JASRACの私的録音録画補償金制度のCM(2)

JASRAC私的録音録画補償金制度のCM
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050921/1127234680

音声引用つきバージョンは、
http://page.freett.com/okeydokey/html/20050927.html

CMの内容の詳細がわかったので、紹介して、コメントしたいと思います。

JASRAC
男:言えるかな、今注目の早口言葉。してきろくおんろくがほしょうきん。
  してきろくおんろくがほしょうきん。してきろくおんろくがほしょうきん。
女:「してき」って「わたしてき(私的)」ってこと
男:すごい、ごしてき(指摘)

前半部分は駄洒落コント?で、CM導入部(15秒)です。
JASRACのCMはだいたい前半部分は面白く?作ってます。
確かに、ツカミとしてはいいアイデアですが、このことで大事なメッセージがその分伝えられないことになります。
その点をどう考えるかは難しいところであって、後述のように本件では特に疑問が生じます。
そして、この導入部分があってから、以下の(真面目な)アナウンス(25秒)があります。

なぜ補償金を払うのでしょうか?
デジタルコピーはオリジナルと同じです。
コピーが大量に作られれば、作家やアーティストには何も還元されず、新たな作品が生み出せなくなります。
私的録音録画補償金制度は、そこを少しでも救済しようとするもの。
皆様のご理解とご協力をお願いします。
JASRAC 日本音楽著作権協会

というものです。


まず、確かにデジタルコピーはアナログと異なりコピーしても劣化しません。
mp3もMDもある程度劣化するので、デジタルだから「劣化しない」というのは嘘ですけど、
劣化しないコピーは可能でしょうし、コピーを繰り返したからとしって劣化するものではない、
というアナログとの比較の意味においては、「オリジナルと同じです。」ということも不可能ではないでしょう。
25秒という制約がありますし。


次に、「(そのようなデジタル)コピーが大量に作られれば、作家やアーティストには何も還元されず…」
ということですが、これは30条1項のみを考えれば当然の帰結
では「新たな作品が生み出せなくなります」というのはどうか?
私的でない違法複製によって、「何も還元されず、新たな作品が生み出せなくなります。」というのは理解しやすいが、
オリジナルを購入した場合に「複製によって何も還元されず、新たな作品が生み出せなくなります。」という論理は、
そもそも本当なのか?ということも問われているところのように思います。
つまり、デジタル(私的)複製によって、アナログ時代に比べて本当に権利者を害しているのかということです。


しかも、どれだけがきちんと権利者に還元されているのかというと、
私的録音補償金協会、私的録画補償金協会では基準が公開されている程度…。
私的録音補償金については、http://www.sarah.or.jp/sarah/sarah04_i.html
権利者還元以外(例えばこのCMも?)にも使われていることについては、触れられていません。
著作権研究者や興味ある人がお世話になっている無償冊子も私的録画補償金協会の助成だったりして、
 反対を積極的に運動している人たちは実はお世話になっているというジレンマがあったりするわけですが…)


CMの時間的制約は否定できませんが、前半15秒にコントをいれるなら、
「今注目」なことなわけですし、もう少しきちんとコメントするべきだったのではないか?
このCMだって、著作権の使用料の一部からなりなっているわけですし。
筆者は、私的録音録画補償金制度には懐疑的な立場ですが、肯定的に考えるにしても、
このCMは本当に私的録音補償金制度の理解につながっているのか、というと疑問です。
本来権利者に行くべきお金から成り立っているからこそ、もう少しきちんと制度の説明をするべきと思います。


冒頭にも掲載しましたが、ブログサーバー上には音声ファイルをアップロードできないので、
音声での引用つきバージョンを、
http://page.freett.com/okeydokey/html/20050927.html
に掲載していますので、より正確にご理解、ご判断いただければと思います。