入試問題集出版差止仮処分申請事件

またです。

作家ら 仮処分申請へ 入試問題集出版「作品無断で使用」
 詩人の谷川俊太郎さんら二十六人の詩人、作家が近畿地方の有名中学、高校の受験生向け入試過去問題集(通称・赤本シリーズ)を出版している学習教材出版会社「英俊社」(大阪市東住吉区)に「作品を無断で使用され、著作権を侵害された」として、過去問題集の印刷や出版、販売の差し止めとインターネット上での問題集の送信停止を求める仮処分を五日午後、東京地裁に申し立てることが分かった。
 関係者によると書店向けの中学、高校入試の過去問題集の著作権侵害が問われ、訴訟に発展するのは初めてのケース。
 同社は、大阪教育大付属池田中といった有名中学校百二十校の学校別入試対策用「赤本シリーズ」などを出版。バックナンバーのネット販売も行っている。
 「赤本」では直木賞作家、ねじめ正一さんの「高円寺純情商店街」や本紙「朝の詩」選者の新川和江さんの全詩集から「地球よ」といった作品が国語の問題で引用されている。
 同社の「赤本シリーズ」は、近畿地方では独占状態になっているといわれる。
 文学作品の入試過去問題集への無断使用をめぐっては今年四月、大学受験生用の「赤本」で十二人の作家らが著作権を侵害されたとして、京都府の教材出版社「世界思想社教学社」に損害賠償請求訴訟を起こしており現在、係争中。
 谷川さんらは同日午後、仮処分申請とは別に同社に出版差し止めを求める訴訟も起こす。
産経新聞) - 12月5日16時7分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051205-00000037-san-soci

倉本聡さんら出版社提訴=問題集に著作「無断使用」−東京地裁時事通信) (5日21時1分)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051205-00000175-jij-soci
<入試問題集>「無断使用」と作家・文学者計26人が提訴(毎日新聞) (5日20時48分)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051205-00000127-mai-soci

英俊社と聞いて「?」ですが、この記事を読んですっきり。
近畿で私学を受験したことのある人とか多少の勉強をした人ならきっと使ったことあるのではないかと。

英俊社
http://www.eisyun.jp/

事件については今まで同じ。
すでに述べてきたところだが、現行著作権法の規定上、著作者である作家に権利はある。
しかし、果たしてそれを行使していくのがどうなのか?
もちろんそこに法律がある以上、利用者(出版者)が許諾を求める必要はあるように思う。
許諾を得ずに利用することが当然だと思うことには疑問が残る。
ただ、許諾がないからということで、出版差し止めを求め、虫食い出版を生じさせるというのはどうか。
作家らは、自分の作品が勝手に使われていることに著作権法的には憤りを感じるかもしれない。
しかし、自らの作品が試験等で読んでもらえる作品であることに何も感じないのだろうか?
その出版物を用いて勉強する子どもたちのことはどう考えているのだろうか?
サラ金業者が、債権があるからといって、強引な取り立てをすると非難されるのと同じように、
著作権があるからといって、出版差し止めを求めることは果たして妥当なのか?
損害賠償請求による経済的損失の補償だけでいいのではないか?
教育的配慮を含めて、社会的に相当な著作権行使のあり方ということを検討することも必要ではないか、
そのように思うのである。

参考記事
試験問題と著作権
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050412/1113239591
続 入試問題と著作権
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050427/1114595604
続 入試問題と著作権(2)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050430/1114792306
続 入試問題と著作権(3)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050506/1115325314
国語テストで消える長文は誰のせい?
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050926/1127672137