水をくむバケツを用意するのに、比例(単独)で1人あたり600万円の供託金が必要となる。
ただ、結果的にかえってきたことを考えると、もったいない限り。

(供託)
第九十二条  町村の議会の議員の選挙の場合を除くほか、第八十六条第一項から第三項まで若しくは第八項又は第八十六条の四第一項、第二項、第五項、第六項若しくは第八項の規定により公職の候補者の届出をしようとするものは、公職の候補者一人につき、次の各号の区分による金額又はこれに相当する額面の国債証書(その権利の帰属が社債等の振替に関する法律 (平成十三年法律第七十五号)の規定による振替口座簿の記載又は記録により定まるものとされるものを含む。以下この条において同じ。)を供託しなければならない。 一  衆議院小選挙区選出)議員の選挙    三百万円
2  第八十六条の二第一項の規定により届出をしようとする政党その他の政治団体は、選挙区ごとに、当該衆議院名簿の衆議院名簿登載者一人につき、六百万円(当該衆議院名簿登載者が当該衆議院比例代表選出議員の選挙と同時に行われる衆議院小選挙区選出議員の選挙における候補者(候補者となるべき者を含む。)である場合にあつては、三百万円)又はこれに相当する額面の国債証書を供託しなければならない。
(公職の候補者に係る供託物の没収)
第九十三条  第八十六条第一項から第三項まで若しくは第八項又は第八十六条の四第一項、第二項、第五項、第六項若しくは第八項の規定により届出のあつた公職の候補者の得票数が、その選挙において、次の各号の区分による数に達しないときは、前条第一項の供託物は、衆議院小選挙区選出)議員…の選挙にあつては国庫に、…帰属する。
 一  衆議院小選挙区選出)議員の選挙
             有効投票の総数の十分の一
2  前項の規定は、同項に規定する公職の候補者の届出が取り下げられ、又は公職の候補者が当該候補者たることを辞した場合(第九十一条第一項又は第二項の規定に該当するに至つた場合を含む。)及び前項に規定する公職の候補者の届出が第八十六条第九項又は第八十六条の四第九項の規定により却下された場合に、準用する。
(名簿届出政党等に係る供託物の没収)
第九十四条  衆議院比例代表選出)議員の選挙において、衆議院名簿届出政党等につき、選挙区ごとに、三百万円に第一号に掲げる数を乗じて得た金額と六百万円に第二号に掲げる数を乗じて得た金額を合算して得た額が当該衆議院名簿届出政党等に係る第九十二条第二項の供託物の額に達しないときは、当該供託物のうち、当該供託物の額から当該合算して得た額を減じて得た額に相当する額の供託物は、国庫に帰属する。
 一  当該衆議院名簿届出政党等の届出に係る衆議院名簿の衆議院名簿登載者のうち、当該選挙と同時に行われた衆議院小選挙区選出)議員の選挙の当選人とされた者の数
 二  当該衆議院名簿届出政党等に係る当選人の数に二を乗じて得た数
2  第八十六条の二第十項の規定により衆議院名簿を取り下げ、又は同条第十一項の規定により同条第一項の規定による届出を却下された政党その他の政治団体に係る第九十二条第二項の供託物は、国庫に帰属する。

それにしても民主党比例代表の総供託金没収額すごいんじゃない?
重複立候補者が、25名×300万円=7500万円
単独立候補者が、3名×600万円=1800万円で、計9300万を供託。
で、
額没収額=供託額−(300万×重複小選挙区当選者数+600万円×比例代表の当選者数×2)
    =9300万−(300万×1名+600万×6名×2)
    =9300万ー(300万+7200万)
    =1800万。
http://www.pref.tottori.jp/soumubu/shichousonshinkou/senkyo/senkyoundou/rikkouho.html参照。
東京ブロックだけで1800万が国庫に帰属。
全部計算しないけど。
議席を獲得できなかったことは当然としても、財政的にもイタイよね、きっと。
(もっとも政党助成金(これも減るけど)という税金で結局補填されるんだろうけど…。)