棋泉vs米長邦雄訴訟

<将棋>米長棋聖を提訴 ソフト制作会社が著作権侵害
 開発したパソコン用将棋ソフトの類似品を制作・販売され著作権を侵害されたとして、プロ棋士の武者野勝巳六段が社長を務めるソフト制作会社「棋泉(きせん)」(東京都新宿区)が19日、米長邦雄・永世棋聖と別のソフト制作会社などを相手取り、4100万円余の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。
 訴えによると、棋泉は、初心者が対局などを通じて将棋ルールを学べるソフトを開発し、00年3月に米長さんを監修者としてウィンドウズ用「米長邦雄の将棋セミナー21」を発売。ソフトの大部分を棋泉の著作権とし、詰め将棋問題やコラムなど一部を米長さんの著作権とする契約書を交わした。
 だが、米長さんは01年、「失敗作なので監修者として恥ずかしい」と制作・販売の中止と在庫廃棄を申し入れ、棋泉側も受け入れた。その後、02年3月、米長さんが企画に関与したプレイステーション用ソフト「みんなの将棋」がソフト制作会社「サクセス」(品川区)から発売された。
 棋泉側は「みんなの将棋」について、初級、中級、上級の3部構成▽講座や実戦解説などが組み込まれている▽問題の構成や順序――などが「セミナー21」に類似しているとして「先行ソフトに依拠して制作されたのは明らかで、原告の著作権を侵害している」と主張。会見した武者野さんは「大先輩だが、話し合いに応じようとしないので提訴した」と話した。【井崎憲】
 ▽米長さんの話 「著作権者及び著作者、人格権は米長に帰する」と契約書の第1条に明記されております。
 ▽サクセスの話 訴状を確認していないのでコメントできない。
毎日新聞) - 5月19日20時43分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050519-00000110-mai-soci

将棋ソフト「内容が酷似」 著作権侵害と米長氏を提訴
 将棋の米長邦雄氏が監修したゲームソフト「みんなの将棋」をめぐり、ソフト会社「棋泉」(武者野勝巳社長)が「以前に米長氏と共同開発したソフトと内容が酷似している」と著作権侵害を主張し、米長氏とソフト販売会社などを相手に販売差し止めと約4100万円の賠償を求める訴訟を19日、東京地裁に起こした。
 武者野社長は米長氏と対戦したこともあるプロ棋士。訴状によると、棋泉は米長氏監修のゲームソフト「米長邦雄セミナー21」を開発し2000年3月から販売したが、米長氏の要請で約1年後に販売を中止した。この後発売された「みんなの将棋」は、講座や問題などの内容がセミナー21とほぼ同じとしている。
 提訴について米長氏は「(セミナー21の)著作権は自分にあると契約書に明記してある」と反論している。
共同通信) - 5月19日20時55分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050519-00000225-kyodo-soci

将棋ソフト巡り米長さんらを訴え…プロ棋士社長の会社
 「開発した将棋ソフトに酷似した別のソフトを発売され、著作権を侵害された」として、プロ将棋棋士の武者野勝巳さん(51)が社長を務めるコンピューターソフト会社「棋泉」(東京都新宿区)が19日、永世棋聖米長邦雄さん(61)らに計約4160万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。

 訴状などによると、棋泉は2000年3月、米長さんを監修者とする将棋ソフト「米長邦雄の将棋セミナー21」を発売。翌年、米長さん側が「ソフトは失敗作だ」と販売停止を求め、棋泉は応じたが、02年3月、米長さん側が「みんなの将棋」を発売した。二つのソフトは、将棋の入門者がルールから実戦まで段階的に学べる構成、練習問題などがほとんど同じだとして、「無断で同じ内容のソフトを製作、発売したのは著作権の侵害」と主張している。米長さんは「著作権は米長側に帰属するとした契約書がある」などとコメントしている。
(読売新聞) - 5月19日23時36分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050519-00000416-yom-soci

それこそ訴状を見てないのでよくわからないのだが、新聞記事から少し考えてみたい。
コンピュータソフトの関する訴訟だけどおそらくプログラムの著作物の話ではない感じ。
何を被侵害著作物とし、何を侵害著作物として主張しているのかにもよると思うが、
そもそもゲームソフトの内容がどこまで著作物として保護されるのかがまず問題。
この点に関しては、
共同通信の記事は、
「「みんなの将棋」について、初級、中級、上級の3部構成▽講座や実戦解説などが組み込まれている
 ▽問題の構成や順序――などが「セミナー21」に類似している」とし、
また、読売新聞の記事は、、
「二つのソフトは、将棋の入門者がルールから実戦まで段階的に学べる構成、練習問題などがほとんど同じ」という。
しかし、そもそも「初級、中級、上級の3部構成」「将棋の入門者がルールから実戦まで段階的に学べる構成」が
著作物性を有し、著作権法上の保護が及ぶのか?
ゲームソフトに「講座や実戦解説などが組み込まれている」というのは、
ある種アイデアであって保護されないのではないか?という疑問が生じる。
一番問題となるのが、練習問題であって、その配列や表現に創作性があり、それらが同一であれば、
著作権侵害が認められるということもあろう。
もっとも、仮に著作物性があるとしても、「著作権は米長側に帰属するとした契約書がある」との反論と関係して
さらに問題が生じる。
この著作権がどの点についてのものかにもよるが、
もし著作物性があり、米長側に著作権があり、両者に同一性があるのなら、
原告が被告の著作権を侵害しているということにもなりかねない。
まさか原告代理人がその点を全く考えていないということはないだろうけど、
新聞記事からはありうることのように思うのである。
また、著作者を誰と認定するかによって、氏名表示権の問題も残ろう。


本当に著作物か、その著作者は誰か?著作権は誰に帰属するか?など検討すべき事項は多いが、
これらの記事を読む限り、そもそも本当に同一性を主張している対象に著作物性があるのか、
という点に大いに疑問を感じものであり、
また、被告の反論を前提にすれば、原告の方が権利侵害とも思えるところもあり、面白い訴訟のように思う。
是非とも訴状がみてみたい訴訟である。

棋泉vs米長邦雄訴訟(2)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050521/1116607505