選撮見録その8〜裁判どうなってる?/itmediaの記事について 

目 次
○共用録画でも見れるのは自分の設定した分だけでしょ?
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050122#p1
○(株)クロムサイズ「選撮見録」事件
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050125#p1
○選撮見録その3-実際の説明
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050127#p5
○選撮見録その4〜重大な視点の見落とし
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050130#p1
○選撮見録その5〜訴状の内容を推察してみる。
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050130#p3
○選撮見録その6〜録画ネット決定(1)事案紹介と判旨
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050203#1107399229
○選撮見録その7〜録画ネット決定(2)評釈
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050209#1107879578

なんか超大作になってきました。
さて、今まで勝手にクロムサイズ社の「選撮見録」についての機能を想定し、
勝手にいろんな角度から筆者なりに検討してきました。
事実認定は本件との関係ではあくまで仮定ではありますが、法律論としては自分なりにきちんとしたつもりです。
もちろん、異論反論はございましょうが。
そんな中、事前に大阪地裁総務部広報課に問い合わせたところによれば、昨日

平成17年2月28日(月)15:00〜 大阪地方裁判所1007号法廷

に、弁論があるということでしたので、きっとあったことでしょう。
月曜の期日ということからすれば、第26民事部ということでしょう。

第26民事部合議 1007 毎週月曜 山田 知司:中平 健:高松 宏之:大濱 寿美:守山 修生(敬称略)

時期的には第1回弁論であったと思われ、傍聴したってどうせ書面審理だとは思いますが、
(過去に傍聴した事件は数分でおわった。)どうだったのでしょうか?
傍聴されてよく理解された方、事件詳細御存知の方がいらっしゃれば、御一報ください。
どちらかの当事者さんが訴状とか準備書面メールしてくれてもうれしいですけど…。
後者は期待できないですけど、秘密であれば厳守しますので…。訴訟に影響するかもしれないですし…。
でも、それだと好き勝手書けないか。難しいところですね。
仮処分でもあれば(申請してるのかな?)、決定文アップしてもらえそうだけど…。
(報道機関の社会的役割にかんがみれば、アップするべきだと思っています。)


ところで、先日itmediaにこんなコラムがありました。

コラム
2005/02/25 13:04 更新
西正:「マンション内共有録画サービス」提訴をめぐる、もう一つの見方 」
http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0502/25/news043.html
http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0502/25/news043_2.html

おそらく消えないので、そのまま読んでいただくことにします。
さて、(読ましておいてなんですが…)この人のおっしゃっていることは、ちんぷんかんぷんです。
もちろん、おっしゃるように最初に話し合いでカタがつけばいいですよ。
全く話し合いをしていないのなら、そこはもしかしたら責められるべきかもしれない。
もしそうだとすれば、そこは賛同します。
しかし、実際の所、双方が話し合う余地がなかったとコメントしており、
その点をどう考えているのかわかりませんし、このコラムはそれ以上のことは言っていません。


次に、そもそもクロムサイズが問い合わせたところで、「問題ないです」というかということ。
そこ自体も考えて欲しいと思います。
今のVTRシステムだって、アメリカでのソニーのベータマックス最高裁判決をもらって落ち着いたのです。
ダメっていわれてお金でカタがつくなら、それでいいじゃないか?と言うことでしょうが、
なんとな〜くやばい場合には、そこを和解的にシロクロはっきりせぬまま、利用できるならいい、
とすることも考えられますが、そのようなことはコラムには述べていません。
また、シロクロはっきりしないこと自体、社会にとっては良くないことかもしれません。
その点についても触れるべき必要がありますが、意見すらありません。


さらにいえば、この方は、本件につき「共有録画“サービス”」と表していることからすれば、
すでに、複製主体をクロムサイズ(管理会社の幇助者かな)と認識して違法だから…と考えて
論じられているのかもしれません。もちろんそれはそれで構いません。
しかし、クロムサイズの主張は「録画システム」の提供です。

※システム=情報処理装置
http://dic.yahoo.co.jp/bin/dsearch?index=08015600&p=%A5%B7%A5%B9%A5%C6%A5%E0&dtype=0&stype=0&dname=0na&pagenum=1

かなり大雑把にいえば、
クロムサイズの主張は、ハードディスクレコーダーの提供であって、既存のものと何もかわりないということであり、
放送局側の主張は、実質は録画代行サービスであって、一般に違法と考えられている範疇にあたる、
ということだと筆者は理解しています。
そして、適法側にたてば、何が問題なんだ?ということも理解しておくべきでしょう。
極端にいえば、新型ビデオデッキ発売に際して放送局のお伺いをいちいちたてろ、という主張になるのです。
なぜ、そもそも話し合わないかいけないのか、とさえ言えてしまうのです。


もしかしたら、この事件は、双方話し合いができていないだけで、
話しあいでどちらかが納得するかもしれません。だとすれば、このコラムの指摘で十分です。
しかし、それではわざわざ2頁も書く必要はないと思うのです。
問題提起をより抽象的にいえば、あることを「適法と考える人」と「違法と考える人」とがいて、
双方が互いの存在を認識した場合に、どのように両者間を調整して、
それに「巻き込まれる人」が生じることをどう予防するか、ということこそが問題だと思うのです。
そして、法律論である以上、それを裁判の場ではっきりさせるというのが、今の状況です。
話し合いでまとまらない場合に、どうするのが、両者にとって最善であり、視聴者にとって最善なのか、
それを考える必要があるように思うのです。
現状の裁判所依存型こそが、利用者の利益を図る上で最善なのか、
裁判外で話し合うルール構築するのがいいのか、
あるいは、できるだけこじれないように、法律を改正して、
例えば、テレビ番組の録画機器も補償金制度に対象にしてしまうとか、
複製機器提供はダメで、複製役務の提供はアウト解するようにするのがいいのか、
そういった具体的な提言を「放送・通信関係のコンサルタント」という立場からされるべきだったと思います。


さいごに、そもそも私的使用であるならば、「許諾」なんていらない、お金もいらない、というのが、
私的使用複製という権利制限規定なのです。

あくまでも利便性の高いサービスを“合法的”に提供しているのだという自信があるのなら、
どうしてサービスの開始前に放送局の許諾を得ておかないのかという点である。

などという指摘はまったくもって誤りでしょう。合法なら許諾とは意味不明です。


今回は法律論とは直接関係のないところとなりました。
法議論の可能性としては有意義だから適法、ということもありかも知れませんが…。
せっかく選撮見録についての記事がありましたので、それについての感想文でした。