テレビ番組で未成年タレントが犯罪自白?

話題騒然?女性タレントが犯罪行為を告白した事件について。

窃盗行為をクイズの題材に 日テレ「不適切」と謝罪
 日本テレビのバラエティー番組で女性タレント(18)の窃盗行為がクイズの題材になっていたことが分かり、同局は17日、放送基準に反し不適切だったとして謝罪するとともに、放送経緯について調査を始めた。
 番組は15日深夜放送の「カミングダウト」。ゲスト出演した女性タレントがクイズの中で「本当」の話として「だいぶ前に半年にわたり、店の倉庫から段ボールごと商品を盗み続けていた」と告白した。
 番組放送中に「万引は犯罪です。絶対にやめましょう」との字幕が流れた。放送終了後、番組内容に対する苦情や意見が電話で相次ぎ、約70件に上ったという。
 同局は公序良俗や法律に反する番組制作を禁じた番組基準を定めている。
共同通信) - 2月17日20時57分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050217-00000205-kyodo-ent

いろいろと報道されているところですが、実名でないのは、未成年だから?とか
いろいろ気になりますが、この事件について少し…。


まずは、日本テレビ番組基準 はhttp://www.ntv.co.jp/shinsa/housou.html
一部抜粋すると、

日本テレビ番組基準
 日本テレビ放送網株式会社は、その放送番組の企画・制作・実施にあたり関係法令および次に掲げる基準に従うものとする。


I.基準方針


 日本テレビ放送網株式会社は、常に大衆の基盤に立つ民営テレビジョン機関として、その放送を通じて文化の発展、公共の福祉、産業と経済の繁栄に役立ち、平和な世界の実現に寄与し、人類の幸福に貢献することを目的とする。
 この自覚に基き、われわれは、放送において何人からも干渉されず、不偏不党の立場を守り、民主主義の精神にしたがい、世論を尊び、言論および表現の自由を確保し社会の信頼にこたえなければならない。
 したがってその放送する番組は次の基本方針によるものとする。
2 社会  公序良俗を尊重し、歴史および係争上の社会問題は公正に取り扱わなければならない。
8 犯罪  法律および正義に反する犯罪または罪悪は、視聴者に共感を与え、かつ模倣の欲望を示唆するような取り扱いをしてはならない。


II.番組基準


 この基準は、下の番組相互間の調和と適正を保つものとし、特に守るべき事項を示す。
5 娯楽番組  娯楽番組は、健全な慰安を提供して国民の生活内容を豊かにするものとする。


III.放送基準


 個々の番組および広告の放送にあたって守るべき基準の細目については「日本民間放送連盟・放送基準」を準用するものとする。

また、日本民間放送連盟・放送基準は、http://www.nab.or.jp/htm/ethics/base.html
一部抜粋すると、

10章 犯罪表現
(66) 犯罪を肯定したり犯罪者を英雄扱いしたりしてはならない。
(67) 犯罪の手口を表現する時は、模倣の気持ちを起こさせないように注意する。

ざっとみてみると、牴触しているようには思いますけど、
実際問題日頃どれだけ放送基準が遵守されているかは、この番組に限らず???ですけどね。
タレントの過去の犯罪歴の暴露トークもよく聞きますしねぇ…。本当かどうかはわかりませんが…。
(中には罪をつぐなっている方もおられますけど…。)
なんにせよ、日本テレビ自身が問題ありとしたことなので、テレビ局のもう少し対応を見守りましょう。
少なくとも、どの点が問題(「不適切」)なのかは明らかにして欲しいと思いますね。


この番組は、出演者に関する秘密が紹介され、それが「トゥルー」(真実)かどうか、というもの。
http://www.ntv.co.jp/doubt/
そこで、窃盗行為がの題材とされ、「トゥルー」(真実)だったということのようです。
ただ、言ってもバラエティー番組なので、「トゥルー」と言ったとしても、
フィクションということもありうることかと思います。
この場合は、出演者自身というよりも番組製作者側の意識の欠如という面が大きいということになります。
これに対して、本当だった場合には出演者自身にも問題があると言うことになります。
事務所によれば、「小学生のころに万引をした事実を拡大解釈して話した」ということのようなので、

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050218-00000032-nks-ent
(日刊スポーツ) - 2月18日9時48分更新

犯罪があったとの印象は十分に受けてしまうのですが…。
だとすれば、どういう神経で出演したのか?
未成年とはいえ、テレビという業界でお金をもらうことについてわかっていないと言わざるをえませんね。
もちろん、まわりの大人も大いに問題があるでしょうが…。


さて、これで気になるのが、これが本当だったらどうなるの?ということである。
ここまで女性タレントとしてきました。報道もほとんどが匿名になっているようです。
しかし、本人がテレビでいったことなのであえて匿名にする必要もないでしょう。
実名報道すると、あびる優さん(本名「阿比留優」=1986年7月4日生)である。
事務所ホームページhttp://www.horipro.co.jp/talent/PF075/
※生年月日は事務所ホームページ、本名はネット情報。
記事によれば、「万引は犯罪です。絶対にやめましょう」との字幕があったそうですが、
「店の倉庫から段ボールごと商品を盗み続けていた」を万引きと表現するのはどうかと思います。
ただ万引きというにせよ、いわないにせよ、この行為は窃盗罪である。
なお、集団強盗と言う報道もあるようだが、(実際番組ではそういう表現だったらしいのだが、)
誰もいない倉庫から奪ったのであれば、手段としての暴行脅迫がないので、強盗罪にはあたらない。

刑法(明治四十年四月二十四日法律第四十五号)
(窃盗)
第二百三十五条
 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役に処する。
(強盗)
第二百三十六条  暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
2  前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

さらに複数で「半年にわたり」というのであるから、常習窃盗罪ということもできよう。

昭和五年法律第九号(盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律)(昭和五年五月二十二日法律第九号)
第二条  常習トシテ左ノ各号ノ方法ニ依リ刑法第二百三十五条 、第二百三十六条、第二百三十八条若ハ第二百三十九条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニ対シ竊盗ヲ以テ論ズベキトキハ三年以上、強盗ヲ以テ論ズベキトキハ七年以上ノ有期懲役ニ処ス
一  兇器ヲ携帯シテ犯シタルトキ
二  二人以上現場ニ於テ共同シテ犯シタルトキ
三  門戸牆壁等ヲ踰越損壊シ又ハ鎖鑰ヲ開キ人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅、建造物若ハ艦船ニ侵入シテ犯シタルトキ
四  夜間人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅、建造物若ハ艦船ニ侵入シテ犯シタルトキ
第三条  常習トシテ前条ニ掲ゲタル刑法 各条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニシテ其ノ行為前十年内ニ此等ノ罪又ハ此等ノ罪ト他ノ罪トノ併合罪ニ付三回以上六月ノ懲役以上ノ刑ノ執行ヲ受ケ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タルモノニ対シ刑ヲ科スベキトキハ前条ノ例ニ依ル
※竊盗=窃盗

それでは、刑事事件の時効は?というと、

刑事訴訟法(昭和二十三年七月十日法律第百三十一号)
第二百五十条  時効は、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一  死刑に当たる罪については二十五年
二  無期の懲役又は禁錮に当たる罪については十五年
三  長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については十年
四  長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年
五  長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年
六  長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
七  拘留又は科料に当たる罪については一年

窃盗罪にしろ常習窃盗罪にしろ、刑の長期は「十年以下の懲役」であるので、
「四  長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年」となる。
(十年“以下”なので「長期十年“未満”の懲役又は禁錮にあたる罪については五年」ではありまません。)


さて、一方民事はというと

民法民法第一編第二編第三編)(明治二十九年四月二十七日法律第八十九号)
第七百二十四条  不法行為ニ因ル損害賠償ノ請求権ハ被害者又ハ其法定代理人カ損害及ヒ加害者ヲ知リタル時ヨリ三年間之ヲ行ハサルトキハ時効ニ因リテ消滅ス不法行為ノ時ヨリ二十年ヲ経過シタルトキ亦同シ

ですので、20年。生まれる前でも大丈夫ですね。
ただし、すでに被害者が加害者の氏名住所を知っていた場合はその時から3年です。
なお、当時子に責任がなくても、親の責任を追及することは可能です。詳細は割愛します。


さて、刑事に話を戻すと、時効でなければいわゆる少年犯罪ってことで話はややこしくなります。

少年法(昭和二十三年七月十五日法律第百六十八号)
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%8f%ad%94%4e%96%40&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=S23HO168&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1


刑法(明治四十年四月二十四日法律第四十五号)
(責任年齢)
第四十一条  十四歳に満たない者の行為は、罰しない。

この点も、割愛しましょう。


最後に、実名報道ってやばくない?と言うことに触れておきます。

少年法(昭和二十三年七月十五日法律第百六十八号)
(記事等の掲載の禁止)
第六十一条  家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。

の趣旨に照らしてどうかということに尽きます。
この条文みて不思議に思う人が多いと思います。
家庭裁判所の審判に付された少年」「少年のとき犯した罪により公訴を提起された者」でもないし、
「新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。」、放送やインターネットは「出版物」でもないと。
しかし、実際、逮捕されただけでも、放送やインターネットなど「出版物」でない場合にも、
いけないものだと考えられているようです。この法文の“趣旨”に鑑みてかなり拡張解釈されています。
しかし、彼女がテレビで話した内容を報道するのにあえてこの規定をあてはまる必要はありません。
あくまで、彼女自身がタレントとして出演し、発言したことの内容の是非、
それを報道したことに対する是非を報道しているのですから、あえて伏せる必要はないと思います。
これは、一般の少年犯罪事件とは事情が全く異なります。
(うっかり放送されたしまった寝屋川教師殺傷事件の被疑者とも異なります。)
ここでは、その放送内容の基準の抵触、および発言内容が真実だった場合の犯罪性などを
考察したにすぎないので(犯罪報道ではないので)、実名でも問題ありません。
自分で開示した情報である限り、プライバシー侵害は問題たりえません。
未成年者ですが、テレビ業界にいる以上、そこで話すことの意味についても十分認識していますし、
法律上の判断能力は十分に肯定できるでしょう。
少年法の規定がこのような報道についてまで報道機関を萎縮させていることが、
表現の自由から大きな問題であるという問題提起も兼ねて最後に触れていきます。


問題は、「はてな利用規約」が、

第6条(禁止事項)
1. ユーザーは、本サービスを利用するに際し、以下のような法律違反行為を行ってはなりません。
 2. プライバシーを侵害する行為
 7. その他犯罪に関わる行為あるいは法令に違反する行為
5?.ユーザーは、本サービスの「はてなダイアリー」を利用するに際し、以下のような行為を行ってはなりません。
 1. キーワードおよび日記に他者の著作権、その他法令に基づく権利を侵害する情報を掲載する行為
8?.ユーザーは、以上の各項の他、当社が不適切であると判断する行為を行ってはなりません。
http://www.hatena.ne.jp/help/rules
(数字の後ろのはてな?は原文の数字の表示がおかしいから訂正したため)

としていることでしょうか。
こういう場合だいたい“びびって”「違法」「不適切」と判断しかねない、ということ。
ただ、実際彼女は被疑者ですらないので、そのような判断自体が犯人との決めつけに近く問題だと思いますし、
仮に「違法」「不適切」と判断されたとしても、

第9条(免責事項)
3. 当社は、本サービスを監視する義務を負いませんが、本規約に反する、あるいはそのおそれがある行為や情報開示がある場合には、当該情報の削除や掲載場所の移動、当該行為を行ったユーザーの登録取り消しなどを行う場合があります。その際、ユーザーは、当社の行った処置について、異議を申し立てることはできないものとします。

ということで、「ユーザーの登録取り消し」の可能性は否定できないにしろ、
こういった微妙な判断でいきなり抹消ということはないだろうら、
「当該情報の削除」があるにとどまるというという風に考えておきましょう。
まさかないとは思いますが、権限ある「はてな」管理人から警告がくれば、自主的に削除します。
ただ、その場合は、そのことも問題提起せざるをえませんが…。