選挙演説妨害で逮捕

選挙妨害罪に関する一考察。

選挙演説妨害の作業員逮捕=「朝から名前連呼でうるさい」−警視庁
 衆院選立候補者の演説を妨害したとして、警視庁捜査2課などは31日、東京都大田区大森北、作業員伊藤潤容疑者(37)を公選法違反(自由妨害)の現行犯で逮捕した。今回の選挙での逮捕は全国初。伊藤容疑者は「朝から名前の連呼ばかりで、郵政のことも何も言わないので頭にきた」などと容疑を認めているという。 
 調べでは、伊藤容疑者は31日午前8時15分ごろ、大田区の駅前で候補者が街頭演説中、運動員が持つのぼり旗を松葉づえで2回たたいた上、雑誌1冊を投げ付け、演説を一時中断させた。(了)
伊藤潤(いとう・じゅん)
時事通信) - 8月31日13時3分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050831-00000049-jij-pol

(選挙の自由妨害罪)
第二百二十五条  選挙に関し、次の各号に掲げる行為をした者は、四年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。
 一  選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者又は当選人に対し暴行若しくは威力を加え又はこれをかどわかしたとき。
 二  交通若しくは集会の便を妨げ、演説を妨害し、又は文書図画を毀棄し、その他偽計詐術等不正の方法をもつて選挙の自由を妨害したとき。
 三  選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者若しくは当選人又はその関係のある社寺、学校、会社、組合、市町村等に対する用水、小作、債権、寄附その他特殊の利害関係を利用して選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者又は当選人を威迫したとき。

記事から考えると、演説妨害罪(2号)。
でも、連呼行為は、演説ってなの?

連呼行為とは、短時間に一定の文言を連続反覆して呼称することです。
http://www.pref.kyoto.jp/senkyo/bywords.html

(連呼行為の禁止)
第百四十条の二  何人も、選挙運動のため、連呼行為をすることができない。ただし、演説会場及び街頭演説(演説を含む。)の場所においてする場合並びに午前八時から午後八時までの間に限り、次条の規定により選挙運動のために使用される自動車又は船舶の上においてする場合は、この限りでない。
2  前項ただし書の規定により選挙運動のための連呼行為をする者は、学校(学校教育法第一条 に規定する学校をいう。以下同じ。)及び病院、診療所その他の療養施設の周辺においては、静穏を保持するように努めなければならない。

つまり、本当に連呼行為に腹をたてて妨害したなら、それは「演説」の妨害ではなくて、
それとは区別される「連呼行為」妨害であって、すくなくとも2号には該当しないということになる。
もちろん、連呼行為妨害は、「その他偽計詐術等不正の方法をもつて“選挙の自由”を妨害」する行為というのであれば、
それもありかもしれないれども、原則禁止の連呼行為を選挙の自由に含めるのは、ある種の自己矛盾だと思われる。
この点、2号にあらたないといってみても、「威力を加え」たといえるなら(1号)結局構成要件には該当するのだが、
それは、威力を加えたからであって、連呼行為を妨害したからではない。
連呼行為というのが、被疑者の言い分であって、本当は演説中だったかもしれないけれども、
連呼行為と演説行為の狭間が不明瞭に用いられているのは、ちょっといただけません。
もし、連呼行為中に連呼行為を妨害したことが、「演説妨害」と判断されたのであれば、そういう運用には疑問があります。
「威力を加え」たといえるのであれば、逮捕されるということは仕方ないけれども。