死刑執行によせて

16日午前、死刑が執行された。

女性2人強殺、元巡査の死刑執行…南野法相で初
 大阪拘置所で16日午前、死刑囚1人に刑が執行された。
 死刑執行は、昨年9月に大阪教育大付属池田小(大阪府池田市)の児童殺傷事件で死刑が確定していた宅間守死刑囚ら2人に対するもの以来で、南野法相のもとでは初めて。法務省は同日、死刑執行の事実と人数だけを発表した。
 関係者によると、執行されたのは、高知、千葉両県で計2人の女性を殺害した北川晋死刑囚(58)。
 北川死刑囚は元神奈川県警巡査。1983年8月、千葉市内のバス停でスーパーの女性店員(当時18歳)を「自宅に送る」と言って車に乗せ、乱暴したうえ絞殺。現金などを奪い、遺体を千葉県四街道市内の水田に捨てた。
 また84年に起こした別の婦女暴行致傷事件で服役し、仮釈放された約3か月半後の89年2月、高知市内のバス停で女性銀行員(同24歳)を道案内を頼んで車に誘い、乱暴したうえで絞殺、現金などを奪った。
 2000年2月に最高裁で北川死刑囚の上告を棄却する判決を受け、強盗殺人罪などで死刑が確定していた。
(読売新聞) - 9月16日13時17分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050916-00000105-yom-soci

なぜか最近の傾向として死刑の執行は法相退任前に行われる。
確かに現在は、特別国会招集前である。しかし小泉氏は、確実な特別国会での首相再指名後には、
郵政民営化が決着するまでは、全員再任すると方針と報じられている。

郵政成立後に内閣改造 21日から特別国会
 小泉純一郎首相は12日、衆院選で自民、公明両党が計327議席を獲得、圧勝したのを受け、神崎武法公明党代表と国会内で会談し、連立政権を維持することで正式に合意した。特別国会を21日に召集し、郵政民営化関連法案を再提出、早期成立を目指す方針も確認した。
 小泉首相はこれに先立つ自民党役員会で、民営化法案成立を最優先する立場から第3次小泉内閣発足に伴う人事は当面凍結し、全閣僚を再任する考えを表明。閣僚の顔触れを代える内閣改造自民党役員人事は特別国会終了後に行う意向を明らかにした。
 与党は再提出する郵政民営化法案を参院から審議することも検討。首相の所信表明演説とこれに対する各党代表質問を衆参両院で行った後、ただちに民営化法案の審議に入る方向で、遅くとも審議入りから2週間程度で成立させたいとしている。
共同通信) - 9月12日13時56分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050912-00000208-kyodo-pol

ちょっと早いのではないか?とも思わなくもない。
またこのタイミングは少し微妙なタイミングのようにも思う。

日本国憲法(昭和二十一年十一月三日憲法
第七十条  内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。
第七十一条  前二条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ。

総選挙後の特別国会の招集があると、総辞職しなければならず、
この間の内閣は日常的事務処理だけを行い、政治的判断はするべきではないとされている。
この間に法務大臣は死刑執行の命令をおこうことができるか、ということを、
下記「はてな」との関係で考えてみてもおもしろいと思う。
ちなみに、今回の場合、国会の招集はまだおこなわれていない。
なお、

死刑廃止死刑存置の考察■死刑に関する運用について■死刑執行の外部的条件
http://www.geocities.jp/aphros67/050610.htm

において、政治日程との死刑執行との関係が考察されている。
ここでは、

衆議院議員総選挙の場合、選挙終了後特別国会が召集され、新内閣が組閣されるわけであるが、この間の執行はない。

と説明されている。

question:1126860801
日本の刑事訴訟法では死刑の執行命令は判決確定から6ヶ月以内と定められているそうですが、現在、6ヶ月以内に執行されることはほとんどありません。再審請求や恩赦の可能性を考慮したり、死刑廃止論、法務大臣の心理的影響などが執行されない原因だと聞きました。さて、法務大臣は国民の模範として法を遵守すべき立場だと思いますが、このように刑事訴訟法に定められた手続きを執行しないことは、犯罪行為にあたらないのでしょうか?※なお、この質問は「死刑制度の継続を願う」といった類いの物ではなく、法務大臣が法律を守らなくても咎められないの?という単純な疑問によるものです。死刑制度が必要かどうかという論争は望んでいません。

罪刑法定主義からすれば、現行法において犯罪にはあたらない。
法に反すること=犯罪ではなく、法のうち犯罪規範に反するものが犯罪である。
刑事訴訟法は実体法ではなく手続法ですので、刑法とは異なり、
犯罪とする規定がない限り、犯罪であるとの帰結は生じない。
回答は途中から違法かどうかという話にすり変わり、犯罪かどうかという話ではなくなったが、
民事法および行政法上の違法行為が犯罪を構成するわけではないことをまずは理解するべきである。
死刑不執行が違法となるかどうかについては、国家賠償法上の違法を導くかどうかという点で問題になろう。
仮に違法でも現実にこれを実際に訴える死刑囚はいないんのだろうが、
元死刑囚の宅間氏はもし執行されない場合に国賠訴訟を考えていたらしいから、

最後まで謝罪なく 宅間死刑囚に執行
 大阪教育大付属池田小で8人の児童を刺殺し、15人にけがをさせた宅間守死刑囚(40)の死刑が14日、執行された。死刑確定からわずか1年という、異例の早さだった。法廷で身勝手な言葉を繰り返し、刑の確定後も、謝罪の言葉がその口から語られることはなかった。遺族らは執行を「当然」と受け止めつつも、心の傷を埋められないでいる。
 「もう無駄に生きたくない」「これ以上生け捕りにされるのは嫌だ」
 大阪拘置所大阪市都島区)に拘置されていた宅間死刑囚は、昨年9月に死刑が確定してから、関係者に寄せた手紙で獄中の心境をこう書き留めた。
 主任弁護人に送った手紙でも刑事訴訟法475条で規定された「6カ月以内」の執行を訴えていた。死刑が6カ月以内に執行されないと、「精神的に苦痛を受けた」として、国家賠償請求訴訟を起こす準備すらしていたという。
(以下、省略)
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200409140035.html

議論としてはありうるところだと思う。
ただし、訴訟の相手は大臣個人ではなく、国である。故意重過失で求償されうるが…。
(この問題にはここでは立ち入らない。)
いずれにせよ、犯罪ですか?と問われると、
国務大臣の職務怠慢罪などの犯罪構成要件規定がない限り、犯罪にはなりえない。
あとは政治家としての政治的責任ということだろうか。