NHK戦争特集番組改変問題での番組検証

改変問題の番組ビデオ、NHKが市民集会での上映拒否
 NHKの戦争特集番組改変問題で、番組の取材に協力した市民団体「『戦争と女性への暴力』日本ネットワーク」は5日、東京大学で開く集会で予定していた同番組(40分)のビデオ上映を中止した。
 同ネットワークによると、NHKの許可が得られなかったため。NHK広報局では「上映許諾の申し入れを受けたが、不特定多数の人が見る場での上映は、著作権法上、問題がある」としている。
(読売新聞) - 2月5日14時49分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050205-00000405-yom-soci

NHK広報局は「上映許諾の申し入れを受けたが、不特定多数の人が見る場での上映は、
著作権法上、問題がある」としたらしいが、
NHKは同番組の利用許諾権者ではないということなのだろうか?
許諾しうる者が、「著作権法上、問題がある」つまり、許諾したいが法律上できない、というのは
ないのである。
推測になるが、同番組はドキュメンタリーあるので、実演家の権利は問題にならないと思われる。
とするならば、著作権者と隣接権者であるNHKの許諾ということになる。
ただ、ここで隣接権者であるNHKが、法律上許諾できないと言うことには絶対にならない。
法律上の障害ではなく、許諾したくない、ということにすぎないのである。
とすれば、あとは著作権者である。
ネット情報をまとめると製作は「NHKエンタープライズ21」らしい。
http://www.nep21.co.jp/index2.html
著作権者は「NHKエンタープライズ21」だからNHKでは許諾できないということでいいのだろうか?
ただ、関連企業なので、関係ないから許諾できないという取扱いはどうかと思いますが…。
http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/giji/g983.html
ただ、利用許諾への制度の問題はともかく、
著作権者が「NHKエンタープライズ21」であるならば、「著作権法上、問題がある」という答えで
問題ないということになると思われます。


ついでなので、この場で少し著作権法を整理しておきたいと思います。
まず、当該作品の録画は私的使用目的でのみ許されます。
ただ、この市民団体が録画したという場合の判断は厳密言えば微妙になります。
さらに、仮に私的使用目的であっても、それを上映するのは、目的外使用といえるでしょう。
この点、非営利無料上映の例外規定があります。
どうもこの規定の構成もわかりにくいのですが、
公表された著作物をその媒体のまま上映する場合、
もしくは、適法に複製された複製物をその目的の範囲内において使用する場合に
限られると読むとされているようです。
必ずしもそのように解釈するのが妥当かどうかは別論ですが、
一般的に許諾なく上映することはできないという結論になるようです。

追記挿入(2005.2.6)
上記記述につき、下記URLにて訂正しました。
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050206#1107701624


ただ、そのため放送番組を事後的に検証することができなくなってるのも事実です。
そのことの必要性を訴える人もいるようです。

テレビ報道の正しい見方 (PHP新書)

テレビ報道の正しい見方 (PHP新書)

今回の問題の番組がどのように評価されるのか?ということは、
放送のあり方として別途問われてもいいように思いますし、報道局側も積極的にとりくむべきでしょう。
そのような意味での再放送するのもいいと思います。
ある種結論ありきの団体の上映会で上映するよりNHKにとってもいいはずですし、
報道番組の検証という点においても改革されていって欲しいように思います。