著作権違反での逮捕事例

著作権法違反での逮捕(刑事事件との著作権法違反)というのは、海賊版事例が多いと思いますが、こんな事件がありました。

老舗ライブハウス摘発=一度も著作権料払わず−逮捕の経営者「まさか」・名古屋
 著作権料を払わずにライブハウスで米国の人気バンドの曲などを生演奏させたとして、愛知県警生活経済課と中署は7日、著作権法違反の疑いで名古屋市中区大須、同店経営田中まり子容疑者(45)を逮捕した。
 田中容疑者は「安易に考えていた。まさか逮捕されるとは思わなかった」と話しているという。
 調べによると、田中容疑者は昨年7月29日夜、経営する中区錦のモータウンクラブ「ボイス」で、社団法人日本音楽著作権協会の許諾を得ずに米国人のバンドにアース・ウィンド&ファイアーの「セプテンバー」など12曲を生演奏させた疑い。 
時事通信) - 2月7日19時1分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060207-00000109-jij-soci

著作権侵害は、海賊版すなわち複製権侵害とか、公衆送信(送信可能化)権侵害とかが多いと思うのですが、
演奏圏侵害で逮捕ということのようです。
民事判決同様に、侵害主体がライブハウスということでしょうか。
「安易に考えていた」というのが具体的にどのような行動に現れていたのかわかりませんが、
よほど悪質と考えられたのでしょうか?
読売の地方記事で少し詳しくありますね。

著作権料払わず生演奏 ライブハウス経営者逮捕 愛知県警容疑で
 著作権料を払わずにライブハウスで米国人気バンドなどの曲を生演奏させたとして、愛知県警中署などは7日、名古屋市中区大須、ライブハウス経営田中まり子容疑者(45)を著作権法違反の疑いで逮捕した。
 調べによると、田中容疑者と同容疑者が社長の「ワールド・コーポレーション」は昨年7月29日夜、経営する同市中区錦3のライブハウス「ボイス」で、日本音楽著作権協会の許可を受けずに、アース・ウインド&ファイアースティービー・ワンダーなどの12曲を米国人のバンドグループに生演奏させた疑い。
 同店は1993年11月の営業当初から生演奏をしており、同協会は一昨年までに延べ15回にわたって警告や計約1500万円の支払いを督促していた。田中容疑者はこれに応じず、2004年11月には名古屋地裁が演奏停止の仮処分を決定。同協会は昨年9月、中署に告訴していた。
 田中容疑者は「まさか逮捕されるとは思わなかった」と供述しているという。同協会中部支部は「キャバレー全盛の昭和40年代ごろまでは、生演奏での摘発があったが、最近では珍しい」としている。
(2006年2月8日 読売新聞)
http://chubu.yomiuri.co.jp/news_top/060208_3.htm

1500万円という額、仮処分の存在がJASRACの告訴の基準ということでしょうか。
「まさか逮捕されるとは思わなかった」というのは、筆者もこの記事にびっくりしましたが、
よほど逮捕されないとタカをくくって、悪態をついていたということなのかもしれません。


先日のダイヤモンドの記事であったような取り立て事例で、告訴という手段をとるのかどうかわかりませんが、
払うことを前提に話し合い中に告訴することは多分ないようには思います(希望的観測)。
ただ、話し合いそのものを頑に拒んだり、支払い能力があるのに支払いを拒んだりしたような場合には、
同様の手段に訴えるかもしれません。
「「キャバレー全盛の昭和40年代ごろまでは、生演奏での摘発があったが、最近では珍しい」」というのは、
現行著作権法の施行と関係あるのか、JASRACの仕事ぶりと関係あるのか、ということを調べるのもおもしろそうですが。
それなりに、権利意識が確立し、悪質事例が減ったためかもしれません。


記事を読む限り、刑事事件への発展は当然のように思います。
もしかしたら、今回の告訴は支払いに抵抗している一部事業者への警告の意味もあるのかもしれませんが、
純粋に事案としては、お店が悪いように思います。
著作物を利用してご飯を食べているんだったら、その利用料を支払うべきでしょう。
ただ、(JASRACの意図ではないでしょうが、)逮捕の必要があったかというとかなり微妙で、
実態のよくわからない海賊版事例とは異なり、逮捕の必要性もどれだけあるのかよくわかりませんし。
ただ、警察や裁判所の判断が妥当なものであることを前提にすれば、
身柄拘束しないといけないくらい悪質だったともいえそうです。


これにビビって(納得いかないまま)支払う必要はないと思いますが、
著作権料を払わなくてもいいという意味ではありません。)
開き直ってしまうとこのようになる恐れもあるので、
権利侵害の事実は否定できないものについては、誠実にJASRACと話し合いましょう。
特に営利利用者については、他人の著作物を利用して、自分が儲けている訳ですから、
その点はきちんと理解した上で、著作物を利用するべきでしょう。