著作物の利用と個人情報保護〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(8)〜

登録商標一覧?〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(1)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050324#1111595733
著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(2)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050406#1112753849
著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(3)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050410#1113141421
教育目的利用〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(4)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050411#1113154362
著作権侵害の慰謝料〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(5)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050414#1113412430
企業とのやりとりメールの公開〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(6)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050414#1113445853
漫画の引用?〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(7)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050418#1113816642

「はてな」の回答の著作権について質問します。私は質問を多くしておりまして、今も質問中です。その結果、多くの回答を得ており、回答者の中には想像を超える有意義で、かつ、生活するうえで参考になる意見が多く、特に、パプリックの面では顕著です。広く情報を配信するための一つとして、これを出版社を通して書籍として出版すると仮定したとき、どのような問題が生じるのか、それを質問します。

著作権の面に関しては、

著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(3)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050410#1113141421

で、少しコメントしました、
今回は、質問者のsuspenseさんが気にしておられる個人情報との関係について。


この点、1のコメント欄には、

個人情報保護法を、仕方なく勉強しておりまして。私が注目したのはメールアドレスです。「はてな」は匿名になっておりますが、私のsuspenseは、はてなでは特定のできる固有名詞に近い地位にあります。それが、プライバシーとしての権利とバッテングする可能性があります。「はてな」の利用規約に遵守して回答したのであって、同社以外の利用(引用も含む)は拒否する人も多いと思います。はてなの了解以前に、ここをクリアーしないと一歩も進みません。動機は回答拒否権にあります。このシステムには納得しておりませんが、しかし、このシステムのおかげで、いただいた有意義な回答を、ここだけにファイルするのは、もったいないと思ったのが主因です。実際、私の周りにはクレジットでポイントを購入している人は、おりませんでした。また、書店とは機能が違うこともあります。

また、「いわし」には、

著作権と個人情報の二つをクリアーしなければならず、ハードルは高いような気がします。

と記載されています。
具体的になんのことを言っているのか分からないのですが、個人情報と関連して気になりそうなことを考えてみました。


まず考えられるのが、「はてな」が「ユーザー名」そのものをそこに提示すること。
これについては、

利用規約
第5条(ユーザーの責任)
2. 本サービス上においてユーザーが自己のユーザー名のもとに開示した、質問及び回答、掲示板への発言等全ての情報に関する責任は、ユーザー各自にあります。従って、当社はユーザーが本サービスにおいて開示した質問や回答、掲示板への発言等の内容について、一切の責任を負いません。
http://www.hatena.ne.jp/help/rules

ということより、またユーザー名の性質からも開示されるものとわかっているので、
システム上、ユーザー名を提示すること自体問題ない。


次に、この「ユーザー名」をもとに質問者さんなりが著作物の利用許諾を得ることについて。
まず、その回答者が「はてな」サービス上にご自分のアドレスを掲載していれば、
そのアドレスを利用して連絡することは問題ないと思われる。また、そのコメント欄を利用してもよいだろう。
一連の「はてな」サービス上で公表されている情報を用いて、「はてな」上でのことに関して連絡をとるのは、
それらの情報が「個人情報」だとしても、何ら「個人情報の適正な取扱い」という法の趣旨に反しているとはいえない。
(※個人情報保護法はそもそもここでは問題にならない。一般利用者は通常「個人情報取扱事業者」ではない。)
また、「はてな」以外でも、何らかの合法的な形で連絡先を知りうる場合にそれを用いて連絡することも問題ないであろう。
(たとえば、回答者が著名人で、別途調べた事務所の連絡に連絡する等)
では、直接回答者の連絡先を知り得ない場合にはどうするべきか?
まずは、「はてな」を介して連絡を試みる、ということになる。
しかし、この場合「はてな」は承諾なく連絡先を第三者である質問者に提供するはできない。
もっとも、「はてな」上の著作物に関してのことなので、
この件に関して「はてな」がその保有する情報を用いてそのユーザーに連絡をとること自体は妨げられないと思われる。
また、承諾を上でその者にメールアドレスを開示することも問題ないであろう。

はてな プライバシーポリシー
(3)個人情報の利用
1.当社は個人情報を以下の場合に利用します。
 5.ユーザーへの連絡を行ったり、本人確認、規約違反行為の調査および対応、問い合わせ内容の調査、商品発送手続きなど、個別の処理や業務に必要である場合。
2.当社は上記以外を目的として、個人情報を閲覧、利用することはありません。
(4)個人情報の開示
2.当社はユーザー個人を特定することが可能な状態で個人情報を第三者に開示することはありません。ただし、以下の場合には開示することがあります。
 1.個人情報の開示にユーザー本人の同意がある場合。
http://www.hatena.ne.jp/help/privacy

ただ、これで直接連絡をとれるなり、断られるなり、結果がでればよいが、
すでに退会していたりして連絡がとれない場合には、

著作権法(昭和四十五年五月六日法律第四十八号)


第八節 裁定による著作物の利用
著作権者不明等の場合における著作物の利用)
第六十七条  公表された著作物又は相当期間にわたり公衆に提供され、若しくは提示されている事実が明らかである著作物は、著作権者の不明その他の理由により相当な努力を払つてもその著作権者と連絡することができないときは、文化庁長官の裁定を受け、かつ、通常の使用料の額に相当するものとして文化庁長官が定める額の補償金を著作権者のために供託して、その裁定に係る利用方法により利用することができる。
2  前項の規定により作成した著作物の複製物には、同項の裁定に係る複製物である旨及びその裁定のあつた年月日を表示しなければならない。
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%92%98%8d%ec%8c%a0%96%40&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=S45HO048&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1

ということになろうか。法文上は…。


ちなみに、

はてな」の利用規約に遵守して回答したのであって、同社以外の利用(引用も含む)は拒否する人も多いと思います。

ということがあったとしても、公表された著作物である以上、「引用」として利用されるのはやむを得ない。
また、それに付随して氏名表示としてユーザー名が記されるのもやむを得ない。
むしろ著作権法上は氏名表示しなければならないことになっている。
著作物の著作者としてユーザー名を表示した以上、著作者表示としてそれを利用しても、
個人情報保護法の趣旨には反しないであろう。
ネット上への公表が最初の公表であるということからしても、このように考えてよいように思われる。
「ユーザー名」だけでも「個人情報」にあたるとしても、そのようなユーザー名で表示した以上やむをえまい。
なお、この点については、深く考えるといろいろおもしろいように思うが、今回はこの程度の指摘にとどめる。
ご意見のある方はコメントをいただけますと幸いです。