痴漢でっちあげ?

まずは、この記事。

痴漢でっち上げ、女は泣き崩れる演技も
 大阪府警阿倍野署は11日、交際中の女(31)と組んで痴漢事件をでっち上げ、会社員男性を警察に引き渡したとして虚偽告訴の疑いで、京都市山科区北花山寺内町、甲南大4年蒔田文幸容疑者(24)を逮捕した。
 女が阿倍野署に「(蒔田容疑者から)痴漢事件を装い、示談金を取ろうと持ち掛けられてやった」と自首して発覚した。同署は女も立件する方針で、余罪も追及する。蒔田容疑者は「弁護士が来ないと話さない」と供述しているという。
 調べでは、蒔田容疑者は2月1日午後8時半ごろ、大阪市営地下鉄御堂筋線に女と乗車。堺市の会社員の男性(58)に近づき、目撃者を装って「尻を触っただろう」とうそをついて天王寺駅で取り押さえ、阿倍野署に引き渡した疑い。女は車内で泣き崩れる演技をしたという。
 男性は否認したが、女が被害届を出し、蒔田容疑者も「痴漢を見た」と証言。このため阿倍野署は府迷惑防止条例違反の現行犯で男性を逮捕した。しかし、当時の状況について蒔田容疑者と女の説明が食い違ったことなどから虚偽と分かり、2日夕に釈放した。
 阿倍野署は「手続き上、民間人による逮捕で、警察の誤認逮捕には当たらない」としている。女は2月7日に「申し訳ないことをした」と自首した。
 [2008年3月11日20時17分]
http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp0-20080311-334288.html

交際の女と痴漢被害でっち上げ…虚偽告訴容疑で大学生逮捕
3月11日22時34分配信 読売新聞
 地下鉄の車内でうその痴漢被害を申告したとして、大阪府警阿倍野署は11日、京都市山科区北花山寺内町、甲南大法学部4年、蒔田文幸容疑者(24)を虚偽告訴の疑いで逮捕した。
(略)
 蒔田容疑者は女性を知らないように装っていた。
 男性は蒔田容疑者らに天王寺駅の駅長室で同署員に引き渡され、府迷惑防止条例違反の現行犯で逮捕されたが、否認。同署は3人の供述や証言が食い違うなどしたため、約22時間後、男性を釈放した。
最終更新:3月11日22時34分
読売新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080311-00000064-yom-soci

両方の記事をあわせて結構わかる感じがします。
さて、実際被疑者が釈放されてますし、この女性が真実痴漢被害者なのにカレをでっちあげなんてことはないと思いますが、
蒔田被疑者が自白しているわけでもないですし、あくまでも記事を前提に。


日刊スポーツの報道によれば、手続上、民間人による逮捕となっているようです。
それにもかかわらず警察官が逮捕したかのような報道は正確性を欠きますね。
もし私人逮捕だとすれば、虚偽告訴だけでなく、逮捕罪でも立件する必要がありそうです。
この点、虚偽告訴の方が法定刑が大きいので、科刑上の実益はなさそうですが…。
事実とすれば、併合罪加重して、15年の実刑ってのも感情的に悪くないと思いますが…。
ちなみに、虚偽告訴については、自白による刑の減免がありそうですが、
自首といえるのかどうかは、被疑者が虚偽とわかったあとなのでどうなんでしょうね。


また、逮捕自体は私人だから誤認逮捕ではないといっても、引き渡しを受けたあと、
そのまま釈放せずに22時間“も”(被疑者にとっては)拘束したのですから、その点の問題は残ります。
(結局逮捕を継続しているわけで、誤認逮捕というかどうかは言葉の問題でしょう。)
私人逮捕の場合、警察官自身がなんら直接犯行の事実も、犯人と被疑者の同一性の確認もないわけですから、
身柄拘束を維持するには慎重な判断が必要でしょう。
三者の目撃証言として申告されたので(客観的に知り合いを伺わせる事情もないですし)、
ある程度やむをえない点もあるかもしれませんが、どの時点で食い違いが生じていたのかも問題となりそうです。
場合によっては、22時間で気づいたことは評価すべきかもしれませんが、今後への課題は残りそうです。


なお、この被疑者は法学部の学生ということもあって、黙秘権行使、弁護人選任権を行使しているようです。
これらは憲法上認められた権利なので、行使すること自体は否定しませんが、
仮に事実とすれば、黙秘権の行使はそれだけで不利にはならないというだけで、
行使せずに反省を示す人の方が、情状はよくなる(加点される)のは反省している以上当然のことなので、
もし事実とすれば、とりあえずあやまるだけあやまっておいた上で詳しくは弁護士がきてからにさせてください、
といった感じの方が、少なくとも私には印象がいいですが、裁判官にはどうかはわかりません。


これで証言が一致していると恐ろしい気がします。
本件では、被疑者が争って、被害者と目撃者の関係が発覚すれば、裁判段階でのえん罪は防げたと思いますが…。

刑法(明治四十年四月二十四日法律第四十五号)
   第二十一章 虚偽告訴の罪
(虚偽告訴等)
第百七十二条  人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、三月以上十年以下の懲役に処する。
(自白による刑の減免)
第百七十三条  前条の罪を犯した者が、その申告をした事件について、その裁判が確定する前又は懲戒処分が行われる前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。
   第三十一章 逮捕及び監禁の罪
(逮捕及び監禁)
第二百二十条  不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%8c%59%96%40&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=M40HO045&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1

なお、思い込みによる誤認逮捕については、
http://www.rikkyo.ne.jp/univ/araki/naraki/gyouseki/mini/atsumi.htm