(株)クロムサイズ「選撮見録」事件

http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050122#p1の続報



「選撮見録」に対する民放5社からの裁判提起について(平成17年1月24日)
http://www.cyz.co.jp/html/new006.html

この度の裁判提起に関して、民放5社が主張する著作権等侵害の具体的な内容・理由につきましては、これまでに民放5社から弊社側に提示されたことがなく、今のところ全く不明な状況でございます。
 また、この度の裁判提起に先立ち、弊社から民放5社に対し、著作権等侵害の疑義を解き円満な解決が得られるよう、「選撮見録」の技術開示を含めた十分な説明と協議の申し入れを行ったにもかかわらず、お聞き入れ頂けずに裁判提起となったことは誠に遺憾と言わざるを得ません。

クロムサイズさんには悪いけど、これがsonyとか
panasonicとかだったら、こんなにすぐには裁判していなかったんだろうな、と思う。
言っても、いきなりスポンサーとはやり合いたくないだろうし…。

今後の対応につきましては、訴状ないし申立書を見てから検討したいと考えますが、著作権等の侵害はないという弊社の主張が認められるよう万全の準備で裁判に臨む所存です。

訴状が届いたら、pdfにでもしてアップしてくれるとうれしいですね。
必ずしも援護射撃がくるとは限りませんが…。


ついでなので、前回の補足。
複製主体が各戸利用者あるとしても、30条1項1号の問題がある。
「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、
これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合」には
私的使用目的の複製ができないからである。
(ちなみに、文書図画の複製つまりコンビニコピーなどは附則5条の2で適用除外。)


この点、著作権法上の「公衆」とは、特定多数も含まれる。(2条5項)。
すなわち、システムを多数で共有すると、
「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器」にあたるのではないかという問題である。
この点、まず機器の所有者にもこの適用があるのか、ということが問題となる。
文言上区別されておらず「自己が所有しているか…を問わ」ない(加戸守行『著作権法逐条講義四訂新版』228頁 著作権情報センター,2003)との見解もある。
しかし、私的使用目的の複製が許容されているのに、自己の所有物での複製を禁ずると解するのでは、
あまりにも行動の自由を制限するように思われる。
それが公衆が使用するものであっても、所有者自身の複製による権利侵害性は異ならない。
所有者自身の私的使用目的の複製まで制限すると解すべきではないように思われる。
そして、このことは共有であっても原則としては異ならない。
共有者も共有物を持分に応じて使えるのである。
もっとも、共有者が増えると、権利者を害するおそれは単独所有より増えることになる。
したがって、共有人数が増えると、なお「公衆」として本号を適用されうると解するべきであろう。
(そうでないと、複製機器利用の団体をつくって持分をわって会員になれば事何人でも複製できることになる。)
そこで、公衆にあたるかを検討すると、まず、共有者については「特定」といってよいように思われる。
では、「多数」かどうかはどのように解するべきか。
この点、「多数」性は相対的になされるべきといわれる。(前掲・加戸『著作権法逐条講義』70頁)
公衆性が問題となる場面は様々であるから、かかる見解は妥当である。
そして、「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器」での「公衆」の特定「多数」性は、
「自動複製機器」をどの程度の複数人で使用するのが合理的かという観点から検討しつつ、
さらに共有者である場合には、共有の合理性も考慮の要素に含めるつつ、共有関係がない場合よりは緩やかいに解してよいだろう。
自動複製機器の価格や維持コストの問題や共有であることの必然性などから判断すうるべきである。
たとえば、1台1万円のビデオデッキを10人で共有は多数だが、
1台100万円でメンテナンスに月1万かかるものなら、特定100人でもなお少数であってよいように思う。
本事例でのこれらの要素はよくわからないので、具体的な検討は差し控えるが、ここか最大の争点のように思われる。
(逆にいえば、私の認識している事実を前提にすれば、ここ以外ではクロムサイズがまけることはないと思うし、
 あってはいけないと思う。)


参考文献

著作権法逐条講義

著作権法逐条講義