スパムメールの公開

question:1119864351
最近迷惑メールがよく届きます。そのメールを警告・警戒およびサイト情報のために公開したいと考えております。ただ、そのメールは「迷惑メール」とする立派な著作物であるといえます。よって、公開は禁止されているものなのかもしれません。でも、本当のところはどうなのかわからないので教えていただけませんか?


関連質問
人からもらったメールなどを公開すると何か問題になりますか?
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050618/1119026184

前回は1対1やりとりを想定したが、今回はスパムメールなので、少し事情が違う。
スパムメールはまず、個人的なやりとりと異なりプライバシーは問題にならない。
一方的に送りつけておいてプライバシーも何もない。
そうなると、著作権法上の問題にもっとも注意を払う必要がある。
ただ、そのためには「スパムメール」が著作物でなくてはならない。
これを否定してしまえば話は早いが、そういうことは少ないように思う。
メールマガジンに著作物性があることを考えると内容にもよるが否定されない。)
そういうわけで、とりあえずは著作物であるということを前提に。
ちなみに、「悪徳業者に著作権など関係ないとおもいます。」という考え方は個人的には好きだが、
実際そういう風になっていない。


まず、著作物だとするとまず公表権が問題になるが、
スパムメールの定義付けの時点でおそらく不特定多数に送られているように思うので、
すでに公表された著作物といえ、公表権は問題にならない。


しかしながら、それを公開する際、複製権や公衆送信権の問題は残る。
引用等の権利制限規定に該当すればいいが、そうでない場合には違法ということになる。
たとえば、架空請求メールの内容の紹介して、こういう文言には注意しましょうとか解説すれば、
「引用」として認められていいように思う。
また、41条の要件をみたせば、スパムメールの実情の報道として認められる余地も否定できない。
ただ、「報道の目的上正当な範囲内」に限られることを考えると、多数のメールを紹介することはできない。
こういうことを考えると、単純にライブラリ化して公開するというような場合には、形式的には違法ではないか、
ということになる。
ただ、ライブラリー化を含めて公開されると、まぎらわしいスパムについてはそれを確認することができ有用である。
そう意味では一概に否定してしまうのはどうか?ということになる。


ところで、たとえば架空請求ハガキを著作物と考えると、それをコピーして消費者センターにわたすのも、
著作権法を形式的に理解すれば違法になる。私的複製ではないし、この時点では裁判書類でもないのである。
現物をわたさないとダメである。
迷惑メール通報では、システム的に複製処理がなされていることも多いが、
(コピペ入力フォームはそう。転送をどうとらえるか難しいが、これも複製といえば複製。
 もっともメール転送なんてこと著作権法がどれだけ想定しているのか…。
 送信可能化権を規定した時点で想定しているかもしれないが、そう考えるとますます不合理…。)
著作権法を形式的に理解すると、これらをどう適法と理解するのかは難しい。
ただ、これらは(少なくとも筆者にとって著作権法上の根拠が不明確なまま)許容されている。
複製にあたらないのか?そもそも著作物でないのか?現実的に訴えられないだけなのか?
この理解の仕方によっては、スパムメールの公開も許されることにあろう。
(著作物性の否定なら公衆送信できるが、「複製」にあたらないのなら、公衆送信できない。)
現在のところ(もちろん態様にもよるが)これはいわゆる「グレーゾーン」であるように思う。
フェアユースとか、著作権法の趣旨に遡って解釈すれば適法ともいえそうだが、裁判所や多くの学者はそうは言っていない。
最終的には、権利濫用という手段があるが、これは裁判所の最終手段である。


そういうわけで、理論的に許される理由はよくわからない。
おそらく実際誰も問題にしないから許されているのでは?ということのように思う。
現実的に「私がスパム業者です。損害賠償します。告訴します。」というのはちょっと考えにくい。
もしかしたら、時効の長短の関係で、将来的そういうことがあるかもしれない。
損害賠償の除斥期間は20年だから、スパムメールに損害賠償できるなら損害賠償返しはできるだろけど、
証拠が残っているか、それが認められるか、相殺の可否などいろいろ問題はあるんだよね。
そこまで考える必要ないと思うけど…。


すぐに撤回するかもしれないが、とりあえず書いてみた。
現行著作権法の限界があらわれている一側面のように思う。ご意見ください。