「訴状見ていないので、コメントできない」ではないコメント

提訴報道における被告側コメントの多くは、「訴状見ていないので、コメントできない」というにとどまるものが多い。
正直そのことを報じるだけ無駄ではないかと思うくらいその趣旨のコメントである。
しかし、この考えを改めさせるコメントがあった。
東京大学浜田副学長のコメントである。

懲戒解雇撤回求め東大を提訴 論文不正疑惑の多比良氏
2007年03月02日19時53分
 信頼性のない論文を発表したとして東京大学教授を懲戒解雇された多比良和誠氏が2日、解雇は不当として同大を相手取って地位確認と未払い賃金の支払いを求める訴えを東京地裁に起こした。会見した多比良氏は、助手が行った実験に大きな疑義があるとし、「監督責任で懲戒解雇された事例は国内外でもほとんどないと聞く。処分は納得できない」と話した。
 多比良氏は、専門誌に載せた論文の実験データが再現できないと指摘され、調査した東大が昨年12月、論文の捏造(ねつぞう)は断定しないまま「大学の名誉または信用を著しく傷つけた」などとして助手とともに懲戒解雇した。
 弁護団によると、訴状は懲戒解雇について▽実験データはグループミーティングで討議している▽担当の元助手は博士号を持ち、研究をまかせるのは自然▽東大の他の処分例や、他大学での論文不正の処分例と比べて、あまりにも重い――などと主張。
 浜田純一・東京大副学長の話 訴状の内容を検討して、対応したい。いずれにしても、東京大学としては、大学人の基本である研究者倫理の大切さを訴えていきたい。
http://www.asahi.com/national/update/0302/TKY200703020314.html

浜田純一氏といえば、東大のメディア学(この言い方が正しいかは不明)の先生だ。
http://www.hamada.isics.u-tokyo.ac.jp/faculty/profile/hamada.html
日頃から「コメントできない」といったコメントに疑問を感じているのかどうかわからないが、
浜田純一氏があえてコメントしたことについて、どういう考えのがあるのか気になるところではある。
たしかに、訴状をみない限り、訴訟そのものについては何ともコメントできないだろう。
しかし、どういう事項についての訴訟のなのかは、コメントを求められた際にある程度の判別はつく。
よほど不意に訴訟が提起されたような場合でない限り、何らかのコメントは可能ではないはないかと思うのである。
もちろん、不用意なコメントをすると、訴訟に影響を与えかないという判断もあるだろう。
しかし、一方的に原告の主張だけを報道させておくのもバランスが悪い。
それだけでなく何か不都合があるのではないかと、勘ぐられることもあるかもしれない。
せっかく被告のコメントが求められているのだから、なんらかのコメントがあってもいいと思うのである。
そんなことを考えた報道であった。