放送と著作権

著作権手続きを簡素に 知財戦略本部、法改正提言
 政府の知的財産戦略本部は2日、インターネット経由でテレビ番組を放映する場合に、歌手や俳優らの著作権者に事前に利用許諾を求めていた手続きをテレビ放送並みに簡素化するよう、著作権法の改正が必要との提言をまとめた。
 ネット上の番組流通を促進させるのが狙いで、実現すれば通信と放送の融合に弾みがつく。ただ、著作権者らとの調整が必要なほか、技術的には在京のテレビ局などが番組を直接提供することも可能になるため、ケーブルテレビ(CATV)局や地方のテレビ局の経営を直撃する恐れもあり、反発も予想される。
 現在の著作権法では、光ファイバーなどを利用して家庭のテレビに番組を提供するIPマルチキャスト放送などは、事前に著作権者から了解を得る必要がある。提言はテレビ放送やCATVと同様に、放送後に著作権料を支払えば済むよう改正を求めている。
共同通信) - 2月2日21時29分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060202-00000245-kyodo-bus_all

テレビとネットの融合という文脈で、著作権法の改正論が主張されている。
しかし、このことにどれだけの意義があるのか、実はよくわからない。
すでにテレビドラマのビデオ化なんてことやっているわけで、放送権処理とは別個の権利処理はきちんとしているわけです。
同じように、放送権処理とは別個の権利処理をすればいいだけのこと。
もちろん、過去にものについては、権利処理が必要になりますし、
また、権利者が、複製頒布は許諾しても、公衆送信は許諾しないということはあるでしょうが、
だからネットとの融合ができないというのは、テレビ局の著作権否定論でしょう。
そうなると、この改正論の意義は、(テレビ)放送の場合には簡易な権利クリア制度があり、
ネットでもそれを使いたいということにつきる。


では、そもそも、なぜ放送は著作権法上優遇されているのだろうか。
もしかしたら、それがテレビ放送が視聴者の知る権利に奉仕するからなどいう高尚なことを言うこともあるかもしれないが、
そんなことは放送に限ったことではなく、
おそらく単に制定当時の放送局の議員への働きかけによるものにすぎないように思うのである。
煩雑さのために利用が進まないとういのであれば、何もテレビ局だけを優遇する理由はない。
そもそも非営利的な利用でさえ、限定的な権利制限であるのに、
営利的なテレビ放送が権利処理を緩和されるというのは、非常にバランスが悪いように思うのである。
(もっといえば、試験問題の著作権問題なんかでも使える政策である。)
著作権が、財産権であることを考えると、まさに営利利用こそ、きちんと権利処理されるべき場面ではないかと思うのです。
まあ今のところ、制限されているのが隣接権だけなのがせめても救いであるが…。


このような優遇制度の中にテレビ局がいるのに、
一方で利用主体性を転換したり、間接侵害を主張して、権利侵害を主張したりしている現状をみると、
著作権っていったいなんなんだ?と思ってしまいます。