憲法改正を考える(その13)〜自民党新憲法第一次案について(5)〜

憲法改正を考える(その1)〜国民投票法(1)〜
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050314/1110803315
憲法改正を考える(その2)〜自民論点整理(1)〜+自民党ホームページについて
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050314/1110805753
憲法改正を考える(その3)〜自民論点整理(2)〜
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050315/1110816281
憲法改正を考える(その4)〜自民論点整理(3)〜
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050315/1110821749
憲法改正を考える(その5)〜国民の権利と義務に関する小委員会(1)+綿貫氏の発言について〜
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050326/1111775076
憲法改正を考える(その6)〜小委員会要綱案(1)といっても自民党批判〜
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050406/1112776329
憲法改正を考える(その7)〜民主党小委員会中間報告(1)+民主党批判〜
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050407/1112805346
憲法改正を考える(その8)〜衆院調査会最終報告書(1)+国民投票法(2)〜
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050416/1113583226
憲法改正を考える(その9)〜自民党憲法第一次案について(1)〜
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050803/1123003046
憲法改正を考える(その10)〜自民党憲法第一次案について(2)〜
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050804/1123090669
憲法改正を考える(その11)〜自民党憲法第一次案について(3)〜
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050805/1123171407
憲法改正を考える(その12)〜自民党憲法第一次案について(4)〜
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050808/1123429668


衆議院憲法調査会
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_kenpou.htm
参議院憲法調査会
http://www.sangiin.go.jp/japanese/kenpou/index.htm
自由民主党憲法制定推進本部
http://www.jimin.jp/jimin/shin_kenpou/shiryou/index.html

憲法第一次案(現行憲法対照)[平成17年8月1日]※要綱を元に条文化したもの
http://www.jimin.jp/jimin/shin_kenpou/shiryou/pdf/050801_b.pdf
憲法第一次案[平成17年8月1日]※要綱を元に条文化したもの
http://www.jimin.jp/jimin/shin_kenpou/shiryou/pdf/050801_a.pdf
憲法起草委員会・要綱 第一次素案[平成17年7月7日]
http://www.jimin.jp/jimin/shin_kenpou/shiryou/pdf/soan_01.pdf

自民党憲法草案の要旨 起草委員会1次案(HTML)
http://www.kahoku.co.jp/news/2005/08/2005080101003342.htm

(その11)の続き。
衆議院解散でますます憲法改正がほったらかし。
しかも小泉さんに言わせると郵政解散だから、争点は表面化せず。
でもそろそろ多少は気にして投票した方がいいと思うけど。


<第二章 戦争の放棄→安全保障>


新設

第2章 安全保障
(安全保障と平和主義)
第9条第1項
 日本国民は、諸国民の公正と信義に対する信頼に基づき恒久の国際平和を実現するという平和主義の理念を崇高なものと認め、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求する平和国家としての実績に係る国際的な信頼にこたえるため、この理念を将来にわたり堅持する。

「要項」によれば、

1 戦後日本の平和国家としての国際的信頼と実績を高く評価し、これを今後とも重視するとともに、
  我が国の平和主義の原則が不変のものであることを盛り込む。
  さらに、積極的に国際社会の平和に向けて努力するという趣旨を明記する。

とある。
だとすれば、条文見出し「平和主義と安全保障」であるべきではないかと考える。
安全保障を持ち出すとしても、それはあくまで平和主義の実現のためのものであることを、
条文見出しとしても、確認しておくべきように思う。そうでないと安全保障の名のもとに暴走しかねない。
それでもいいと思う人はそれほど気にしなくてもいいけど、気にする人は気にした方がよいように思う。


第9条第1項  日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

新↓

第9条第2項 前項の理念を踏まえ、国際紛争を解決する手段としては、戦争その他の武力の行使または武力による威嚇を永久に行わないこととする。

1項とあわせて読むべきことになるが、この点旧規定のとの実質的相違はそれほどないように思う。
気になるとすれば、新1項の「国際的な信頼」であるが、平和国家との関係ではいいのだが、
(集団的)安全保障にも積極的に協力するという意味での「国際的な信頼」と捉えると意味が異なることに注意する必要がある。
そのような理解はかなり難しいが、現在の9条解釈の変遷を考えると、そのような立場に反対する人は注意する必要があろう。


第9条第2項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

→削る
以降の新設へとつがなる。逆説的にいえば、陸海空軍その他の戦力は、これを保持するということになる。


新設

第9条第3項 日本国民は、第1項の理念に基づき、国際社会の平和及び安全の確保のために国際的に協調して行われる活動に主体的かつ積極的に寄与するよう努めるものとする。

あくまでも平和主義の理念のもとである。最近の戦争は平和の名のもとに行われるのだけど…。
拡大的に解釈すると、徴兵制採用をも想定している条文のように思う。
「努めるもの」であるので、義務的に解するのは困難ではなるが、9条解釈の変遷を考えると懐疑的にならざるを得ない。
この規定に国民の権利義務を制限して良いことにはならないことを確認しておく必要があるように思う。
(もちろん、非常事態には制限するべきだ!と考えるのであればこのままでいいですけど。)


新設

自衛軍
第9条の2
1 侵略からわが国を防衛し、国家の平和及び独立並びに国民の安全を確保するため、自衛軍を保持する。
2 自衛軍は、自衛のために必要な限度での活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和及び安全の確保のために国際的に協調して行われる活動並びにわが国の基本的な公共の秩序の維持のための活動を行うことができる。
3 自衛軍による活動は、わが国の法令並びに国際法規及び国際慣例を順守して行わなければならない。
4 自衛軍の組織及び運営に関する事項は、法律で定める。

「要項」によれば、

2 自衛のための自衛軍を保持する。
  自衛軍は、国際の平和と安定に寄与することができる。

要項に「国家の平和及び独立並びに国民の安全を確保するため」という記載を欠けているところに
胡散臭さを感じる。
なお、4項と関連して、73条3項が
「軍事に関する裁判を行うため、法律の定めるところにより、下級裁判所として、軍事裁判所を設置する。」
と新設している。下級裁判所としての軍事裁判所は、憲法事項である。
※変な疑心をもたなければ、特に不都合は感じない。


新設

自衛軍の統制)
第9条の3
1 自衛軍は、内閣総理大臣の指揮監督に服する。
2 前条第2項に定める自衛軍の活動については、事前に、時宜によっては事後に、法律の定めるところにより、国会の承認を受けなければならない。
3 前2項に定めるもののほか、自衛軍の統制に関し必要な事項は、法律で定める。

自衛活動、国際協調活動には、基本的には国会の承認が必要である。
内閣総理大臣文民であることからすると、文民統制も維持されている。
あとは法律の内容次第。内閣総理大臣の指揮監督はどの程度必要なのかとか?緊急時とか?
なお、「要項」によれば、

3 自衛のための自衛軍を保持する。
  自衛軍は、国際の平和と安定に寄与することができる。

とある。あくまで「国際の平和と安定に寄与する」という理想があるのだが、
この理想が人によって評価が大いに異なるところが難しいところ。
ところで、「要項」の項目名は、「安全保障及び非常事態」である。
平和主義という、小学校でも習う日本国憲法の三大原則の文言が欠落していること、
「非常事態」という明文化されていない項目があることを考えるとどういうことか?
ということを考える必要がある。


9条解釈をめぐる歴史的変遷をみると、拡大されていく傾向がある。
平和主義理念のもと、その拡大をどこまで許すのか?、ということとあわせて考えなければならないように思う。
拡大を許さないと考えるのであれば、その歯止めがきちんと書かれているか?ということもあわせて考える必要がある。


※世論としては、関心の高いところと思うが、それにもかかわらず歯止めを含めて必ずしも明らかではなく、
 また、拡大的に解釈される余地のあること、そのような政府意図が推察されること、
 執筆時現在の政府与党自民党の要項もそのようなことを窺わせることから、現段階において賛成できない。
 形式的な内容自体は(賛否両論あるだろうけど)悪くは思わないけど、
 憲法理解の基本は国家への不信だと思っているので、この条文の拡大への歯止めということを考えると、
 改正を前提としても、まだまだ検討の余地があるように思う。


<第八章 地方自治
○(次回(6)で考えたい。)

                                      (つづく)