大学入試センター試験施行

昨日、今日と大学入試センター試験が行われている。
そして、今朝の朝刊には昨日の主な試験の解答の他、問題も掲載されている新聞がある。
しかし、試験問題にも著作物性があるので、それを利用するには著作権の問題が生じうる。
したがって、大学入試センター試験の問題を掲載するには、権利者の許諾をえる必要があるということになる。

この点、入学試験問題については一般に著作権が問題とならない、という主張もある。
しかし、立法論としてはともかく、現行法上、一般に入試問題には著作権は問題とならないと解するには、
困難があるように思われる。
また、試験問題を解説するような場合に、「引用」として認められてもいい場合もあるのではないか?とも思えるが、
解説集では議論の余地があるにしても、新聞掲載については問題と解答を掲載しているだけであるので、
「引用」という余地はない。
さらに、41条の時事の事件の報道といえるかも問題となるが、問題文そのものを複製して報道する意味はないと思われる。
(これが許されれば、著作物出版のニュースとして利用が許されかねない。)
以上のことからすれば、入学試験問題を権利者の許諾なく掲載することはできない、ということになる。


では、権利者の許諾を得れば掲載は問題なく行えるか、というとそうではない。
その試験問題が他の著作物を利用していない著作物であれば問題ないが、
他の著作物を利用している場合(特に、国語や外国語)については、その利用された著作物の権利者の許諾が問題となる。
試験実施主体が試験問題について、試験実施に必要な限りで利用することは36条により著作者の権利が制限されるが、
それをこえる場合にまで権利が制限されるとは解されないからである。
よって、独立行政法人大学入試センターが試験問題をホームページで掲載(http://www.dnc.ac.jp/old_data/mondai_seikai.html)しているが、
これは、利用された著作物の著作者の公衆送信権の権利侵害となりうる。
この点、平成15年改正(平成16年1月1日施行)で試験利用での複製以外に公衆送信も認められたが、
これは、インターネットを介した試験実施に対応するための改正であって、
事後に問題を掲載するような場合は「目的上必要」とはいえず、含まれない。
大学入試センターは必要な許諾をえたうえで掲載しているということになろう。


新聞への試験問題の掲載際に著作権に関して、どのようなことが行われているのか知らないが、
一晩のうちに掲載していることからすれば、適切な著作権処理をしているというには、疑問が残る。


ところで、試験問題のインターネットでの公表は、同じく大学入試センター実施の法科大学院の適正試験や、
司法試験、弁理士試験でも行われている。
これらの試験を公表する、特に後に者については国家試験であって、公表することに意義があるといえるが、
だからといって公表に際して、当然にこれを認める権利制限規定はない。
現実に問題視する声が現状でないだろうが、法律職にかかわるものに関する試験の扱いが
これであっていいとは思わない。立法論として対処する必要があるように思われる。