日本放送協会経営委員会

日本放送協会第987回経営委員会議事録(平成17年1月25日開催分)が公開された。
詳細は→http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/giji/index.html
前回分以前は、
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050128#p2
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050114#p2
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20041222#p1参照。
今回の更新により
日本放送協会第986回経営委員会議事録(平成17年1月11・12日開催分)
http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/giji/g986.html

付議事項
1 会長報告
 (1) 阪神淡路大震災10年関連
 (2) ETV2001問題について
2 報告事項
 財政の現況について(平成16年12月末)
3 議決事項
 (1) 平成17年度収支予算、事業計画及び資金計画について
 (2) 日本放送協会放送受信規約等の一部変更について
 (3) 財団法人放送番組センターへの出捐について
4 議決事項
 退任慰労金について
 会長の辞任ならびに副会長および専務理事の辞任について
 会長の任命について
 副会長の任命の同意について

気になるところだけ軽くみていきましょう。

議事経過
 (2) ETV2001問題について
 平成13年にNHKが放送した番組に関して、係争中の事件について、朝日新聞が1月12日と18日そして20日の記事で取り上げ、現在NHKは、その事実関係の間違い等について公開質問状を送るなどして、朝日新聞に抗議し、訂正と謝罪を求めています。今後、NHKの正しさを証明していきます。その論点について関根放送総局長から報告します。
 (関根専務理事)
 今回の問題は、一言で言えば、政治介入により番組の内容が変更されているのかどうかという問題に尽きると思います。朝日新聞が指摘しているのは中川昭一氏と安倍晋三氏に放送前に面会しているということですが、中川氏についてはそもそも放送前に接触したという事実自体が誤りであることが確認されています。安倍氏については、1月29日ごろにNHKの関係者がお会いしたことは間違いないようでありますが、これは通常業務である予算と事業計画説明のためにNHKの関係者が会っていたというものであります。予算と事業計画についての国会議員への説明は、予算が国会に提出された後、与野党を問わず数百人の国会議員に対して、NHKの担当者が手分けして毎年行っているものです。それから、安倍氏への面会によって番組が変更されたということはありません。1月19日の段階で部長による試写があり、制作会社が制作していた番組が、本来の企画意図と異なり法廷に近すぎる番組になってしまっており、このままでは公平性・中立性・客観性が確保できないことが分かり、大幅な手直し作業が開始されていました。法廷に批判的な意見を持つ識者の意見も紹介することは26日に決められ、28日にその撮影も行っています。29日に大幅に修正した第1版ができ、これを基に放送直前まで編集を重ねたものが放送された番組です。28日の段階で番組が完成されていたとか、安倍氏との面会によって、その後番組が改変されたなどということは決してありません。朝日新聞に対しては公開質問状を出しましたが、現在のところ回答はきておりません。これに対して朝日新聞は、逆にNHKが朝日新聞の記事に関して虚偽の放送をしたとして、法的措置の可能性にも言及した通告書を送ってきています。

第1の下線部に関根専務理事(当時)の問題認識の明確な誤りがあります。
番組が変更されたかどうかということは二次的な問題にすぎません。
また、第2の下線部に番組内容の説明はなかったように読めますが…。

(委 員) 朝日新聞が求めている訂正と謝罪の放送は、放送法4条1項に基づく訂正放送要求なのでしょうか。
(役員等) いまのところ放送法4条1項に基づいて請求がなされたものとは考えておりません。
(委 員) 報道によると、ETV特集についての裁判の控訴審は1月17日に東京高裁で結審するはずだったが延期されたということですが、どういった事情があったのでしょうか。
(役員等) 前回の口頭弁論期日に裁判長から「次回期日までに特段の事情が無ければ結審する」という話がありました。今回の期日の直前に朝日新聞の記事が掲載されたり、当時のデスクが記者会見を行ったりしたことについて、裁判所が特段の事情があったと考えたため、結審されませんでした。ただし、裁判所も政治家の介入の有無がこの裁判の審理の対象とまでは考えていないと思われ、原告側が審理の対象とすべきと考えるのであれば次回までにその理由を詳しく述べるようにと付け加えています。また、その一方で裁判長からは、審理の対象かどうかは別としても、NHKは積極的に事実を明らかにしてはどうかとの意見も述べられました。
(委 員) 第1審の判決は、NHKには責任はなく、制作会社にのみ責任があるというものであったと思います。先程の説明では、最終的に責任をもって編集したのはNHKだということだったと思いますが、判決が、NHKには責任はなく、制作会社にだけ責任があるとして賠償を命じたのはどういうことなのか説明していただけますか。
(役員等) この番組は、NHKが制作の一部をNHKの関連団体に委託し、更にその関連団体の制作管理の下で外部の制作会社に制作を委託するという形で制作されています。裁判所は、制作会社がNHKの本来の企画意図とは異なる、本来できるはずのない番組ができるかのような説明を取材相手に対してしてしまったと判断しています。従って、制作会社にのみ責任があり、本来の企画意図どおりの番組を放送したNHKには責任はないというのが判決です。
(委 員) 最終的な段階ではNHKが関わったわけですから、説明をしっかりしていかないと視聴者の納得を得られないのではないかと思います。
(役 員) 先ほどの説明にもありましたように、訴訟で争われているのは、番組制作会社が取材対象である原告に本来の企画意図と異なる説明をしたかどうかであって、朝日新聞が指摘している政治的な圧力があったかどうかという部分ではありません。また、政治的圧力があったかどうかについても、予算案の説明で国会議員に説明をしたことと、番組の最終編集が時間的に近接しているために間違った推測が行われているので、そこのところをご理解いただけるように説明しています。
(委 員) 新聞の報道では、NHKが国会議員に予算の説明をすることについて、NHK予算の審議過程に直接的には関わらない議員にも説明に行っていることを非難するものがあります。そこはどうなんでしょうか。
(役 員) 総務会の委員など特定の議員だけに説明するのではなく、国会での審議の充実に資するため、幅広く説明を行っています。
(委 員) ある報道では、NHKは従軍慰安婦問題について明確な立場を表明している特定の議員を対象に、番組について説明に行ったということが言われています。NHKに期待される公平、公正という観点からはどのように考えますか。
(役 員) 先ほども申し上げたように、NHKは特定の議員だけに説明しているのではありません。
(役 員) NHKは、朝日新聞の記事には事実のわい曲があると考えています。何が真実かをはっきりさせるべくきちんと対応していきます。
(委 員) 朝日新聞の記事に対してNHKが行った記者会見での発言が誤解を生んでいると思います。議員への予算説明の際、「個別の番組を含め、どういう放送をするかを説明する中で、公平中立を担保していく」と言っていますが、この説明では、視聴者は公共放送のあり方について疑問を持つと思います。
(役 員) 説明の主眼は翌年度の予算と事業計画です。ここで言っている番組についての説明は、その際に事業計画の内容としての番組の改廃等について行うものです。4年前については、説明に行く前から、NHKの番組とは別に、女性国際戦犯法廷が関心を呼んでいたので、予算の説明とあわせて、番組の趣旨を話したということです。
(委 員) 私たちはその場面が理解できますが、マスコミに先ほどのような形で流されると、違う受け止め方をされますから。今の朝日新聞とのやりとりの中で、どこかで全体的な誤解を解くよう、NHKから何らかの発信をしていくことを要望します。
(役 員) NHKが説明するのは、翌年度の事業として何をするのか、その中で、翌年度あるいは現在の番組について質問があれば番組のねらいや企画意図を説明するわけで、個々の番組について個別に呼ばれて説明するというようなことは全くないわけです。そういう誤解があるとすれば、当然それを解消していかなければならないと考えています。
(委員長) 本日は、経営委員会が事実関係について、執行部からご説明をお聞きしました。

さて、ここでも下線を付しました。
明確に、「説明に行く前から、NHKの番組とは別に、女性国際戦犯法廷が関心を呼んでいたので、
予算の説明とあわせて、番組の趣旨を話したということです。」とあります。
このことに、委員の方は理解できるのでしょうか?これが問題と言うのがここでずっと指摘していることです。
筆者は、すでに問題ある行動につきNHKは自白していると考えています。
そのことに対して、何らの疑問も抱かない経営委員は経営委員としての資質を書いていると言わざるをえません。

2 報告事項
 財政の現況について(平成16年12月末)
 (和崎理事)
 平成17年度収支予算、事業計画及び資金計画のご審議に先立って、受信料収入が厳しい中、現下の財政状況を12月末時点でご報告します。
 事業収入は、受信料収入、副次収入等を含め5,052億円、予算に対する施行率は74.5%となっています。事業収入のうち、受信料収入は前年同期に比べ10億円増加していますが、受信契約増加達成率は、契約総数に加え、衛星契約も下回るという状況で、また、受信料収入の収納も大きく遅れています。一方、事業支出は抑制基調で推移しています。収支過不足は、前年同期に比べ、52億円の増となっていますが、今後の受信料収入の見込みが厳しいため、支出については極力厳正な施行に努める必要があります。

このことについての、前会長らの責任がどう退職慰労金に反映されるのか、
経営委員会の判断をしっかり監視する必要があります。

4 議決事項
 退任慰労金について
 笠井副会長から、平成16年12月10日付で経営委員を退任した須田?氏、宮崎満氏への退任慰労金の支払いについて説明があり、採決の結果、原案どおり議決。

 会長の辞任ならびに副会長および専務理事の辞任について
 石原委員長から、本日、経営委員会に対して、海老沢勝二会長から辞任の申し出があったこと、また、海老沢会長に対して、笠井鐵夫副会長、関根昭義専務理事から辞任の申し出があった旨の報告があり、審議した結果、海老沢会長の辞任ならびに笠井副会長および関根専務理事の辞任を1月25日付で全会一致で承認することを議決。
 
 会長の任命について
 海老沢会長の後任について審議の結果、全会一致をもって、橋本元一専務理事・技師長を1月25日付で任命することを議決。

(橋本会長)
 現在の厳しい状況下、会長職をお受けすることは、非常に重い責任を負うということで、身の引き締まる思いです。本日経営委員会で議決され、総務大臣に提出した「平成17年度収支予算・事業計画」には、信頼回復へ向けた改革案が柱として盛り込まれています。私の任務は、この改革案を迅速にかつ着実に実行する、そして、良い番組を放送して放送文化のいっそうの向上をはかり、社会に貢献していくことであると考えています。視聴者の皆さまのご指摘、ご意見を真しに受け止め、経営委員会からもご指導を賜りながら、改革の先導役として全力をあげて取り組んでいきたいと考えていますので、よろしくお願いいたします。

 副会長の任命の同意について
 橋本新会長から、笠井副会長の後任として、永井多惠子氏を1月25日付で副会長に任命したいので同意を得たいとの発言があり、採決の結果、全会一致で同意することを議決。

(石原委員長)
 経営委員会から、新しい執行部に対して要望します。まず、新会長・副会長のもとで、NHKの再生・改革を実行するために体制を刷新すること。次に、NHKは公共放送として、豊かで良質な番組・報道を視聴者に提供するよう、情熱と意欲を持って取り組むこと。次に、「平成17年度収支予算・事業計画」に盛り込まれた施策を迅速・着実に実行するとともに、視聴者に対して分かりやすい情報発信を行うことにより、一刻も早く信頼回復を行うこと。最後に、NHKの改革に向け、全役職員が一丸となって「NHKは変わった」と誰もが実感できる新しいNHKを創ること。以上についてよろしくお願いします。

辞任の承認や、新会長等の選任について詳しいことが記載されていないのが残念です。
最後に経営委員会から、新しい執行部に対して要望が付されています。
にもかかわらず、顧問に辞任3人衆を選任したというのは、一層理解できません。