サツキの家入場券のネット取得ネット転売がダフ屋適用見送られた事例

ダフ行為って?
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050512/1115902509

サツキの家入場券、タダが4万円…ダフ屋適用見送る
 愛知万博の人気施設「サツキとメイの家」の入館予約券(無料)を大量に申し込んで入手したとみられる人物が、インターネットのオークションで1枚数千円〜4万円以上で販売していた問題で、警視庁は、この行為について、ダフ屋行為を禁じた東京都迷惑防止条例の適用はできないと結論づけていたことがわかった。
 インターネットは「条例が適用される『公共の場所』に当たらない」などと判断した。インターネットの“悪用”が社会問題化する中、専門家からも法の整備を求める声が上がっている。
 「サツキとメイの家」は、人気アニメ映画「となりのトトロ」(宮崎駿監督)の主人公が暮らす一軒家を、実物大で再現した展示施設。事前に予約した人しか入館できず、開幕当初、入館者は一日800人(後に880人)に限定されていた。
 入館希望者は希望日の前月の1日に、専用電話かコンビニエンスストアの情報端末で予約することになっていたが、4月1日に予約が殺到。2万枚以上の予約券は1時間余りですべてなくなった。
 その後、インターネットのオークションサイトに予約券が出品され、高い時で4万円以上の値段で売買されていることが明らかになった。
 このため、警視庁などには「ダフ屋行為ではないか」といった“通報”が相次ぎ、同庁生活安全特捜隊が、同条例に抵触するかどうか検討してきた。
 同条例では、〈1〉「不特定の人に転売する目的でチケットなどを購入する」行為〈2〉「チケットなどを公共の場所で売る」行為――のどちらかが適用できれば、ダフ屋行為を摘発できる。
 しかし、〈1〉予約券は無料だから「購入」ではない〈2〉インターネット上は「公共の場所」には当たらない――として、条例は適用できないとの見解に至った。
 同隊ではさらに、コンビニ経営者から予約券をだまし取った詐欺罪や、物価統制令なども模索したが、いずれも適用できないと判断、最終的に立件を見送ることにした。警視庁以外の警察でも、同様の結論に至った模様だ。
 警視庁などでは、無料の予約券を高額で売ることを目的とした計画的な“犯行”とみているが、人物の特定には至っていない。
 一方、ネットオークションを舞台にしたダフ屋行為は、これまでも多くの摘発例がある。警視庁でも2002年1月、宮崎監督が館主を務める「三鷹の森ジブリ美術館」のチケットを大量に購入し、ネットオークションで転売していた女を同条例違反で逮捕している。しかし、いずれもチケットが有料だったため、同条例が適用される「転売目的で『購入』した」行為をとらえたものだった。
 「サツキとメイの家」の予約券問題を巡っては、日本国際博覧会協会が6月分以降の予約について、万博の前売り入場券(有料)を購入してから、入場券に記載された番号をはがきに記入して応募する方法に変更している。
(読売新聞) - 9月17日18時52分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050917-00000307-yom-soci

迷惑防止条例の保護法益をどう考えるかにもよるかと思いますが、
筆者は同条例は空間的迷惑が保護法益と理解しているので、妥当な判断であると考えます。
東京都の迷惑防止条例をみると、

公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和三七年一〇月一一日条例第一〇三号)
(目的)
第一条 この条例は、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等を防止し、もつて都民生活の平穏を保持することを目的とする。
(乗車券等の不当な売買行為(ダフヤ行為)の禁止)
第二条 何人も、乗車券、急行券、指定券、寝台券その他運送機関を利用し得る権利を証する物又は入場券、観覧券その他公共の娯楽施設を利用し得る権利を証する物(以下「乗車券等」という。)を不特定の者に転売し、又は不特定の者に転売する目的を有する者に交付するため、乗車券等を、道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場その他の公共の場所(乗車券等を公衆に発売する場所を含む。以下「公共の場所」という。)又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公共の乗物(以下「公共の乗物」という。)において、買い、又はうろつき、人につきまとい、人に呼び掛け、ビラその他の文書図画を配り、若しくは公衆の列に加わつて買おうとしてはならない。
2 何人も、転売する目的で得た乗車券等を、公共の場所又は公共の乗物において、不特定の者に、売り、又はうろつき、人につきまとい、人に呼び掛け、ビラその他の文書図画を配り、若しくは乗車券等を展示して売ろうとしてはならない。
(罰則)
第八条 次の各号の一に該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
 一 第二条の規定に違反した者
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/seian/gujourei/meiwaku.htm

目的規定に「等」があるとはいえ、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為」という有形的迷惑防止を目的としていること、
例示で示された「公共の場所」「公共の乗り物」というのは、実空間を想定していると考えられること、が挙げられます。
ところで、記事中にある「三鷹の森ジブリ美術館」の事例について調べてみると、

作成日:2002.2.17(日) 16:33,

≪<ジブリ>入場券ネット転売の主婦に罰金50万円 八王子簡裁≫
 大ヒットしたアニメ「千と千尋の神隠し」の宮崎駿監督が館主をしている
三鷹の森ジブリ美術館」(東京都三鷹市)の入場引換券を、転売目的で大量
に購入したとして、都条例違反の疑い(ダフ行為)で逮捕された府中市内の主
婦(38)に8日、八王子簡易裁判所は、罰金50万円の略式命令を出した。
 判決などによると、主婦は昨年11月5日、府中市内のコンビニエンススト
アで転売目的で同券122枚(1枚1000円)を合計12万2000円で購
入した。主婦は入場引換券をインターネットオークションで高値で転売し、約
8万円の利益を上げた。
 同美術館は昨年10月にオープンしたが、1日の入場者を予約制限しており、
入場券の入手が難しい状況だ。主婦は「家のローン返済などに使うつもりだっ
た」という。
【小林努】(毎日新聞
http://www.bonz.co.jp/cgi-bin/technote/read.cgi?board=comicnews&y_number=802

という記事があった。
コンビニエンスストアで転売目的で…購入」というところが条例違反ということになる。
購入の場合も「公共の場所」「公共の乗り物」で行われる必要があると思うのだが…。

〈1〉「不特定の人に転売する目的でチケットなどを購入する」行為
〈2〉「チケットなどを公共の場所で売る」行為――のどちらかが適用できれば、ダフ屋行為を摘発できる。

という説明は不正確だと思うのだが。
〈1〉も「公共の場所」性を要するが、そもそも「購入」ではないからその検討の余地は不要ということだろう。
また、同様の事件で

ジブリ入場引換券、転売目的で買い占めた38歳逮捕
(読売新聞)

映画監督の宮崎駿氏が館主を務める「三鷹の森ジブリ美術館」(東京都三鷹市)の入場引換券などのチケットを、インターネットオークションで転売するために大量に買い占めたとして、警視庁生活安全特捜隊は14日、茨城県土浦市荒川沖東2、無職原茂人容疑者(38)を茨城県入場券不当売買防止条例違反の疑いで逮捕したと発表した。
 調べによると、原容疑者は、今年3月13日午前5時ごろ、同県阿見町コンビニエンスストアに設置された機械で、ジブリ美術館の入場引換券157枚を15万7000円で購入するなどした疑い。自宅から同美術館の入場引換券231枚やプロ野球のチケット79枚が押収された。

http://bakapon.way-nifty.com/kimaden/2004/05/post_44.html

というのもあった。(http://mashi.exblog.jp/284575/も参照。)
これも「コンビニエンスストアに設置された機械」で購入である。
ただし、こちらの事件は「茨城県入場券不当売買防止条例違反」である。

茨城県入場券等の不当な売買行為の防止に関する条例(平成5年11月10日条例第42号)
茨城県入場券等の不当な売買行為の防止に関する条例を公布する。
茨城県入場券等の不当な売買行為の防止に関する条例
(目的)
第1条 この条例は、入場券、観覧券、入園券その他の公共の娯楽施設を利用し得る権利を証する物(以下「入場券等」という。)の不当な売買行為を防止し、もって県民生活の平穏を保持することを目的とする。 
(入場券等の不当な売買行為(ダフヤ行為)の禁止)
第2条 何人も、入場券等を不特定の者に転売するため、又は不特定の者に転売する目的を有する者に交付するため、入場券等を、公衆に発売する場所、道路、公園、広場、駅、興行場その他の公共の場所(以下「公共の場所」という。)又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公共の乗り物(以下「公共の乗り物」という。)において、買い、又は公衆の列に加わり、うろつき、人に立ちふさがり、つきまとい、呼び掛け、若しくはビラその他の文書若しくは図画(以下「ビラ等」という。)を配り、若しくはビラ等を掲出して買おうとしてはならない。
2何人も、転売する目的で得た入場券等を、公衆に発売する場所、公共の場所又は公共の乗り物において、不特定の者に、売り、又はうろつき、人に立ちふさがり、つきまとい、呼び掛け、入場券等を提示し、若しくはビラ等を配り、入場券等を展示し、若しくはビラ等を掲出して売ろうとしてはならない。
(罰則)
第3条 前条の規定に違反した者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2常習として前条の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
http://www.pref.ibaraki.jp/kenkei/ip_jorei/san05-42.htm

こちらの場合、「不当な売買行為の防止」であるので、「公衆に発売する場所」にネット空間も含めえるかもしれない。


取り締まるべきだ、という価値判断があるのであれば、
東京都においても、別途チケット取引の公正を図るための条例をつくるべきではないかと思います。
(少なくとも現在の条文からは解することができないように思う。)
転売して利益を得るというのは資本主義経済において十分是認されうる行為であって本来自由であるべきですが、
独占禁止法のような市場ルールとしてならあってもいいかと思います。
「不当な売買行為」といってもその内容がいまいち不明確なので、茨城県条例もちょっと問題ありですが…。