番組見逃した!他〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(9)〜

登録商標一覧?〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(1)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050324#1111595733
著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(2)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050406#1112753849
著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(3)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050410#1113141421
教育目的利用〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(4)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050411#1113154362
著作権侵害の慰謝料〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(5)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050414#1113412430
企業とのやりとりメールの公開〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(6)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050414#1113445853
漫画の引用?〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(7)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050418#1113816642
著作物の利用と個人情報保護〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(8)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050422#1114144419

今回は、回答そのものではなく、質問から思ったことを中心に。

先日、あるテレビ番組を録画する予定が、しそこねました。このような場合、その番組をビデオなどで入手できるサービスは存在するのでしょうか。ちなみにNHKです。再放送は無いとの事です。

回答はだいたいでていると思いますけど、
ネット上で不特定多数もしくは特定多数に呼び掛けて録画テープをかしたもらう、ダビングしてもらう、
そういう業者でコピーしてもらう、というのは法律上基本的に無理。
友達にあたって借りるというのが、精一杯。

(私的使用のための複製)
第三十条  著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

一般的に「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」はごく狭い範囲内と解されているからです。
もちろん権利処理すれば、そういうサービスも合法的にありえますが、多分ないでしょう。
ないことの証明は難しいですが、(少なくとも合法的には)「存在しない」というのが回答だと思います。
実際そういうサービス業をはじめてもコストの方がかかってしょうがないような…。


そういえば、小さい頃なんとなく聞いて番組(番組名不明。多分ラジオ大阪、アニメ系?製作は文化放送?)内で、
リスナーがドウロク(同時録音?)テープを送って欲しい人がもらうようなことを恒常的にやっていた。
同時録音だから30条の範囲内ってことだったのかなぁ?
同時録音だろうとそうでかならろうと、あんまり関係ないとは思うけど、ラジオ局が介在してって、すごいねぇ…。
良かったのだろうか?あんまり覚えて無いのがある意味残念。


さて、こういうことを考えると、選撮見録の「一括録画」機能はかなり魅力的だったりもするわけです。
→選撮見録については、http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050422#1114161312参照。
あ〜、見逃したっていう場合にオンデマンドで個別放送でもできたらおもしろいんですけどねぇ…。
デジタル化に際して、全番組1週間遅れで強制再放送とかになっても面白いのに…。
ちなみに、放送局がダビングして下さい、とかを著作権を盾に断るのは、
自社(製作会社)の著作権云々というよりは、
その番組(著作物)の製作に際して許諾を得て取り込んだ著作物の著作権の問題とか出演者との契約の問題。
だいたい本放送+1回の再放送分が当初の契約になっているらしい。
ダビングするという物理的な行為が面倒なのではなく(十分これも面倒だけど)、
権利処理が面倒ということのようです(お金もかかりますしねぇ…)。
筆者も最初はよくわかってなかったんですけど…。


個人的に見たい番組でも見逃しちゃったから見れない、というのは文化的に勿体無い。
また、あとあと番組内容を検証したい、とうときにも放送局がだしてくれないと見ることができない。
後者に関連して、草野厚『テレビ報道の正しい見方』180-181頁(PHP研究所,2000)
裁判までいくと、場合によっては強制できるのだろうが、難しい問題。
こういう事態を回避するために、放送局が進んで再放送するとか、
放送局で映像ライブラリーを解放するとかしてくれるといいけど、
どうしても契約の問題とかもあって、消極的になってしまいがちのように思われる。
そうだとすれば、ここは一つ法律で著作権著作隣接権を制限するというのが一つの手である。
その場合、そもそも権利者のコントロールできる範疇ではなくなってしまうのだから、契約上の問題は生じない。
例えば、国立国会図書館法で映像コンテンツに関しても強制的に映像記録物を納めさせるとか、
一定の機関に録画、限定的な再生行為を認めるとかして、映像資料を残し利用することが必要なように思われる。
かつて、コピーライトといわれたものは、書籍の存在を前提としていた。
コピーしなくても、書籍を手に入れることによって著作物に触れることができたのである。
しかし、放送番組はそうではない。録画しておかないと、後の触れるということはできないのである。
これは、インターネットサイトについても同様である。(しらない間に改訂されたり、消えてしまったりする。)


著作権法の目的は、

この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

とある。
しかし、テレビ放送は物理的に録画が容易にもかかわらず、特段の権利制限はなされていない。
テレビ放送の場合、せっかくの「文化的所産」がそのままお蔵入りしてしまうのである。
有体物による流通を予定しない著作物について、どう扱うかについては今一度考えるべき問題のように思う。
そんなこと言い出すと、演劇とかはどうするの?などという疑問もあるが、実演家人格権との関係はもちろん、
テレビ放送は録画保存の容易性の点で決定的に異なるのである。
再放送するとか、販売されない限りは誰かが個人的に録画していない限り放送に接することもできない、
というのはかなり疑問を覚える。
放送局が表立ってこういう運動をするのは、(放送局に対する)権利者の手前難しいのかもしれないが、
文化を残すという観点からは、必要なことのように思われる。


ちなみに、回答にもでてきた

NHKアーカイブス
http://www.nhk.or.jp/nhk-archives/
紛らわしい「番組「NHKアーカイブス」」は、
http://www.nhk.or.jp/archives/index.htm

どうやって権利処理したのか気になります。
結構いろんな番組があるようですし…。「番組「NHKアーカイブス」」に際してうまくやったのかなぁ?



次は、レコード製作者の権利絡み。これも回答ではありません。

市販のJ-popのCD (たとえば大塚愛「さくらんぼ」) をそのままmp3化し、自分のHPで、非商業的に、みんなが視聴できるようにしたいとします。調べたところ、著作権使用料は1万円程度で済むとわかりました・・・もし著作隣接権がクリアできるなら。つまり>市販のCDなど既成の音源をMP3ファイルにして配信する場合は、>著作権のほかに著作隣接権の許諾を得なければご利用になれません。https://jasrac.e-srvc.com/cgi-bin/jasrac.cfg/php/enduser/std_alp.phpってことらしいんですが、そこで質問。「著作隣接権」の許可を得るにはどうしたらいいんですか?CDを売ってる会社に問い合わせればいいのでしょうが、実際に問い合わせるとどうなるのかご存じの方、教えてください。あるいはそのような体験のURLを。例えば、ほぼ100%、不許可になるとか、非常に高額な請求をされるので、事実上は個人では不可能とか・・・。

一般的に、音楽著作権では許諾拒否ということはまずないが(それでも利用形態よっては現在不可)、
著作隣接権については、許諾拒否ということが少なからずあるようだ。
JASRACは許諾することを原則にする一方、隣接権者は戦略的に許諾したりしなかったりしているようで、
実際上許諾を求めても利用できないという事態が起こっている。果たしてこれでいいのか?
現在の法はその点については已むを得ないと考えている。
必要と思われるごく一部の事態に強制許諾制度をおくが、一般的な強制許諾はない。
隣接権だから著作権の許諾が一般になされる状態をよしとするか、
著作権をクリアできるのに隣接権をクリアできないのはおかしいとするか…。
とりあえずは着うた事件を見守るか…。
場合によっては政策論として考える必要があるのかもしれません。


次はちょっと質問の趣旨自体は不明。

CDの音楽データを、コピーソフトを使ってMP3とか、その他の形式に変換して保存、もしくは、そのままの状態で、なんらかのソフトを使い保存するのは、著作権違反になるのでしょうか。これについて、なんらかの公式文書、ニュース記事、もしくは、著作権協会による公式文書、供給側の正式コメントを教えてください。各社で対応が異なる場合についても教えてください。尚、このようなソフトの使用方法を解説しているサイト、書籍等についても、法律的にどういう扱いなのか(公式文書で)教えてください。

単にある程度の公式な書面(リリース)が欲しいだけなのかな?と思っていましたが、
1番目の回答で納得していることからすると、そうではないようで…。


さて、著作権法上、
「CDの音楽データを、コピーソフトを使ってMP3とか、その他の形式に変換して保存、
 もしくは、そのままの状態で、なんらかのソフトを使い保存する」というのはすべて「複製」。
したがって、これらの行為は複製権を侵害することになりますが、私的使用目的でなされる限り問題ありません。
一般的な私的使用目的の複製は、ほとんど一般常識の範疇で認められています。
ちなみに、ファイルのアップロードは複製と同時に公衆送信権侵害であって、通常こちらで問題になります。
なお、私的使用目的外複製と言う考え方も可能ですが、私的私用目的でも、
公開サーバーにアップロードすると、送信可能化といって公衆送信権侵害となります。


ちなみに回答中にもありますし、さらっと書きますが、
CCCD回避はOK、DVDのCSS回避はOUT、という理解が一般的かと。
CCCD回避は、「技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変」ではないですからね。

(私的使用のための複製)
第三十条  著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
一  公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合
二  技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合

現実的には回避したって、自分で使っている分には問題にはなりにくいでしょう。
複製権コントロールは、複製結果が広まることを根源で断ち切るための手法ですから。
一般的な録音録画機器や編集変換ソフトは問題視されていません。
ただ、ここでも触れている「録画ネット」や「選撮見録」は問題になっていますし、
(ただし違法主張側(放送局)の違法主張のコメントはありません)
DeCSSについても海外では問題視されていたように思います。
(日本でも問題だとは思いますが…、そのことの価値判断は別として)
だいたいは2の回答ででているようなところのように思います。


一般論として適法な私的複製幇助は適法、違法な複製の幇助は違法です。
専ら著作権侵害に供されるものの提供は違法でしょうが、Winnyの場合は…

YAHOOオークションなどで 企業の 写真等は使ってはいけない?? 知らないで 使ったら 罪になる??

他人の著作物(写真など)を無断で複製.公衆送信すると、複製権、公衆送信権侵害となり、違法です。
YAHOOオークションなどで企業の写真等を使うということがよくわかりませんが、
そういうサイトで引用かというと微妙でしょう。
したがって、民事上の損害賠償責任などを問われるおそれがあります。
なお、多くの著作権に関する罪は親告罪なので、告訴がなければ、刑事責任を問われることはありません。
ですが、単に知らないというだけでは、一般に罪にならないということにはなりません。
そうでないと、犯罪に無関心な人は何をやっても問題ない、ということになってしまいます。
ちなみに、「知的財産保護法」なる法律は今のところありません。


この点と関連して、古本で本の状態を紹介するために写真とって掲載することもあるかと思います。
この場合、著作物の複製等がなされていることになります。
しかし、必要な範囲でそれをしても、「引用」に含めてしまっていいように思います。
著作物そのものに関心をもたない単なる映り込みということを法律上どう処理することを
法文上どう処理するかも考えてみるとおもしろいような気がします。

ブログでサイトの写真を引用したものを見ますが、サイトに引用、使用を禁ずると書いてあった場合、法的に問題ありでしょうが、具体的な法的責任について教えてください。また訴えられた事実等があれば例があると嬉しいです。

「引用禁止」とあっても、本当に「引用」だったら問題ありません。
著作物として公表した以上、「引用」を禁じることはできません(引用は強行規定です)。
「使用」については、その意味によりますが、
著作権法の論者によっては)それだけだと、閲覧することも禁止となりかねませんねぇ…。
まぁ、著作権侵害の態様はもちろんしないでください、というだけでしょう。
事例等の回答は「はてな」で。


以上、最近の質問から思うところ。
検索具合などで関心が高ければ、改めて書きたいと思います。