ライブドアvsフジテレビ〜ニッポン放送をめぐる攻防〜


まずは、関連リンク集。

関連リンク


○株価(日経サイト)
 ニッポン放送東証2部):http://company.nikkei.co.jp/index.cfm?scode=4660
 フジテレビ(東証1部):http://company.nikkei.co.jp/index.cfm?scode=4676
 ライブドア東証マザーズ):http://company.nikkei.co.jp/index.cfm?scode=4753


フジテレビジョン関連
 2005/01/17 公開買付けの開始に関するお知らせ(19kb)
  →http://www.c-direct.ne.jp/japanese/uj/pdf/10104676/00029546.pdf
 2005/02/10 株式会社ニッポン放送株式の公開買付条件等の変更等のお知らせ (23kb)
  →http://www.c-direct.ne.jp/japanese/uj/pdf/10104676/00030305.pdf
 (http://www.c-direct.ne.jp/japanese/whatsnew/dj-whats.asp?GSCODE=10104676&HD=
ニッポン放送関連
 平成17年1月17日 公開買付けの賛同に関するお知らせ
  →http://www.jolf.co.jp/company/IR1242/PDF/2005_1_17j.pdf
 平成17年1月17日Notice of Approval of the Tender Offer for Shares of the Company
  →http://www.jolf.co.jp/company/IR1242/PDF/2005_1_17e.pdf
ライブドア関連
 平成17年2月8日 株式買付けに関するお知らせ
  →http://finance.livedoor.com/disclose/tmp/120800d0_20050208.pdf
 2005年02月08日社長日記「2/8(火) ニッポン放送株35%取得」
  →http://blog.livedoor.jp/takapon_jp/archives/13979790.html

いったいどうなっているの?ということで、法律の観点からみていきたいと思います。
といっても、ただの制度の観察です。記事の説明の根拠規定って何っていうそれだけです。
今後の展望とか、どっちがどうとかいうことは書いてないので、
そういうのを探してこられた方は、ここで切り上げて他所いってくださいね。


さて、なんにもないところから始めるのは辛いので、
毎日新聞社位川一郎さんの記事を参考にさせていただきます。

ニッポン放送株>事態が長期化の可能性も
【位川一郎】(毎日新聞) - 2月11日21時47分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050211-00000076-mai-bus_all

ネットだけでも、やる気になれば結構調べられるものですね。時間かかるけど…。

 フジテレビジョンライブドアによるニッポン放送株式の争奪戦は、フジが公開買い付け(TOB)の目標数を引き下げたのに対し、ライブドアがあくまで買い増していく姿勢を崩さず、正面から激突する構図になった。ニッポン放送株の上場廃止をにらんで事態が長期化する可能性も出てきた。

「公開買い付け(TOB)」って何?

不特定多数の者から、ある会社(有価証券報告書を提出しなければならない会社)の株券等を買い集めようとする者が、買付価格や買付けの期間等を公告する等、投資者保護の観点に立った所要の要件の下に、有価証券市場外において一定の株券等を買い集める行為をいいます。
なお、公開買付けの方法及び公開買付けに関する開示方法等については、証券取引法第27条の2〜第27条の22の4に、公開買付者等関係者の禁止行為は証券取引法第167条にそれぞれ規定されています。
東京証券取引所ホームページ「証券用語」より
http://www.tse.or.jp/glossary/gloss_k/tob.html

「取引所有価証券市場外取引」って?

証券会社は、取引所に上場されている株券、転換社債型新株予約権付社債券等について、顧客から取引所有価証券市場外で取引を行う旨の明確な指示を受けた場合に限り、自己が相手方となるか、同様の指示を行った顧客の注文と付け合わせることなどにより、取引所有価証券市場外で売買を成立させることができます。
ただし、取引所の売買立会時間中の取引については、取引の公正性等を確保する観点から、日本証券業協会の定める規則に従い、取引価格等に係る一定の制約が課せられています。
東京証券取引所ホームページ「証券用語」より
http://www.tse.or.jp/glossary/gloss_t/exchangemout.html

ということで、

証券取引法(昭和二十三年四月十三日法律第二十五号)
 第二章の二 公開買付けに関する開示
  第一節 発行者以外の者による株券等の公開買付け(第二十七条の二―第二十七条の二十二)
  第二節 発行者による上場株券等の公開買付け(第二十七条の二十二の二―第二十七条の二十二の四)
 第六章 有価証券の取引等に関する規制(第百五十七条―第百八十五条)
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%8f%d8%8c%94%8e%e6%88%f8%96%40&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=S23HO025&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1

あまりに長いのでここに転載はしません(できません)。
今回のフジテレビの場合は、発行者以外の者による株券等の公開買付けにあたります。

◆フジの“奇策”
 当初、ニッポン放送株の100%取得による完全子会社化を目指したフジが10日になってTOBの目標を「25%」に下げるという“奇策”に出たのは、ニッポン放送株の38%を握ったライブドアの力をそぐ狙いだ。
 株式を持ち合っている場合、25%超の株をフジが持つと、ニッポン放送保有するフジ株(保有比率22.5%)の議決権が失われる商法の規定に目を付けた。ニッポン放送の大株主であるライブドアの影響力がフジにまで及ぶのを阻止できる。
 もう一つが、ニッポン放送上場廃止。フジが25%超を買い付けると、ライブドアなどと合わせ上位10株主で80%超の株を保有することになり、東証上場廃止基準に抵触、1年後に上場廃止になる可能性が高い。上位10株主で90%超なら即、上場廃止だ。

さて、記事にもあるように、フジテレビはニッポン放送の株式を100%取得による完全子会社化を目指していた。
散逸する全株式を取得しようとは良く考えたな、とは思うが…。
ところで、ライブドアが取得した株式は、33.34%(1/3)を超える。
この1/3という数字は、株主総会で特別多数(2/3)を要する重要案件を否決できることを意味する。
(商法第343条1項)
たとえば、

商法(明治三十二年三月九日法律第四十八号)
第三百四十二条  定款ノ変更ヲ為スニハ株主総会ノ決議アルコトヲ要ス
○2 定款ノ変更ニ関スル議案ノ要領ハ第二百三十二条ニ定ムル通知ニ之ヲ記載又ハ記録スルコトヲ要ス
第三百四十三条  前条第一項ノ決議ハ総株主ノ議決権ノ過半数又ハ定款ニ定ムル議決権ノ数ヲ有スル株主出席シ其ノ議決権ノ三分ノ二以上ニ当ル多数ヲ以テ之ヲ為ス
○2 前項ノ決議ニ付テハ出席ヲ要スル株主ノ有スベキ議決権ノ数ハ定款ノ定ニ依ルモ之ヲ総株主ノ議決権ノ三分ノ一未満ニ下スコトヲ得ズ
第二百十四条  会社ハ第三百四十三条ニ定ムル決議ヲ以テ株式ノ併合ヲ為スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ取締役ハ株主総会ニ於テ株式ノ併合ヲ為スコトヲ必要トスル理由ヲ開示スルコトヲ要ス
○2 前項ノ場合ニ於ケル議案ノ要領ハ第二百三十二条ニ定ムル通知ニ之ヲ記載又ハ記録スルコトヲ要ス
○3 会社ハ第一項ノ決議ニ於テ併合ニ適スル株式ノ数ヲ記載シタル株券ハ会社ニ提出スルコトヲ要セザル旨ヲ定ムルコトヲ得
第二百四十五条  会社ガ左ノ行為ヲ為スニハ第三百四十三条ニ定ムル決議ニ依ルコトヲ要ス
一  営業ノ全部又ハ重要ナル一部ノ譲渡
二  営業全部ノ賃貸、其ノ経営ノ委任、他人ト営業上ノ損益全部ヲ共通ニスル契約其ノ他之ニ準ズル契約ノ締結、変更又ハ解約
三  他ノ会社ノ営業全部ノ譲受
○2 前項ノ行為ノ要領ハ第二百三十二条ニ定ムル通知ニ之ヲ記載又ハ記録スルコトヲ要ス
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%8f%a4%96%40&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=M32HO048&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1

上記に記載したもの以外にもたくさんあります。「第三百四十三条ニ定ムル決議」で検索するとよいかも。
さて、現在ニッポン放送は、フジテレビの株式を、記事によると「22.5%」有している。
つまり、ニッポン放送の株主であるライブドアは、同時にニッポン放送の支配を通じて、
フジテレビをも間接的にとはいえ、支配しうることになる。
しかし、フジテレビもまたニッポン放送の株式を有している。
そして、商法第241条は、

第二百四十一条  各株主ハ一株ニ付一個ノ議決権ヲ有ス但シ一単元ノ株式ノ数ヲ定メタル場合ニ於テハ一単元ノ株式ニ付一個ノ議決権ヲ有ス
○2 会社ハ其ノ有スル自己ノ株式ニ付テハ議決権ヲ有セズ
○3 会社、親会社及子会社又ハ子会社ガ他ノ株式会社ノ総株主ノ議決権ノ四分ノ一ヲ超ユル議決権又ハ他ノ有限会社ノ総社員ノ議決権ノ四分ノ一ヲ超ユル議決権ヲ有スル場合ニ於テハ其ノ株式会社又ハ有限会社ハ其ノ有スル会社又ハ親会社ノ株式ニ付テハ議決権ヲ有セズ
○4 第二百十一条ノ二第四項及第五項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス

と、規定しており、第3項が、
「会社…ガ他ノ株式会社ノ総株主ノ議決権ノ四分ノ一ヲ超ユル議決権…ヲ有スル場合ニ於テハ
 其ノ株式会社…ハ其ノ有スル会社…ノ株式ニ付テハ議決権ヲ有セズ」としている。
これにより、「会社」=フジテレビが、25%を超える「他ノ株式会社」=ニッポン放送の株式を取得すれば、
「其ノ株式会社」=ニッポン放送は、「其ノ有スル会社」=フジテレビの議決権を行使できないのである。
このような不利益を定めることによって、株式の相互保有をおさえようとする趣旨である。

リーガルマインド 会社法

リーガルマインド 会社法

の129-130頁参照。


さて、もう一つの上場廃止
東京証券取引所の諸規則は
http://www.tse.or.jp/guide/rule/index.html
また、上場廃止基準は
http://www.tse.or.jp/guide/rule/teikan/11.pdf
では、「フジが25%超を買い付けると、ライブドアなどと合わせ上位10株主で80%超の株を
保有することになり、東証上場廃止基準に抵触、1年後に上場廃止になる可能性が高い。
上位10株主で90%超なら即、上場廃止だ。」とはどういうことか。
東京証券取引所「株券上場廃止基準」によると、

株券上場廃止基準
(目的)
第1条当取引所に上場している株券、優先出資証券及び外国株預託証券上場廃止については、こ
の基準によるものとする。
上場廃止基準)
第2条上場銘柄(マザーズ上場銘柄を除く。以下この条において同じ。)が次の各号のいずれかに
該当する場合は、その上場を廃止するものとする。
(1) 上場株式数
<省略>
(2) 株式の分布状況
次のa又はbに該当する場合。ただし、当取引所が定めるところにより上場会社がaの(a)又
はbに定める期間の最終日後(aの(b)の場合にあっては、審査対象決算期の末日後)に行った
公募、売出し又は数量制限付分売の内容等を通知した場合の同日における株式の分布状況につい
ては、当取引所が定めるところにより取り扱うことができる。
a 少数特定者持株数が次の(a)又は(b)に該当する場合
(a) 少数特定者持株数が上場株式数の75%を超えている場合において、1か年以内に上場株
式数の75%以下とならないとき。
(b) 少数特定者持株数が上場株式数の90%を超えている場合であって、上場会社が当取引所
が定める日までに当取引所の定める公募、売出し又は数量制限付分売予定書を当取引所に提
出しないとき。
b 株主数が次の上場株式数の区分に従い、当該区分に定める人数に満たない場合において、1
か年以内に次の区分に定める人数に達しないとき。ただし、上場株券の最近の投資単位が10万
円以上50万円未満である場合にあっては、当該人数の2分の1の人数(400人を下限とする。)
に満たない場合において、1か年以内に当該人数の2分の1の人数(400人を下限とする。)に
達しないときとし、10万円未満である場合にあっては、400人に満たない場合において、1か年
以内に400人に達しないときとする。
(a) 上場株式数が1万単位未満の場合400人
(b) 上場株式数が1万単位以上2万単位未満の場合600人
(c) 上場株式数が2万単位以上の場合
上場株式数が3万単位未満の場合にあっては1,000人、上場株式数が3万単位以上12万単位
未満の場合にあっては1,000人に上場株式数2万単位から計算して上場株式数1万単位を増
すごとに100人を加えた人数、上場株式数が12万単位以上の場合にあっては2,000人
<以下、略>

と規定されている。ところで、「少数特定者持株数」とは、

大株主上位10名(明らかに固定的所有でないと認められる株式(優先出資を含む。以下同じ。)
を除き、所有株式数の多い順に10名の株主(優先出資者(優先出資法に規定する優先出資者を
いう。以下同じ。)を含む。以下この基準において同じ。)をいう。以下同じ。)及び特別利
害関係者(役員(役員持株会を含む。)、その配偶者及び二親等内の血族(以下「役員等」と
いう。)、役員等により総株主の議決権(総社員、総会員、総組合員又は総出資者の議決権を
含み、株式会社又は有限会社にあっては、商法第211条の2第4項に規定する種類の株式又は持
分に係る議決権を除き、同条第5項の規定により議決権を有するものとみなされる株式又は持
分に係る議決権を含む。以下同じ。)の過半数保有されている会社(会社以外の法人を含む。)
並びに関係会社及びその役員をいうものとする。以下同じ。)が所有する株式の総数に新規上
場申請者が所有する自己株式数を加えた株式数(以下「少数特定者持株数」という。)
「株券上場審査基準」第4条(上場審査基準)(2)より。
http://www.tse.or.jp/guide/rule/teikan/07.pdf

よくわからないので、まとめると、

大株主上位10名及び特別利害関係者(役員、その配偶者及び二親等内の血族、またそれらの者によって発行済株式総数等の過半数が所有されている会社、並びに新規上場申請会社の関係会社及びその役員)が所有する株式の総数に新規上場申請者が所有する自己株式数を加えた株式数であり、いわば市場で流通する可能性の低い株式数のことをいいます。株券上場審査基準では上場時に上場株式数に対する少数特定者持株数の比率を75%以下とすることが定められています。
東京証券取引所ホームページ「証券用語」より
http://www.tse.or.jp/glossary/gloss_s/shosu.html

となる。
「10株主で80%超の株を保有する」すると、a(a)に抵触、
「上位10株主で90%超」なら、a(b)に抵触するということになる。
上場公開する以上、少数特定者持株数で持ち合わないでね、ということであろうか。

◆株価の行方は
 今後の行方を占う大きな要素がニッポン放送の株価。ライブドアが35%を取得した8日以降に急騰、10日には一時8800円と、フジのTOB価格5950円を大きく上回っている。だが、フジが上場廃止を狙う作戦に出たことから、週明けに下落する可能性もある。
 筆頭株主(1月5日時点で18.6%)だったM&Aコンサルティング(通称「村上ファンド」)が持ち株を売却したか、保有しているのか不明だが、その動向も焦点だ。

ちなみに、M&Aコンサルティングのホームページは、http://www.maconsulting.co.jp/
同社のホームページには、

弊社の視点
株式会社M&Aコンサルティングは、必要に応じて経営改善に関する具体的な提案を行う等、株主価値向上のための積極的かつ直接的な働きかけを行っています。
■ 「上場」の意義
会社が株式公開する目的は第一義的には資金調達にあります。
そして公開した以上は、株主価値・企業価値を向上させる責任が経営者にはあります。
コーポレートガバナンスの実現による株主価値の向上
株主利益に基づいて企業統治(コーポレートガバナンス)を実現
させることで、当該企業の株主価値の向上を促していきます。会社資産のより有効な活用、事業の選択と集中企業統治構造の改善などの提案を必要に応じて行っています。
http://www.maconsulting.co.jp/page_j/kabu_1.html

とあります。現在の株価については、冒頭のリンク参照。


最後に、

上場廃止でも保有
 ライブドア堀江貴文社長はフジのTOBに応じず長期保有を明言しており、フジの狙う「ライブドアの排除」が短期的に実現する可能性は低い。
 ライブドアは、ニッポン放送への役員派遣や業務提携などの要求を強める構え。上場廃止になるにしても1年の時間があれば、過半数の株を取得して経営権を得る可能性もある。

とあるので、ライブドアニッポン放送支配は比較的長くなりそうです。
ところで、ライブドアはどうやってこんな株式購入資金を調達しているのか、気になります。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050210-00000010-tcb-biz
単純な話で借金ですね。
制度的には上記のような感じでいいのかな?
経済的には…。値をつりあげて売るってことではなさそうですが、よくそんな借金ができたなぁ…と。
そっちの観点からもいろいろ観察できるといいけど、そんな知識もないので、それはおいおい…。