創造サイクルとは何か?

創造サイクルというとき、2つの考え方ができる。
1つは、者を中心にした考え方である。
「知的創造サイクル」ということばは、この考え方に基づいて一般的に使われているようである。
ある人が、知的創造をし、それを活用して、新たな創造に活かすということである。
もう1つは、物を中心にした考え方である。
創作者が誰であれ、創作物を活用して新たな創作物を創造するということである。
知的財産権(商標を除く)に保護期間があるのは、この点に着目した制度ということになろう。
このことは、以前に著作権法は活動継続や投下資本の回収を保障しているのか? - 言いたい放題ということを思ったこととも関連する。
活動継続や投下資本の回収を保障は、まさに「者」が創造すること重視して、その結果、よい物が生まれるという考え方になる。
これに対して、新たな「物」の創造を考える時には、いろんな人にいろんな機会を与えることで1つの創造が様々な創造を生むということになる。
「者」に注目すると、創造は「者」に支配される。他方、「物」に注目すると、創造は「者」への支配から解放すべきことになる。
おそらく、「者」に支配されない創造環境を創ることが、様々な「物」を生み出すことには違いない。
他方で、経済活動として創作活動する場合には、「者」に着目した保障状態が要求される。
ただ、市場経済のもとにおいて、「者」のもつ「物」の財産的価値をどう活かすかは本来的には「者」が考え、コントロールすべきことである。
そのことを前提とした上で、「者」のその負担を一定の政策のもと、どう「者」の「物」創造に活かすことで、政策目的を達成するかということになる。
ここにきてはじめて、「者」の創造サイクルが出てくるのである。
ただ、「者」の活動を図るために、「物」の保護を与えることは、他方で「物」に着目したサイクルは減退することになる。
現在の意見の対立は、このサイクルの捉え方に違いがあると思われるが、
著作権の本質はどちらであるのか、両者のバランスをどのように図るべきか、ということをよく考えて、議論していく必要があると思う。