パブリシティ権について

<無断投稿写真>モー娘らへの賠償額増額の判決 東京高裁
 通学中の制服姿などを雑誌に無断掲載されたとして「モーニング娘。」メンバーら女性タレント15人が、出版元の「コアマガジン」(東京都豊島区)側に賠償を求めた訴訟の控訴審で、東京高裁は26日、10人分計516万円の賠償を認めた東京地裁判決(04年7月)を変更し、15人分計896万円の賠償を命じた。雛形要松裁判長は、1審が認めたプライバシー権に加え、1審が認めなかったパブリシティー権も侵害していると判断し、賠償の範囲を拡大した。
 タレント側代理人弁護士によると、出版物におけるパブリシティー権を認めた初の高裁判決。
 問題となったのは02年6月発売の「ブブカスペシャル7」。通学中の様子や実家の最寄り駅▽芸能人になる前の小学生時代▽読者の投稿などの写真を掲載した。パブリシティー権は、顧客を引きつける著名人の氏名や肖像を商業目的で使う際、本人の独占的利用を認める財産的権利。判決は「雑誌の利益を得る目的で、原告に無断で写真を掲載しており違法」としてパブリシティー権の侵害を認めた。【高倉友彰】
毎日新聞) - 4月26日23時25分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060426-00000142-mai-soci

まだ判決文がアップされていないので(というかアップされるかも未定だが)、記事を前提もとに少し。
まず記事中「東京地裁判決(04年7月)」というのは、東京地判平成16年7月14日判時1879号71頁(裁判所ホームページ未搭載)。
次に、「タレント側代理人弁護士によると、出版物におけるパブリシティー権を認めた初の高裁判決。」という点。
この点、東京高判平成3年9月26日判時1400号3頁(おニャン子クラブ事件)が、
手元に判決文がないので引用になるが、渋谷達紀「54 芸能人とパブリシティ権ーおにゃん子クラブ事件」メディア判例百選(別冊ジュリスト179)110-111頁には、「本件は、周知の芸能人の氏名・肖像のもつ顧客誘因力に専ら依存して作成されたカレンダーの販売行為について、パブリシティ権の侵害を理由として差止を認め、
不法行為を理由として損害賠償請求を認めた事例」と紹介されている。
もっとも、「判旨は、パブリシティ権という言葉を用いているわけではないが、判旨のいう「顧客誘因力のもつ経済的な利益ないし価値を排他的に支配する財産的権利」とは、
パブリシティ権のことにほかならない」。
ただ、そうだとすれば、カレンダーとはいえ出版物であるから、「出版物におけるパブリシティー権を認めた初の高裁判決」というからには、
本判決は、「パブリシティ権」という言葉を用いたということか。


なお、地裁判決で「パブリシティ権」を認めたものとして、東京地判平成10年1月21日判時1644号141頁(キングクリムゾン判決)。
http://www.sekidou.com/articles/cases/tdh100121.shtml
ただし、控訴審(東京高判平11年2月24日)は侵害否定。
http://www.sekidou.com/articles/cases/thh110224.shtml


また、馬名のパブリシティ権を認めたものとして、名古屋高判平成13年3月8日
http://www.netlaw.co.jp/hanrei/gallop_2.html
上告審判決原審認定も参照。
http://www.u-pat.com/h-8.html
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=25136&hanreiKbn=01


と、ここまでとりあえず力つきたので、判決文がアップされれば、
「雑誌の利益を得る目的で、原告に無断で写真を掲載しており違法」という部分について考察できればと思う。