個人情報関係いろいろ

個人情報保護関係で最近の記事から2件。


1.嘘をつくなら発表するな。
少し前の記事。

<匿名発表>被害者らの保護理由に、警察が「ウソ」も
 警察など捜査当局が重大な事件・事故について報道機関に発表する際、「被害者や遺族の希望」などを理由に当事者の名前を伏せるケースが相次いでいることが毎日新聞の調査で分かった。中には虚偽の事実を発表した警察もあった。今年4月の個人情報保護法の全面施行後、発表内容を制限する例もあり、論議を呼びそうだ。
 毎日新聞が今月、全国の本社・支局などの取材網を通じて調べた。
 熊本県警多良木署は昨年11月、息子が父親を乗用車内に閉じ込めて暴力を振るった逮捕監禁事件で、父親を匿名で発表し、逮捕した息子との間柄を「知人関係」と発表した。父親側から「発表しないでほしい」との申し入れがあり、プライバシーに配慮したという。
 山梨県警塩山署は今年2月、恐喝未遂事件の被害者となった主婦を匿名で発表した際、年齢を実際には「30代」なのに「46歳」と偽って公表した。同署によると「被害者保護」が理由で、主婦から住所や氏名、年齢を発表しないでほしいと要請があったための措置だったという。
 三重県警は、殺人・死体遺棄事件の被害者の名前が判明した際、「遺族の希望」を理由に匿名で発表し、地元記者クラブの抗議で約6時間後に実名を公表した。
 この他、▽議員や警察官の犯罪について「書類送検」を理由に匿名発表したり、発表そのものをしない▽「通院歴がある」などを理由に殺人事件などの容疑者を警察段階では匿名発表しながら、結果的に検察庁が起訴して実名が明らかになる――などの例も全国的に相次いでいる。
毎日新聞) - 5月31日3時3分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050531-00000009-mai-soci

被害者保護の流れや個人情報保護の観点から被害者の意に反する公表を差し控えるというのは、ある程度理解できる。
しかし、だからとって虚偽発表をしていいことにはならない。
それならそれで、被害者は○歳代だけとか性別だけを発表したり、
あるいはすべてにつき、被害者の要望つき警察としては非公表とすればよい。それだけのことのように思う。
その上で、何を非公表とするべきかが問題となる。
山梨県の恐喝未遂の例であれば、氏名と住所を非公表にすればいいのではないか?
(県内の)30代主婦だけでは何らの「個人情報」性はないはずである。
これだけで個人を特定することにはならないし、プライバシー性もない。
わざわざ46歳と虚偽発表をする必要があるのか、ないであろう。
(ただし、これは警察として発表しないだけである。
 マスコミは独自に情報を入手して、独自判断で公表するかもしれない。
 また、裁判では明らかになることである。)
一方で、悩ましいのが熊本県の事例である。
子が父親を逮捕監禁したとして、被疑者氏名を公表することは、被害者を公表するに等しい。
このような場合に被害者のプライバシーをどの程度考慮するのかは考える必要がある。
ふせるという判断であれば、父親を監禁したということを伏せればよい。
そこで「知人関係」であるが、「知人関係」に親子関係を含まないとはいえない。
確かに一般的用法からは離れるがこれくらいは許容してもいいように思う。
かなり限定されるが、親族関係でもいいかもしれない。


話は少し違うが、
「議員や警察官の犯罪について「書類送検」を理由に匿名発表したり」ということに関しては、
公務員性から直ちに公表するという運用を採るべきではないか。
これは、個人情報どうこうという感じではないかと。
むしろプライバシーは制約されると考えた方がよいように思う。
個人情報保護法の意義がいまいち理解されていない状況でこの構成はちょっと…。


警察発表の指針を策定して公表すれば、その指針自体の批判は可能だし、恣意的運用も防止できる。
個人情報保護法」における個人情報保護は秘匿すべき、ということではなく、適正な取扱いなのだから、
どう取扱うのか、それを策定・公表するのが先であろう。


2.教育現場と個人情報

生徒のけんか→刑事事件 個人情報保護法理由に相手の名前教えず 大阪の府立高校
「説明、謝罪さえあれば…」
 大阪市大正区の府立高校で生徒同士のけんかで負傷した生徒の親が、相手生徒の謝罪を求め、学校に氏名や連絡先を問い合わせたところ、個人情報保護法を理由に拒否されていたことが三日、分かった。被害生徒側は大正署に被害届を提出し、警察が捜査に乗り出したが、被害生徒の親は「相手から説明や謝罪があれば、刑事事件にするつもりはなかった」。府教委も「拒み続けるべきでなかったかもしれない」としている。
 関係者によると、事件は四月一日に起きた。一年生の男子生徒が、別のクラスの男子生徒に校門近くに連れ出され、殴られるなどの暴行を受け、顔などに約六週間のけがを負った。
 学校はけんかと判断し双方を停学処分とした。この際、被害生徒の両親が相手生徒の氏名や連絡先を尋ねたが、学校側は「個人情報」と拒否。相手側から連絡させるとして、被害生徒の連絡先を相手側に伝えた。
 ところが、相手側から連絡はなく学校側は「(学校は)民事に介入しない」と拒んだという。
 同校ではプライバシー保護を理由に生徒にも名簿などを一切配布しておらず、入学当初は生徒同士でも相手の姓しか分からなかったという。
 両親は「容疑者不詳」で大正署に被害届を提出。同署で傷害容疑で捜査を始めているが、学校は警察にも情報提供を拒否。法で認められた捜査上の必要性を説明後、ようやく情報を伝えたという。同署はすでに双方の生徒から事情聴取などをしている。
産経新聞) - 6月4日3時5分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050604-00000019-san-soci

ははは。被害生徒両親にとっては笑い事ではないが、ここにもでてきました個人情報保護法
府立高校だからなぁ、どこでもこういう問題はおこるということか?
こういう場合に第三者たる他の生徒の両親に情報提供できるのか、ということでしょ?
そして、ここではこういう目的設定はされていないと。
学校教育の現場において、こういう場合の利用もできないとすることが、そもそも制度的にどうなのか?という問題ということか。
そうでなければ、単に運用の誤りか。
捜査の場合も断ったのか。令状がないと個人情報提供を提供できない?
とすると、捜査の場合には提供するという指針のないということ?法律的なことはともかくとして。
いったい学校がどういうプライバシーポリシーで個人情報の利用をしているのか、気になるところです。


話は少しそれるが、
「男子生徒が、別のクラスの男子生徒に校門近くに連れ出され、殴られるなどの暴行を受け、顔などに約六週間のけがを負った。」
で、「学校はけんかと判断し双方を停学処分」?
一体どんな高校だ。一方当事者(自称被害者側)の主張しか含まれていないからなのか?
停学処分おきながら、民事に介入しない?
ちょっとわけのわからない学校のような気がします。