安倍氏の言い分

参考人招致には応じず NHK改編問題で安倍氏
 自民党安倍晋三幹事長代理は16日、フジテレビなどの番組で、NHKの従軍慰安婦特集番組改編問題について「国会で説明するような話ではなく、事実が全く違う。参考人に出ることで予算案(審議)の引き延ばしに使われる」と述べ、野党側が国会への参考人招致を求めても応じない考えを示した。
 また、番組放送前日の2001年1月29日にNHK幹部と面会したことに関し「放送法は、議論がある問題は多角的に論じなくてはならないとしている。意見を求められて『公正公平に』と放送法にのっとったことを言うのは当然だ」と強調した。
 これに関連して、民主党岡田克也代表はフジテレビの番組で「国会では当然、問題にしないといけない」と通常国会でNHK問題を取り上げる考えを示しながらも、安倍氏らの招致に関しては「何でもかんでも政治家を国会に呼ぶのは政略的な感じがする」と慎重に判断する考えを示した。
共同通信) - 1月16日12時43分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050116-00000035-kyodo-pol

今回はこの言い分を前提に進めよう。
まず、何度も言うが、NHK幹部は内閣の人間に意見を求めたらしい。これは誤りである。
次に、意見を求められた安倍氏の返答である。
確かに、「放送法は、議論がある問題は多角的に論じなくてはならないとしている。」(放送法3条の2、1項4号)

放送法(抄)(昭和25年法律第132号)
第一章の二 放送番組の編集等に関する通則
(放送番組編集の自由)
第三条  放送番組は、法律に定める権限に基く場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。
(昭六三法二九・追加)
(国内放送の放送番組の編集等)
第三条の二  放送事業者は、国内放送の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
  一  公安及び善良な風俗を害しないこと。
  二  政治的に公平であること。
  三  報道は事実をまげないですること。
  四  意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
 2  放送事業者は、テレビジョン放送による国内放送の放送番組の編集に当たつては、特別な事業計画によるものを除くほか、教養番組又は教育番組並びに報道番組及び娯楽番組を設け、放送番組の相互の間の調和を保つようにしなければならない。
 3  放送事業者は、国内放送の教育番組の編集及び放送に当たつては、その放送の対象とする者が明確で、内容がその者に有益適切であり、組織的かつ継続的であるようにするとともに、その放送の計画及び内容をあらかじめ公衆が知ることができるようにしなければならない。この場合において、当該番組が学校向けのものであるときは、その内容が学校教育に関する法令の定める教育課程の基準に準拠するようにしなければならない。
 4  放送事業者は、テレビジョン放送による国内放送の放送番組の編集に当たつては、静止し、又は移動する事物の瞬間的影像を視覚障害者に対して説明するための音声その他の音響を聴くことができる放送番組及び音声その他の音響を聴覚障害者に対して説明するための文字又は図形を見ることができる放送番組をできる限り多く設けるようにしなければならない。
(昭六三法二九・平二法五四・平六法七四・平九法五八・一部改正)
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/japanese/laws/broad1b_rev98.html
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/japanese/laws/broadindex.html

しかしだからといって、
「意見を求められて『公正公平に』と放送法にのっとったことを言うのは当然」かというと
当然です、ということはできない。
ここまで要求するのは酷という意見もあろうが、答えを避けるべきであったと思う。
「私に聞かれても困る」「私がここで意見するべきことではない」などと答えるべきであったのである。
一年生議員や民間大臣出身大臣ならやりかねないが、
安倍氏ほどの政治家がそのような思考をもたなかったことにむしろ疑問を感じる。
さらにいえば、「公正公平に」と発言したとしても、それがどのような意味をもたらすのかは文脈による。
特に特定の内容の話をした場合に、公正公平でないものを、
「公正公平に」是正しなさいという意味にもなりうるのである。
私は、「公正公平」といってしまった時点で、本当に他意はなかったとしても、安倍氏の失敗であったと思う。
「意見を求められて『公正公平に』と放送法にのっとったことを言うのは当然」である以上に、
政治家はNHKからその放送内容に距離をおいていなければならないのである。
NHKにはめられた感はあるにせよ、報道の自由に対する意識が低かったことには違いなく、
そのような発言をしてしまったことを反省するべきなのである。
もちろん、報道の自由の担い手であり政府と距離をおくべき幹部が
内容について意見を求めたことの不適切さは問題外の言動と言わざるをえない。